壁にガムテープ
りりかるさんによる箱の朗読13話目が投稿されました。
是非、ダウンロードをよろしくお願いします。
2019年12月7日、世界最大規模のアートフェア“Art Basel”(アートバーゼル)の一つ、ABMB(アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ)へ出品されていた作品が食べられてしまうという事件があった。
食べられてしまった作品は、イタリアのコンセプチュアルアーティストMaurizio Cattelan(マウリツィオ・カテラン)の“Comedian”(コメディアン)という作品だ。
作品を食べたのは、ニューヨークを活動拠点にするアーティスト、David Datuna(デビッド・ダトゥナ)
ダトゥナが食べた、マウリツィオの作品Comedianは、バナナをダクトテープで壁に貼りつけたものだった。
ダトゥナはダクトテープをはがし、壁からバナナを取り外し食べたのだ。
アートフェアとは、大きな会場に複数のギャラリーがブースを設けて、来場するコレクターに作品を販売するイベントだ。
“Comedian”は、東京にも拠点を持つ、フランスの有名ギャラリー“Perrotin”(ペロタン)のブースにて出品されたものだった。
食べられてしまったComedianは、Perrotinのオーナーを務める“Emmanuel Perrotin”(エマニュエル・ペロタン)の手によって新しいバナナに貼り直され、その場は一旦しのがれた。
そう、もともとこの作品は、ペロタンがマイアミの食料品店で購入したバナナを壁に貼り付けただけのものだったのだ。
ペロタン曰く
証明書がなれけばこの作品は物質的な表現にすぎません。誰かが買ったという事実が作品をつくるのです
だそうだ。
“Comedian”がどういった作品であるのかはこの記事がわかりやすく解説しています。
そして、ComedianはABMBにて、2つのエディション(限定ナンバー)がコレクターによって1300万円で購入され、3つ目のエディションは、1600万円で美術館が購入を予約したそうです。
Comedianのバナナを食べたダトゥナは、バナナを食べる様子を“Hungry Artist”というパフォーマンスとして動画投稿もした。
この事件は波紋を呼び騒がれた。
どのくらい騒がれたかというと、Perrotinの所在地フランスのバーガーキングが、騒ぎに乗じてComedianを皮肉る広告を出すくらいだった。
ちなみに僕がマウリツィオの作品を知ったのは、友人の美術作家、杉原悠人の展示を見に行ったときだった。
杉原悠人のことを書いた記事
来場した僕を杉原悠人は、展覧会会場の床へガムテープで固定したのだ。
その行為は、マウリツィオの作品“A PERFECT DAY ”(1999)を引用したものだった。
“A PERFECT DAY ”は、美術商のMassimo De Carlo(マッシモ・デ・カルロ)を壁にダクトテープで貼り付けた作品だ。
僕はそのとき作品の一部となったのだが、現代美術で観手が作品の一部として機能することは珍しくない。
これがそのときの記録です。
そして今回は、マウリツィオの“A PERFECT DAY ”を引用した杉原悠人の作品の一部になった僕が、名古屋大須にあるセレクトショップ&ギャラリーSipkaのオーナーことり隊長をガムテープで壁に貼り付けているイラストを描いたのでした(カバー画像)。
今回のこの記事はネムキリスペクトテーマ“壁にガムテープ”へ参加しています。
ことり隊長は今回のテーマの発起人でもあります。
参考