俺氏、またひとつ男をアゲる。
「打つ前からヒットになると分かっている」
という状態の時に、ヒットが出る。
これは私が10年間一生懸命野球に取り組むことで得られた境地、的なものだ(そうは言っても所詮コイツは地区大会レベル)。
自分の身体がスイングを始める前に、投手の手からボールが離れた時にはもう既に「よしっ!ヒットだ」となるのだ(と偉そうに宣ってはいるが所詮コイツは地区大会レベル)。
この感じというのはとても大事で、例えば舞台の本番であったり、「ここ」という時にこれを応用したりすることで集中力が高まったり、いいテンションを保つことができたりする。
カッコよく言うと、高いところから自分を操作する、みたいな感覚に近いものがある。
(カッコいい。)(流石にカッコいい。)
この「安心感抜群的な状態」は、
広い視点でグラウンド(周囲のこと)が見えているので機転が回りやすく、たとえうまくいかなかったとしてもフォローが効くことが多い。のだ。
のだよ。
さて、
私はお風呂が大好きだ。
言うまでもないが、エッチな意味でのお風呂ではない。
私は、エッチじゃないお風呂が大好きなのだ!!!
何をデカい声で言っているのだと皆様は思われるかもしれない。
しかし、私は敢えてここにもう一度宣言したい。
俺は、エッチじゃないお風呂が好きだ!!!!!
どーーん。
ある日私はスーパー銭湯に行った。
いつもよく行くスーパー銭湯ではなく、はじめてのスーパー銭湯だ。
はじめてのスーパー銭湯というのは、どうしてこうもドキドキワクワクするのだろうか。
自分の家じゃない場所で、なんか凹んでる所にお湯が張ってあるというだけのことなのに、
「早く入って疲れを取りたい」
「わざとおじさんみたいにあ"〜って言いながらファーストお湯コンタクトを済ませ、そのまま濡れた重めのタオルを頭に乗せて通ぶりたい」
「露天風呂につかりながら敢えて何の色も持たない眼差しで遠くの一点をを見つめ続け、周りの人に、"この人は普段とても忙しい人なんだろうな〜なんかカッコいいな〜"と思われたい」
といったワクワクで胸がいっぱいになるのだ。
お風呂が好きすぎて、もはやお風呂のタトゥーを入れたいくらいである。
背中に「ゆ」の一文字。
なんと、イカすではないか。
「ゆ♨️」でもいいな。いや、
「女湯♨️」が一番いいかもしれない。
女湯に入ることはきっともう生涯叶わない。
では、自分自身が女湯になってしまえばいい。
天才である。流石に天才である。
よし!背中に「女湯♨️」のタトゥーを入れよう!
その日、はじめてのスーパー銭湯を私は楽しんでいた。
時間が夜遅かったこともあり、大浴場には私を含めて5人ほどしかいない。
ジェットが噴射されるやつに、将来「女湯♨️」のタトゥーが入るであろう私の広い背中を預け、背中痒いな〜となったり、
電気の風呂に入って「イテっ!」となったりしていたところ、部屋の角にまだ私が入っていないお風呂を発見した。
そこには太っちょのおじさんが一人で肩まで浸かっていて、
「ああ、なんでこんなにも太っちょとお風呂の相性っていいんだろう。太っちょが肩までお湯に浸かっているだけで、なぜ今自分が浸かっているお湯より魅力的に見えるのだろう。。」
と惚れ惚れしていると、気づいた時には私はその太っちょがおいしそうに肩まで浸かっているゾーンに引き寄せられていた。
うっとりした表情で右足をお湯にIN。
その瞬間、全身に緊張が走る。
「うアッツ!」
と、一度も発したことのない擬音を発する我が口。
しかしボリュームを最小限に抑える。奥歯を食いしばる。
焦るな。まだバレてはいない!!
水風呂でした。
あまりの冷たさに反射的に足を引っ込めそうになるが、グッとこらえる。
ここで足を引っ込めると、肩まで浸かっている太っちょに、バカにされる!通じゃないと思われてしまう!
頭の中で繰り広げられる葛藤とは裏腹に、私は何食わぬ顔でそのまま水風呂の中に入っていく。
ああ気持ちいい。水風呂サイコー。といった表情で入水(ジュスイ)していく。
申し遅れたが、私は水風呂がとても苦手だ。
せっかく風呂に来ているのにわざわざ冷水に浸かるなど愚の骨頂!意味が分からない!派だ。
(ちなみにサウナも苦手)
しかしもう後には引けない。
覚悟のない男だと思われたくない。
歯を食いしばりながら、
水風呂を拒絶する心とは裏腹に左足も水の中へ。
しかも滑らかに。何の躊躇もないかのように。
男、浦上力士。何という胆力。あっぱれ。
お腹まで浸かる。
淵の段々になってるところ(分かるよね)に腰掛ける。
…冷たい!!!辛い!!早く出たい!!
弱い自分に負けそうになる。
しかし私は知っている。
こんな時に自分を操る術を。
知っている!!!のだ!!!
冒頭に長々と書いた、地区大会レベルの自己コントロール術!!!
見よ!
わかっている。
もう結果は見えている、という顔!
俯瞰で自分を見て操作する感覚!!
そんなに力まなくてもいいのに。力抜けよ自分。
という冷静な部分!!ステキ!!抱いて!!
なぜ深夜のスーパー銭湯でこの術を披露しているかは分からない。
こんなところで使う技じゃないのだよ本来は!!
所詮これは地区大会敗退レベル、
いや、
深夜の人少ないスーパー銭湯レベルの技だということなのだろうか。。
ええい、そんなことはどうでもいい!!
オレは勝つ!!
自分に!そして、この太っちょに!!!
そもそもお湯みたいな顔して肩まで浸かるなよ!この太っちょが!!勘違いしちまうだろうがよぉ!!
という、入水前(入水とか言っちゃってる)とは真逆のことを思いながら、
肩まで浸かった。
オレは男だ。浦上力士だ。
10秒、いや20秒数えたらここを去ろう。まだだ。笑いをこらえろぉ………。
と、夜神月ばりの悪い顔で太っちょの、、、右の方の壁を睨みつける。
本当は太っちょを直に睨みつけてやりたいところだが、ホクホクの顔で肩まで冷水に使っているヤツを見て、なんだか男としての格が違う気がして(既に気圧されている。悲しき弱き者。)しまった。
ので、せめてもの抵抗として!(意味不明)
太っちょの、右の方の壁を睨みつけていたのである!!
18…19…にzっ!!!
くらいで、逃げるように水風呂から上がったのであった。
今年で30になる男。浦上力士。
またひとつ大人になっちまったぜ。。。
やれやれ。。。
今年でもう30になるのに。オマエは。
一体、一人で、何をやってるんだ。
なんか、かなちい。
もっとみんなから尊敬される存在とか、そんな感じの感じに、いい感じの感じに、なりたい!!
のに。
かなちい。
追伸
お風呂が好きすぎてお風呂のタトゥー入れることによってお風呂に入れなくなるというジレンマ、一休さんみたい。なんか、センスある人のエピソードトークみたい。
何言ってんの?
もっとなんか頑張れよ!
すいません。