生の証と死の恐怖
街を次々に壊していく巨大なロボットを目にして、逃げなければ死んでしまうと直感する。気づいたら私はデスゲームに参加させられていたようだ。
気づいたらここにいた。海に面した知らない街。全く知らない人からなんとなく顔見知りのように感じる人もいるけど何もわからない。友達同士、家族、すでに集団ができている者。私は一人ぼっち。
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広い街を散策する。白い家。青い空。大きいプールもある。夏の旅行にはもってこいのこの場所が、所々赤く染まっている。白に赤はよく映える。遠くから悲鳴が聞こえるけどここには誰もいない。
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人だかりを見つけるとゲームが始まった。命懸けの鬼ごっこ。漫画でよく見るデスゲームってやつだと瞬時に理解し、1人人気がない所へ向かう。暑くて頭が回らない。近くのプールに入ると同じく逃げてきたいわゆるギャルの3人組に声をかけられる。「この水の中にいれば安全だよ」って。実際に鬼が来ても気付かれずにすみ、徐々に徐々に同じく逃げてきた人がここに集まり始めた。数十分が果てしなく感じ始めた所ついに見つかり言われる。
「◯時までに、この中から1人犠牲者を選べ」
今まで鬼という共通の敵がいたからこそ仲間意識があった人同士が一瞬で敵になる。その瞬間を肌で感じた。途端に争い出す人々。
「自分には家族がいるから」
「あなたなんて友達だと思った事ない」
「お前さっき自分に嫌がらせしてきたよな」
「俺のこと好きなら言うこときけよ」
「あなたどうせ1人なんでしょ?ならあなたが...」
色んな言葉が飛び交う様をぼーっと眺める。
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なんだか、もう、いいんじゃないか。蹴落として、騙して、裏切りあっているところを見るくらいなら死ぬのが自分でも別にいいや。1人ぼっちだし。どうせいずれ死ぬし、辛いとか苦しいとかそんな感情が続くくらいなら先に死んでしまおう。
「あの、私でいいですよ」と手を挙げる。
自分が死なずにすんだと安堵する人達の顔を見て、こんな奴らだけど最後は人のためになれたのかと今までの行いを振り返る。
“もしデスゲームに参加したら”、“もし謎のウィルスに感染して人間がゾンビになったら”そう考えるたびに自分は、どうせ最後まで生き延びれずに死にそうだし早めに自殺しそうだなと思ってた。結局その通りになるんだ。
時間がきた。
「死ぬの、私です」
名乗り出て鬼の側に行こうと人だかりを掻き分ける。あと少しで鬼の近くにつく。あと少しで、死ぬ。覚悟を決めた足は止まらずに進み続けてくれる。鬼と目が合った。
「お前じゃない」
目の前で別の人が殺された。私に「あなた1人なら...」と声をかけてきた人。わずか数十秒のことだった。
「やっぱり死ぬのって難しいですね、白を着てしまったばっかりに」
鬼に向かって話す。飛び散った血で服を汚して。