《エピソード34・真逆の行動が変えた思考》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
無知の知
ソクラテスは“無知の知“というものを説いた。「知らないということを自覚しなさい」という言葉は、学ぶことを疎かにしていた僕には突き刺さる言葉だった。トレーニングをして体つきが変わると同時に、僕の中で真逆の行動だった“勉学に励む“こともノートには書いてあって。大学まで学ぶことから逃げてきたことで、無知の知は加速していた。だからこそ僕は本を手にしたんだと思う。
つなぎ合わせ
疎かにしてきた学び。僕は本を読むことでそれを埋め合わせることにした。今まで
本なんて読むこともなくて、ただただ体を動かしてきたし、「野球選手になる」と決めていた僕にとっては学びなんて必要ないと思っていたし。
でも読み始めてすぐに気づいた。知らないことが多すぎたんだ。それでも理解できるまで時間はかかるし理解できないまま終わることもある。
同じことだけをみて、同じことだけを繰り返す
そう子供の時に教えられたような空気感。一生懸命やった先に待っているはずの夢や目標はそこにはなくて、あったのは挫折とその後ろにあったとてつもない虚無感。
一本道しか知らなくて、一本道だけを歩いてきた僕にとっていきなり目の前に現れた行き止まり。行き止まりの先は真っ白でなにもなくて急に怖くなって・・。条件反射でがむしゃらに逃げ出した。
でも、たかだか“知らない“というだけ。
知りきらなくてもいい。知ろうとする試みだけでもその真っ白で何もない未来に少しずつ匂いや景色が出来上がっていったように思える。
知らないほうがよい幸せと、知ったときの不幸はいつでも背中合わせで、知らない不幸と知った幸せもまた背中合わせで、知らない世界というのはすぐに目の前に転がっていて。そのつなぎあった狭間を僕たちは生きるけれど、結局最後になっても人生はやり切ることも、すべてを知ることもできないんだと予想できた。
でも、1番の喜びは新しいことに出会えること。いろんなことに自分自身で意味づけをすることができたことだった気がする。
学ぶことで“無知“ということを知ったけど、それこそが自分自身をより欲深くさせた。もっと知りたいという欲求は自分の内面に寄せられていったんだ。
気づき
過去に戻ってやり直すことは二度とできないのに、過去に執着して天を仰ぐ。うしろに目がついたように歩いた軌跡ばかりをみて、これからくるであろう新しい道を作ろうとしない。
でも、僕たちが生きているのは過去じゃない。
僕たちが生きているのは今、この時。
いや、「今」と思った瞬間はもう3秒くらい先を生きてる。「今」ですら一瞬で形を変えるし、どんなことをしたって取り戻すことはできない。
苦しいことがあった。悲しいことが起きた。どうすることもできないほどの涙を流した。
どんな過去だろうと、どんな人にだろうとただただ坦々と時はやってくる。無味で無色で表情もない時間がやってくる。目を覚ませば、いやでもまた静かな空気に触れる。
そんな皮肉なほど無情にも思える時間は、もしかしたら運でもありチャンスでもあって。やってくる時間をどう使うかなんて僕たちの自由だし、その自由を使ってどう過去を塗り替えるかも自由で。
どんな絶望でも、足元に咲く花は美しい。そう思えるのかどうか。
どんな崖だろうが、広がる青空は輝かしい。そう思えるかどうか。
決して書き終えることのない僕たちの日々は、僕たち一人一人に託されてる。
一つ、また一つとなにかを知るたびにそう思い始めていたあの時。うまくいくことなんかほとんどなかったし、相変わらず借金は減っていなかったけど、勝手にかけていた真っ黒いサングラスを、誰かがそっと外してくれたように、目の前に少しずつ新しい世界がみえていた気がする。
僕は前向きになれたまま。なんだか、過去の執着にけじめをつけた瞬間に、背中に翼が生えたような感覚だった。
その翼を持って、僕は初めてプロテストを受けた。
続きはまた。