偶像に集まる祈りと結実
!!この記事はONE PIECE FILM REDのネタバレを含みます!!
まだ見てないそこのお前!
多分まだ上映期間があるから映画館、行こう!
見に行った動機をシンプルに言うと「お前に刺さる」と複数人から言われたためだ。
シャンクスの娘でルフィの幼馴染という夢主みたいな子が主人公、みたいな情報を受動喫煙で得ていたが、強めに信頼を置いている妹にまで「ウタお前に刺さるやつ」と言われてしまったからにはなんか見たくなってくる。
行けそうなタイミングをどうにかひねり出し、映画館に向かって上映開始を待つ。
いや~~~~~冒頭からもう"""""そういう"""""話であることがひしひしと伝わってくる。
数多の人々が直面する苦難、その原因たる海賊への恨み、救いになるウタという少女の歌声、「お前がやってくれないと」という声、声、声、ネズキノコをかごから取る誰かの手。
贄じゃん、もう。見事なまでに担ぎ上げられてる。
「アイドル」って言葉の由来ってさぁ……。
そして場面はライブ会場に変わる。
大昔にアニメを見ていた頃よりだいぶ増えた麦わら一味もその会場にいて、バチバチに気合を入れた格好でウタのライブが始まるのを待っている。
そんで始まる、知っている限り世界観からだいぶ離れた我々の現代のような演出がついたライブ。
映画館音響で流れてくるAdo歌たまんね~~~!!!!!
Adoという歌声と名塚佳織という話し声がめっちゃ綺麗に繋がっててすげえ~~~~~~!!!!!!
歌うとき声がいかつくなるアイドル女サイコ~~~!!!!!!
けども手放しで喜べたのは実際この辺までだ。
ルフィがステージまで飛んでいってシャンクスの娘だってバラしたり、全く意に介さず「シャンクスとは違う」というパフォーマンスにする強かすぎるウタ、不穏になってくる歌詞と演出。
正義ですが何か? みたいな顔で海賊を五線譜に磔にして、逃げれば隊列組んで追い回す。
「義憤で正当化される暴虐」「忠実すぎる他者の感情の受け皿」を感じてウタ俺の嫌いな女かも!!と思ったりなどした。
相手が悪だからといって善側が何をしてもいい訳ではない。
自分自身で感じた思いでもないのに、「皆こう言っているじゃないか」を振りかざしてくるボスキャラも非常に嫌いだ。
奪われたのはお前か? 大事な人を殺されたのはお前か? 違うだろう、それは全部ファンの記憶だ。我が物ヅラで先頭に立つな。
な~~~んて思ってたらウタはウタでシャンクスに捨てられたというし赤髪海賊団がエレジアを滅ぼしたともいう。海賊憎しの根源はここらしい。
この映画ジェットコースターか?
しかも、色々噛み合わないんでウタに嘘吹き込んでこう育てたっぽいゴードンが黒幕かぁ?? って思ってたらトットムジカとかいう絶対悪が出てくるしシャンクスは自分らのせいにしろとか言っていかにも悪者みたいに見えるゲラゲラ笑いで去っていくし、トットムジカがいつの間にか出てきてウタの目につくところにいたせいだっていうし、あの、拳の行き場、トットムジカですかね……?
しかも、ウタは止まれなくなっていく。
シャンクスの件で強かすぎる対応をしたのに、皆が現実に帰ろうとした途端必死になり始めるのはちょっと興奮した。
そりゃ仮想世界に閉じ込めることで皆を救いたいウタにとってそっちのが困るもんな!
おまけにそんなの求めてないって声が出てくるし、もう、ね!
「もっと楽しければいいんでしょ」って叫んで次の手次の手に行くのも、ウタはその方法しか持ち合わせていないんだなって感じがすごくする。
「子供は起きて学校へ行く時間だ」なんて文も某ラノベにあったけど、結局帰る場所って現実なのよな。
でもウタには夢しか手段がなくて、現実に何もしてやれないからなんでも「すぐ」叶うとされる刹那的かつ自分の死で完成する手段に出た上、結局トットムジカによって世界自体が滅びかけることになるのももう、悲しいね……。
それで最期に、解毒剤を払い除けて立ち上がって、皆をトットムジカから解き放つために歌う。
ウタが引き起こしたことなんだから特別褒められることでもないだろうが、誰かを救う歌の姿はそこにあったのかもしれない。
「赤髪海賊団の音楽家」なんて言葉も口にして、長い間失っていた、「目に映る範囲の皆」を取り戻せたのかもしれない。
ただ、これだけ言いたい。
エンディングの歌詞なんなんだよ。
遺志みたいな形で綺麗にさせてしまうなよ、どうして歌い続けてくれなかったんだよ。
これが万が一にも身を賭した救済の結果みたいに美化されることなんかあったりしたらキレるかもしれないけどそんな描写はないので落ち着いて座ります。
ファンたちがかつての歌声を心の支えに日々生きて、ちょっとずつましな生活に戻していけるならその方がいいね。多分。
妹「映画見終わってからウタのアーカイブ気付いたから引退を機に知った某Vみたいになる」
私「やめなよ」
それはそれとしてウタの後ろ髪が気持ちに合わせてポヨポヨ動くの可愛かった。
あとウタの歌CD初回盤買った。
ふと思い出したけど、"Tot musica"を最初ドイツ語と勘違いしていて「トットムジカの楽譜(「音楽の死」の楽譜)」って「自分のスイッチを切る箱」みたいだなと思ったけどイタリア語だった。