Watcher #27
たまに、昔の彼女が夢に出てくる。
今朝も彼女の夢をみた
夢のなかだと彼女とおれは、まだつき合っていた。
おれは、彼女のことがまだ好きなんだ。
現実では、彼女に対しての想いも、わだかまるところも、とっくに解消されている。
こうして夢に見ることでもないと、彼女のことを思い出すこともほとんどない。
夢のなかで、おれは彼女と花火を一緒に観にいっていた。
屋台で買い物をする浴衣姿の彼女の横顔に見惚れていた。
ベタさでいくと、打ちあげ花火を見上げている横顔でなかっただけ、少しマシだった。
つきあっていた当時、前の彼女と花火は一度も観に行っていない。
浴衣姿もみたことなかった。
夢からさめて数時間は、まだ自分が前の彼女のことを好きなのかもと思ったりする。
通勤の電車の中で考えたりもしてしまう。
だけど、仕事をして昼飯を食うころには、そんなことはすっかり忘れている。
いつもなら。
だけど、今日は少ししつこかった。
だから、なぜ、前の彼女の夢をたまに見てしまうのかを考えてみたりした。
“あれ”を見るようになってから、なにかとゴタゴタしている。
誰かとつき合うことに意識が向くことがなかった。
恋愛衝動は生殖本能の一部だろう。
おれの歳で消え失せるわけもない。
いつもは意識に上がっていないだけだ。
潜在意識とかいうやつの中にでもあるんだろう。
そんで、夢と潜在意識ってのは関係あるんだろう、きっと。
今度、三木さんにでも聞いてみよう···
夢のなかの恋愛衝動と、更新されていない恋愛経験の最新履歴である前の彼女がヒモづいて、夢にみるのだろう。
これが、前の彼女の夢をみる本当の理由かなんて、どうでもいい。
自分なりに整理できてスッキリした。
なんて思いつつ、プロジェクターと自分のノートPCの同期の設定のするため、誰もいない会議室へ入った。
“あれ”だ。
だだっ広い部屋の中央。
なんなんだよ。
こういうときは改めるしかない。
別の仕事をするため、“あれ”に背をむけて会議室からでた。