ストーリータイプ15「入れ替わり」
物語のストーリーは、「主人公の行動」によって７つのカテゴリー分類ごとに、計24の「ストーリータイプ（物語類型）」があります。
今回は「主人公が不思議な経験をする」エブリデイ・マジック／ホラー／ミステリーのカテゴリーに属するストーリータイプ15「入れ替わり」をご紹介したいと思います。
「入れ替わり」はどんな物語か？
「入れ替わり」は、日常生活に魔法がかかり、不思議や奇跡が現れるエブリデイ・マジック／ホラー／ミステリーのカテゴリーのストーリータイプの中でも、その不思議さと面白さが誰でも一瞬で理解できる非常にユニークな物語です。
誰しも「もしも他人の人生を歩めたら……、あの人みたいになりたい、あのお金持ちのような生活をしてみたいという、自分の人生にはない経験をしてみたい、他人になってみたい」という願望があるものです。
このストーリータイプは、読者のそんな願望を叶える、主人公と他の人物の心と体が入れ替わってしまい、お互いがお互いになりすまして、周囲にバレないように必死に相手になりきって生活しなければならなくなる大騒動の面白さを描く物語です。
このストーリータイプでつくられている代表的な作品
このストーリータイプでつくられている既存の作品には、次のようなものがあります。
・映画『君の名は。』
・小説『おれがあいつであいつがおれで』
・映画『転校生』
・小説、アニメ『青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない』
・映画『フォーチュン・クッキー』
・TVドラマ『パパとムスメの7日間』
……などなど。
「入れ替わり」のつくり方
この物語をつくるには、次の３つの要素を決めるようにしましょう。
１．自分が嫌い、自分の生活に不満を持つ「主人公」と「入れ替わりのきっかけ」。
２．主人公が持っていないものを持っている「入れ替わる相手」。
３．「入れ替わった相手」が抱える「問題、隠された秘密」。
このストーリータイプの主人公は、他人と心と体が入れ替わってしまうという不思議な体験をします。そんな主人公は、自分の人生、自分の生活、あるいは自分自身に何らかの不満を持っていたり、嫌悪しているところがある人物、あるいは別の人生を歩みたいという人物であることがほとんどです。
その主人公が、ひょんなきっかけから他人と心と体が入れ替わって、別人としてまったく異なった環境、人間関係の中で、相手になりきって入れ替わっていることがバレないように生活しなければいけなくなってしまうのです。そんな主人公と、「他人と入れ替わってしまうきっかけの出来事」も合わせて設定しましょう。
もう一人の人物は、主人公と心と体が入れ替わってしまう「入れ替わりの相手」です。
この物語では、主人公が「自分とまったく異なる相手」と入れ替わった方が面白くなります。
基本的には同性同士の入れ替わりよりも異性との入れ替わりの方が生物学的な相違点なども加味されて２人の「違い」がより顕著になり、巻き起こる騒動、混乱がより大きなものとなり、比例して物語の面白さが増していきます（もちろん同性同士の入れ替わりでも面白くすることは十分可能です）。
従って、入れ替わる２人の生活環境や周囲の人間関係は「できるだけ異なるもの」にしてください。
以上の点から、この「入れ替わりの相手」は、主人公とできる限り異なる人生を送り、異なる環境で生活をしている、異なる性格の人物を設定するようにしましょう。
この物語のストーリーの肝は、主人公が相手の人生を相手の代わりに歩み、相手が持つ悩みや秘密を主人公が何とか克服、解決するきっかけになるところです。
「入れ替わりの相手」は、「自分では解決できない悩みや問題、あるいは誰にも言えない秘密」を抱えています。
主人公はそんな相手と入れ替わることによって、その相手の秘密を図らずも知ることとなり、なんとその悩みや秘密を相手に代わって解決に導いてしまうのです。その悩みや秘密は、入れ替わった主人公だからこそ解決、克服できるものだからなのです。
そんな秘密や悩みが、じつは「入れ替わりという現象が起きる理由、原因」になっていることも多く、その悩みや秘密を解決することで、入れ替わった２人が互いに変化、成長し、それによって入れ替わった状態から元に戻る方法が分かり、結果、元に戻っていきます。
また、大体において元に戻った２人は互いに好意を抱くようになり、異性の場合はとくに恋が芽生えることが多くあります。
---
この「入れ替わり」についてさらにお知りになりたいという方は、拙著『ストーリータイプコレクション［４］「エブリデイ・マジック／ホラー／ミステリー」５種 「プロット力」向上トレーニング』にて、さらにくわしく解説しています。
今回ご紹介した「入れ替わり」の特徴や作成のコツ、そしてこのストーリータイプの物語を組み立てるうえで土台として使える汎用プロットテンプレート「ストーリーフレーム」も収録しています。
ご興味のある方は、ぜひ合わせてご一読ください。