夜道を走るトロッコに乗って
風を割いて不安定なレールを音を立てて走るのは小さな、人が1人ようやく体育座りができるほどの木でできたトロッコだ。
たった数秒前に目の前に出現したレールからそれないように、地面にたたきつけられないようにと上空を勢いよく走り抜ける。
あたりは真っ暗で星あかりや街灯の明かりは全く無い。
トロッコが闇を割く3秒前までは、3秒後にどこにたどり着くかさえ知る由もない。
ものすごいスピードが出ている。
カーブでは毎度危うさを感じる。
落ちないでいることがまるで奇跡のようだ。
落ちたら下には何があるのか誰も知らないけれど。
そのトロッコに乗っているのは紛れもなく自分で、特に臆する様子もない。
きっと落ちる時はあっという間で、落ちる時の感覚なんてないんだろう。
こういうものは落ちた時に気がついたら地面に叩きつけられているものだ。
そこから這い上がりまたトロッコに乗るのか、それとも闇の中でもがくに留まるのかは自分次第である。
余りに速く、先が見えず、レールを軋ませる音が煩いこの乗り物は乗っていることが苦痛で仕方がない。