医療機器認証獲得への道
PixSpaceの代表 阪本です。PixSpaceの製品は2022年の12月に医療機器としての認証を受けました。そこに至るまで、今となっては分かる「不明な部分」がとても多かったので、起業した小さな会社の製品が医療機器を認証するまでの流れを紹介します。
1.会社のプロフィール
PixSpaceは常勤役員2名、非常勤役員1名の会社です。医療機器の認証を受けるためには二つのパターンがあります。「医療機器製造業として、医療機器製造販売業に卸す」「医療機器製造販売業を取得する」。弊社は前者を選択します。医療機器製造販売業は別の会社様が受け持ってくださいました。なので弊社は医療機器製造業を取得しました。行政書士に依頼しましょう。
もし医療機器認証を受けたいと思われているベンチャー事業主がいましたら、どのような形態を望まれるかにもよりますが、出資を受けず融資などで地道に経営をされているのであれば、私たちのように「医療機器製造販売業に認証申請を任せる」が良いでしょう。そのためには、自社の製品がすでに研究用として展開されており、業界でも認知されていないといけません。製造販売業者は商社ですので「これを扱えば儲かる」と思いさえずればリクエストは聞いてもらえることが多いです。まずはそういう製品を開発しましょう。
2.どのような作業が待っているか
私たちは医療機器製造業として製造販売業に製品を卸す立場のため、医療機器製造業としてのQMS審査を受けなければなりません。このドキュメントシステム一式は製造販売業者と密接に関わるため、先方に全て任せましょう。一通り任せると、品質マニュアルの雛形が送られてきて、それを元に自社の仕組みへドキュメント内部の規則をフィットさせていきます。これは管理部門の話です。
一方、同時に製品開発の設計ドキュメントも一式(設計・リスク検証など)が必要になります。我々のように事前にそのような会社で開発経験があるのであれば、起業した当初からそのようなドキュメントは作っていくことをお勧めします。もし揃っていなければ、ここは徹底的に揃えないといけません(ここに不備があるとQMS審査は通らない)。製造販売業の薬事担当の方と検討しましょう。
QMS審査は製造業であれば2回実施され、1回目は管理部門、2回目は主に設計部門が審査されます。当社もいくつか指摘を受けましたが、基本的にはQMS活動を維持できているということで、合格の審査をいただきました。ただ、気をつけていただきたいのは、設計インプットに「法令」「規格」など「当たり前」と思っているようなことでもしっかり入れておいてください。例えばインプットには必ず「薬機法」や「JIS」など、当然と思われるような内容も入れておいてください。「当たり前すぎるから書かなくて当然」という認識が、結構怖いところです。
これらQMSのドキュメントシステムを作り上げるのが、早くても4ヶ月、一般的には6ヶ月くらいの時間がかかります。これは主に管理部門の話です。設計部門は自分たちで事前に作りましょう。そしてその間に、製造販売業者が製品の認証申請を行います。そしてQMS審査が合格すれば、ほぼ同じようなタイミングで製品の認証申請も降りる、というような流れになります。したがって、作業開始から半年で「うまくいけば」医療機器の認証が獲得できるようになります。
3.我々のようなパターンを目指す場合
2、3人の会社の場合「医療機器製造販売業」はかなりハードルが高いです。ちなみに弊社の場合、社長の私が管理部門、開発者が設計部門、非常勤役員が内部監査員を務めています。医療機器製造業であれば、十分取得可能ですし、QMSの維持も可能な範囲のコストです。ですので、目指すべきは「自社製品を扱ってくれそうな会社に取得してもらう」ということです。結果的に製品のプレゼンスが重要ですので、そのような会社へのプレゼンの材料を集めましょう。
私たちのような小さな会社で医療機器開発をする場合、正直な話、公的機関への相談は全く役に立ちません。県の薬事相談室なども案内受けるかもしれませんが、全く役に立ちませんでした。医療機器のコンサルティングなどもいろいろありますが、自分たちの思想と合う人を見つけるのはかなり困難でしょう。
しかし、その開発される製品が魅力的であるなら、医療機器として拡販したら利益が生じるようなものであれば、商社さんからお声がかかると思います。それまではしっかり人脈を広げ、様々な会社にアクションを起こしていくことが大事です。私の場合はこれまで医療機器を扱っている会社のホームページからメールを送り、なんとか担当者まで話をこじつけ、プレゼンに訪問するということを何度も行ってきました。今回、弊社の製品を扱ってくださる会社様は、最初から数えて20社目くらいだと思います。
会社として生きている限りはめげずにアクションを続けましょう。我々が何かの参考になれば幸いです。