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【まちづくり】津和野町の芸術士®活動について紹介します!
津和野町では、乳幼児期から高校、さらにはそこに関わる大人が学びあう環境整備が重要ととらえ、「0歳児からのひとづくりプログラム」として推進しています。
このプログラムでは津和野町の未来を担う人材像として
「大人になっても自ら学び続ける」ひと
をスローガンに、私たちつわの学びみらいが核となり行政や教育関係者、地域の方々と連携して取り組んでいます。
・「0歳児からのひとづくり事業」についてはこちら
「0歳児からのひとづくり事業」のひとつである「芸術士®派遣事業」について、活動内容や取り組みへの想いなど芸術士®の方にお話を伺ったので紹介します。
芸術士®活動では、「今、ここにあるもの」を活かして感性と情緒を豊かに育む
平成28年度より、日頃の遊びや身近なものを題材としたアート活動を通して、感性と情緒を豊かにし、自ら学ぶ子どもを育てることを目的として始まりました。
アートによってそれぞれの「やりたいこと」が認められた環境では、子どもたちそれぞれの興味が芽生え、それぞれに独自の意志と思考が生まれます。芸術士®︎は、その意志と思考を、たくさんの材料や知識、声かけで後押しし、自分の「意志」「思考」に自信を持った子どもを育てることを目的に活動しています。
自分の「意志」や「思考」に自信を持つことで、世界や自分を取り巻く環境に対して主体的に関わろうとし、好奇心を持って物事に取り組もうとする心が育ちます。
そして「大人になっても自ら学び続ける」ひとにつながっていくと考えています。
これまで約6名の方が芸術士®として活動しました。現在は大田慶さん、賀戸亜子さん、柳原文枝さんの3名が活動しています。
柳原さん:
「家庭でも学校でも、親や先生が多忙だったり、情報が溢れていることもあって、子どもたちが気づきや発見したことを伝えても、おとな側に向き合う余裕がなかったりすることがあると思うんです。なので、子どものそういった気づきなどに共感することを大事にしたいし、そんな人を増やしていけるように活動しています。
そして、子どもがこうしたい、というアンテナを立てようとしても、周りの大人が良かれと思ってそのアンテナを立てる機会を奪ってしまっていることもあると思うんです。
だから私たちおとなもそうですが、知ることや考えることの楽しさを、特に子どもの頃にもっと体験する必要があるのではないかと思っています。」
大田さん:
「『自ら学び続ける』ひとを育てるためには、やってみたい!という意志や、私ってこんなことも考えられるんだ!っていう自分の思考に、自信を持つことが大切だと思っています。
自分の頭の中で考えていることに自信を持てれば、そうやって考えている自分のことも肯定でき、認めることができると思うんです。その結果、周りの人のことも認められるようになり、人にも優しくできるようになるのではないかと思います。
活動では、子どもたちそれぞれの思考や、子どもがやっていることを『だめ』という前に認めてあげられるように、その子そのものに寄り添うことを意識しています。失敗を悪しとせず、違っていい、違いを楽しめるような環境をアートを通して提供することで、それぞれが自分らしく生きていくための精神的土壌をつくっていく、そんな文化を根付かせていきたいなと思っています。」
・津和野町芸術士®派遣事業についてはこちら
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保育園や小学校でのアトリエやワークショップを中心に展開中
R5年度は青原保育園、木部保育園、日原保育園、畑迫保育園の4園と、津和野小学校、木部小学校、日原小学校、青原小学校の4つの小学校にそれぞれ月1~数回程度訪問して活動しています。
主な活動はアトリエとワークショップの2つです。
アトリエとは、多様な素材を用意し、参加者が自由に活動する場のことで、その素材を使って何か創ったり遊んだりしてもいいし、もちろん何もしなくてもいいという自由な空間のこと。
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木部小学校の図工室にはアトリエを常設しており、月に2~3回、お昼休みに芸術士®が学校を訪れ子どもたちと一緒に時間を過ごしています。
また津和野小学校と日原小学校では月1回、放課後子ども教室にてアトリエを行っています。今後、青原小学校でもアトリエができるよう準備中です。
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賀戸さん:
「私はアトリエ活動がとても好きです。子ども達と一緒に活動していると、いろいろなお話を聞かせてくれるんです。もう大人になってしまった私には思い浮かばないような、ぶっ飛んでるんだけど面白い話がどんどん溢れてきて。
それを『ヘぇ〜そうなんだ』で終わらせるのではなく、その先のアイデアにつながるような声がけをするように心がけています。
例えば、いろんな材料を使って怪獣を作っている子がいたら、『なんて言う名前なの?』『どんなものを食べているの?』『必殺技は何?』とか。たまに提案したアイデアを採用してもらえたら嬉しくなります笑。」
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ワークショップでは、子どもたちが好きなことや興味のあることを聞き取り、先生と相談しながら内容を決めて実施しているとのこと。
例えば体に風車をつけて遊んだり、ひもを巻き付けたり、水やビニールといった素材を使って遊んだりとさまざま。
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ワークショップでは、特定のやり方に添わせる方法ではなく、ざっくりとしたテーマはありながらも、子どもたちそれぞれの選択が尊重されるような環境が用意されています。
例えば「風」といった目に見えないものに気づくための、あらゆる方法や素材から子どもが自由に選べたり、水の冷たさや素材の感触を楽しむ活動では、それに繋がるような方法や素材、知識等を用意しています。
このようにそれぞれの感性を大事にした活動を展開しています。
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大田さん:
「子どもたちが受動的になってしまわないように意識して活動しています。先生に褒められた・褒められたいからこれをやる、とかではなく、自然にわいてくる興味から始まったこと、そしてそれを探究している過程を大切にしています。」
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その他にも、子育て支援センターや公民館等でまちのひとを対象としたイベント等も定期的に開催しています。
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「木片ジオラマ作り」やオリジナルの「あいうえおの本」づくりを行いました
柳原さん:
「今後もアトリエ活動を広げていきたいと思っています。おとなも解放されて楽しめるような場だったり、ほっとできるような場だったりを創っていけたらいいなって。
子育て支援センターで実施した手形足形アートづくりは、つくる楽しさに加えて、成長記録として飾ることによる効果も期待しています。例えば作品をお家の中に飾ることで、子どもたちの心に自己肯定感や、愛されている記憶が残るのではないかなって。
そして、作られたお家の方にとっても、普段なかなか具体的な成果が見えにくい『子育て』を、作品という形として目にすることで、自分の日々していることが子どもを育てていくという大切な仕事だと、親としての自信に少しでも繋がればいいなと考えています。
私自身、子育てを経験してきてその大変さがすごくよくわかるので、特に子育て世代のおとなの方が安らげるようなイベントをこれからも定期的に開催していきたいです。」
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子どもの手形や足形を取り、お家の方に動物などのモチーフにデコレーションしてもらいました
アートを通して保育園や学校がより地域とつながる環境づくりにも挑戦中
芸術士®活動では、その土地や地域にある素材を活用することも大切にしています。
例えば津和野町は石見神楽がさかんな地域でもあるので、神楽の大蛇や面を地域の方にご協力いただき活動の中で使わせていただくこともあります。地域の木工所から木材の切れ端をたくさんいただいたり、公民館にボックスを設置して廃材を提供していただいたりと、地域の方と繋がることでより活動の幅も広がっています。
豊かな自然はもちろん、文化的資源もすぐ近くに溢れている津和野町だからこそ育まれる感性があるのではないかと、今後の芸術士®活動の広がりにとても可能性を感じます。
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教育をもっと自由にしたいという想いから津和野町芸術士®として活動をスタートし、現在7年目になる大田さん。
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子どもの意思を大事にする津和野町芸術士®の取り組みの中で、より豊かなアート環境を子どもたちに提供したいという想いで津和野町に移住し、現在2年目になる賀戸さん。
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人はみんな素晴らしいものをもって生まれてきているのだから、それを最大限に活かすことができる環境を創りたいという想いで、子どもと一緒に移住してきた柳原さん。
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芸術士®のみなさんの想いが、これからも津和野町で様々な活動となって伝わり、津和野のひとの変化、そしてまちの変化に繋がっていくことを期待しています。
そして私たちつわの学びみらいも、芸術士®のみなさんと連携・協力して活動させていただいています。これからもともに「はじめの一歩」を踏み出し、様々な「変化」のきっかけをつくっていきたいと思います。
〇令和4年度の芸術士®活動報告書はこちら
〇津和野町芸術士®派遣事業紹介リーフレット(令和2年度作成)はこちら
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