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【読書レビュ】「製造業DX」非常に平易に製造業へのデジタルトランスフォーメーションを書かれた本。

 私は2019年より製造業を法人営業しているICT業界の人間であり、もちろん製造DXに関しては本業として随分と勉強してきたつもりであるが、こうした書籍にはどう書かれているんだろう?、どういうまとめ方をするんだろう?、ひょっとしたらお客様も読まれていて読んでいたら話題作りになるんじゃないか?、忙しいメンバー(特に若手)のために自分が代読してレビュコメントを展開してあげられたら彼らのお役にも立てるんじゃないか? あぁ2021年12月の本だったら本の内容が陳腐化する前に、さっさと読んでレビュコメント回してあげなきゃね、と冒頭から長文で恐縮ですが、上記思考回路により、2022年初回の丸善まとめ買いにて調達してきた本です。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX

高橋信弘・清原雅彦・折本綾子 著
2021年12月の本

 内容としては、いろいろ汗かいて勉強してきた自分からすれば平易ではあったものの、平易だからこそ、平易に表現するための苦労が著者の皆さんにはあったんだろうな、物事をわかりやすく伝えるにはたいへんだろう、読者のことを相当想像して書かれたんだろうな、というイメージが伝わる本でした。平易にまとめていただきながらも極力幅広いトピックを抑えつつ、Industory4.0や2018年の経産省の「DX推進ガイドライン」なども解説してくれていたり、短期間でざっと把握するには非常に有益な本だと思いました。正直、倉庫管理システムや物流との連携、リバース・ロジスティクスの重要性が高まってくる、などは新たな気づきとして勉強させてもらえました。

 製造DXに関わる初級者にとっては押さえておきたい幅広いトピックが平易にまとめられていて、オススメな本だと言えます。

 中級者以上にとっては物足りないと感じるかもしれませんが、あ、この話は新鮮だ、とか、ここは知らなかったぞ、と自分の知識レベルの棚卸に活用できる本だと感じました。

以下、引用です。(あくまで自分観点での引用抜粋のため偏りがある点はご容赦ください)

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モノづくり+物流+データづくり

P15 モノをつくり、製造過程のデータを収集するだけでなく、出荷後の販売データやアフターメンテナンスのデータも収集していくことで、より自社クライアントや最終消費者の要望に合った製品を作るため、「モノづくり+物流+データづくり」がしっかり機能していくことが、いま製造現場に求められています。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P15

このコメントはかなり納得感ありましたね。今並行で読んでいる「プロダクト・レッド・オーガニゼーション」という本から少し引用しますね。

プロダクトはユーザーにとって最初のモーメント・オブ・トゥルースであるという考え方に変えることだ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P14

どうしても製造業だと、モノつくって、セールして、セールしたあとはアフターサービス、という概念になってきてしまうことが多いけれど、「モノづくり+物流+データづくり」をきちんと行っていくことが製造業DXにおいては非常に大事なんだ!と書籍の前半で宣言してくれていますね。


DXレポート

P29 経済産業省では、2018年5月に「デジタル・トランスフォーメーションに向けた研究会」(座長:青山幹雄南山大学理工学部ソフトウェア工学科教授)を設置し、ITシステムのあり方を中心に、わが国の企業がDXを実現していく上での現状の課題の整理とその対応策の検討を行い、『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』として報告書にまとめ、2018年9月7日に公表しました。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P29

2018年のDXレポートの話は、デジタルトランスフォーメーションに関わっている方々なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。経産省という国の機関においてきちんと調査を行い、国として発表したレポートです。改めて確認しておくことは望ましいのではないでしょうか。(はずかしながら私も斜め読みぐらいしかできてませんが…)

 ちなみに個人的にアンテナが立ったところは、このレポートの座長が南山大という愛知県の大学の教授なんだ!と思ったところ。しかしながら今少し調べたら2020年にDXレポート2(中間とりまとめ)が行われ、青山幹雄座長は2021年5月13日に逝去されたとのこと。謹んでお悔やみ申し上げます。


DXレポート2 中間とりまとめ概要資料 2020年12月28日

https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf

せっかくの機会なのでざっと上記も読みましたが、さすがきちんと課題認識、よく書かれております。こちらを熟読したほうがよっぽどよかったか?とは言いませんが、せっかくの機会なので上記「概要編」はご一読いただいて損はないと思いますよ!「価値創造型のビジネスを行うという方向性に舵を切るべき」「専門家として、技術、外部リソースの組み合わせの提案を行い、デジタル化の方向性をデザイン する」「DXの推進においては、企業が市場に対して提案する価値を現実のITシステムへと落とし込む技術者の役割が極めて重要」とか。


さらに、2021年8月31日「DXレポート」の追補版として「DXレポート2.1」が提示され、それについて解説した記事もありましたので、転用しておきますね。


DXの成功とエンパワーメント

P95 DXの成功には共感型のリーダーシップの積極的な情報発信と自らの考えを自らの言葉で伝えることができているかどうかが重要です。ある調査では、DXを成功に導く人材のエンパワーメントの重要性を認識しているビジネスリーダーが7割を超えていることが報告されています。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P95

これはごもっともだと感じる。困難に立ち向かっていくためにはエンパワーメントが重要。ちょうど先日プロダクトマネジメントの輪読会で読み切った本も「EMPOWERED」だったので、そちらも紹介しておきますね。


WMS(Warehouse Management System)

P106 WMS(Warehouse Management System)とは、「倉庫管理システム」の意味です。WMSは、工場からの入出荷・保管といった倉庫における「庫内物流」の正確性とスピードアップを実現する仕組みです。
(中略)WMSは、入出庫作業のサポートを目的としたサブ管理システムです。それぞれの現場ごとに、ローカルなニーズに対応し、スムーズな入出庫を支援します。 
(中略) WMSのユーザーは、「いまある在庫が正確にわかるようになった」といっており、企業に効率化をもたらしています。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P95

ここは単純に私が不勉強のため、自分への備忘を含めて引用しています。製造DXという観点にて、少しずつお客様の「デジタル化の方向性をデザイン する」という仕事へチャレンジしておりますが、まだまだ知らないことばかりです。少しずつ、勉強していきたいと思います。自分への棚卸として、物流と組み合わせたところが、まだまだまったく手つかず(庫内物流含め)ということがわかったという点は、この本を読んだ成果だったと認識します。


DX推進ガイドライン

P127 日本経済産業省は2018年の「DX推進ガイドライン」にて、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しました。簡単に言うと、「データの重要性を理解し、適切にデジタル技術と組み合わせ、企業を変革していくこと」です。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P127

企業変革こそが重要、ということはよく言われますよね。なかなか難しいのですけれども。ちょっとしたデジタル化からでも、僕個人的には良いと思っていて、デジタル化が少しずつでも行っていければデータは少しずつ集まっていくようになるし、測定できる情報は改善できる、それらの少しの成功体験が、いつかは企業変革につながる、という気概にて取り組んでいく必要があると感じています。一足飛びに、トランスフォーメーションなんてできないですよ。小さな成功体験の積み重ねが大事なんだと思っています。


IPAが定義するDXの代表的な6つの業種

P134 下記の説明文は、IT施策の一端を担う政策実施期間の一つであるIPA(情報処理推進機構)が定める、DXの代表的な6つの業種について記述された引用文です。
 業種1:プロデューサー
 業種2:ビジネスデザイナー
 業種3:アーキテクト
 業種4:データ・サイエンティスト
 業種5:エンジニア・プログラマ
 業種6:UXデザイナー

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P134

IPA(情報処理推進機構)というと、僕の場合はセキュリティの観点の印象が強くて、へぇ、そんな定義もやってるんだ、と興味が沸いたので引用しておきました。UXデザイナーも、ちゃんとこうした業種にて定義されているんですね。ぼくはソフトウェアエンジニアリングは、あまり詳しくはない中、データ・サイエンティストというほどのことも目指すのも難しく、こちらの6つの業種ではございませんが「ビジネストランスレーター」といったビジネス面をデータ・サイエンティストにつないでいく仕事へとチャレンジしていこうと考えています。上記整理だと、『ビジネスデザイナー』に該当するかな。


スマートファクトリー

P142 スマートファクトリーはもともと、ドイツ政府の提唱するインダストリー4.0というコンセプトに端を発する概念です。ドイツが提唱する「インダストリー4.0」を実現するスマートファクトリーという見方もあります。参考文献として経産省発行の平成30年版「情報白書」の「インダストリー4.0」を見てみましょう。
(中略)単に、デジタル機器やIoTなどのIT技術のシステムの違いだけで判断するのではなく、基本的に何が違うのかを考えると、一般的な工場と「スマートファクトリー」の違いは、人々の働き方にあると思います。
(中略)これらのことから、「スマートファクトリー」では、人々はより自動化が難しい作業や業務に就くことになり、自動化すべき領域と、人がすべき領域の境界線が移動し、徐々に自動化すべき領域の面積が広がってきます。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P142

インダストリー4.0とスマートファクトリーの考え方の定義の部分、抜粋しておきました。少しずつ、自動化できる範囲を増やしていくことが大事ですよね。多品種少量生産(セル生産方式)の工場の中で、少しでも自動化できていく範囲を広げていく、僕もがんばって貢献していきたいです。


プラットフォーム戦略で成功するには

P173 プラットフォーム戦略で成功するには
・自社製品に明確な強みがあり、自社だけでも顧客を一定数集められること
・適切なオープン化や外部パートナーとの連携によって、プラットフォームの価値を向上させること
これら2つのポイントを抑えた企業が、プラットフォーム戦略を成功させ、競争力を高めることができると考えられます。モノづくりは「物」と「者(人)」といわれますが、今後ますます大きくなる「デジタル化」のニーズに応じて、プラットフォームにしていくことが重要です。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P173

プラットフォーム戦略、とはよく言われますが、なかなか難しいですよね。弊社でも相当苦労しております。(僕は20年前にEプラットフォームサービス部という部署へ事業部別採用で入社しました)


リバース・ロジスティクスの重要性

P179 「あらゆるプロセスがつながること」とは、川上から川下への従来的なつながりのみを指しているわけではありません。XaaSが拡大すれば、「買う⇒捨てる」に加えて、「利用する⇒返す」がより一般化します。川下と川上をつなぐリバース・ロジスティクスの重要性は顕著に高まるでしょう。(中略)具体的には商品の返品、容器や再生資源の回収、スクラップの回収や廃棄などを指します。

改革・改善のための戦略デザイン 製造業DX P179

「リバース・ロジスティクスの重要性は顕著に高まる」ここも物流に関してがまだほとんど手つかずの中なので、すごく新鮮な着眼点となりました。一歩一歩、お客様に寄り添えるように知識を蓄え、整理して、お客様に還元していきたいと思います。

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以上

とっちらかった内容にもかかわらず、最後までお付き合いいただきありがとうございました。自分の代読が誰かに気づきを与え、行動を変化させられたらうれしいし、たとえ小さな一歩であっても製造業のデジタルトランスフォーメーションに寄与できるヒントが与えられたのなら(著者の方々への感謝をしつつ)幸せに思います。 
もしコメントいただけるのなら、大いに喜びます。

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