『大人になりたい』
2023.3.12
多分、マイナスなことしか書けないし、何かを書こうと思うのは比較的マイナスなときだ。自分が自分である以上は、自分の許せないところと付き合っていかなければならなくて、そういう部分を美化するにしろ蔑むにしろ、自分でどう判断をつけるか、飲み込み方を言葉にしなければならない。くだらない人間だと思うこと、思考も言動もなんて自制心がなくて愚かなんだろうと思うこと、本来は真っ直ぐに見つめなければならない弱さを言葉にすることによって、自分との距離を作り、わたしではない、創作された世界上のものにしている。逃げているだけだと思う。日々小さく積み上げている罪から。
過去は消せない。過去を消したいと、自分じゃなかったことにしたいと、過去の自分は今の自分とは別人だと割り切れるようになりたいと、何度も願ったけれど叶わなかった。消えない。私の記憶にも、誰かの記憶にも残っている。間違えた選択も、抑えられなかった攻撃性も、全部残っている。覚えている限り、在る。覚えていなくとも、その道を通ってきたことは取り消せない。鉛筆で書いた文字は消せるけど、音は鳴らしたら消えないと、ピアノの先生が教えてくれた。わたしはわたしの正しくなさがバレるのが怖くて、動けない。
どうしたら誠実でいられるのだろう。好きという感情を間違えずにいられるのだろう。誰にも傷つけられることなく、やりたいことをして、幸せに生きて欲しいと、それだけを願っていて、それ以外望まないのに、なんでそれすら叶わないんだろう。こんな言葉を吐きながら、これをして欲しい、これがないと寂しい、こういう人間であって欲しいと求めてしまう自分は、どうしていなくならないのだろう。だから、どこまで行っても「愛してる」と言えないまま、恋を抱えてひそかに見つめてしまうのだ。
この経験のなさも、知識のなさも、甘さも、全部嫌いだ。変わりたい。もっと大人になりたい。子供でいたかったけれど、こんなに優しくないままでいるくらいなら大人になろうとすべきだった。小さく共感しあって、悪意を肯定しあって、ゴミ溜めにいることから目をそらし続けたまま落ちていくくらいなら、この大切な恋をちゃんと愛にしたい。