《エピソード10・大問題発覚で知った街金の怖さ。そして人間の弱さと脆さ》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
街金の借り入れが・・
“街金“とよばれる貸金業者の事務所に向かった。そこで担当していた人当たりのよいおじさんから究極の選択を迫られた。「今、お父さんお母さんに電話してもらえる?」その言葉に震え上がった僕。震えと冷や汗が止まらない僕に、優しげな笑顔のおじさんの視線が鋭く突き刺さる。借りなきゃマズい。でも借りるには今電話して親に借金がバレる。その選択に僕は、、
電話。初めての告白。
「どうする?」急かしているわけでもない言葉なのに、心臓の鼓動は必然的に早まる。どっちにしても選択は2択。僕は震える心臓と出てくる冷や汗を止めたくて、電話する決断をした。決断した瞬間、
逆に心臓の鼓動と冷や汗は増した。
「電話、、、、。します」
目の前に置いてあったボタンの多い電話。会社にあるような電話の小さなボタンは、震える手で押すには不便だった。いつもならスムーズに押せる家の電話番号もなかなか押せない。時間が止まったように感じる。
10桁の電話番号の最後の数字を押した瞬間、震えがピタッと止まった。その代わり血の気が引いた感覚があった。ビルとビルの間に張り巡らされた細い細い綱を渡っている途中に、足を滑らせて落ちる瞬間。夢で見るようなそんな場面での感情が、今、覚醒している自分の体で起きていることを否が応でも感じるしかなかった。
受話器の向こうの発信音がそんな感情を引き裂くように、母親の声に変わった。
「もしもし」
「もし、、もし、、。俺だけど、、。あのさぁ」
目の前にいる担当のおじさんは、僕から視線を外して状況を見守る。
「なに?どうしたの?」
「あの、、。今、実は、、」
優しい声なのか、怒った声なのかその時の僕には聞き分ける余裕もなかったけどストレス状態の中にいた僕は、聴き慣れた母親の声に少し安堵していたんだと思う。震えと冷や汗は徐々に治まっていく。
「今、お金を借りに来てるんだ。実は、結構な借金があって支払いも多くて。150万を借りたいんだけど保証人が必要で、、」
不思議とスムーズに言えたのは、やっぱり聴き慣れた母親の声に安堵したからに違いない。背水の陣。後ろには崖が迫っていて、一歩踏み外せば落ちるところまで来ている。目の前にも闇。どうなるか分からない未来に震えるしかない。その中で母親の声だけが少しの光になっていた。
蜘蛛の糸のように細かったけど、僕はもうそれに飛びつくしかなかったんだ。
もう、母親になにを言われたのかなんて覚えていない。僕の中では「親に電話した」という事実だけでステージクリアだったんだから。
断れようが怒られようが、今まで言えずに黙って震えていた日々に終わりがくる。親に言ったことで助けてもらえるかもしれないという世間では甘い考えを僕は喜びとして受け止めた。
人間というものは不完全でだらしが無い生き物だ。この世の中に完璧な人間なんていない。お釈迦様もそれを悟った。それなのに完璧や完全、カッコよさや美しさを求めて弱さを隠そうとする。
本当の自分というのは、その隠そうとする弱さやダサさの中に存在する。それを隠すために身につけた鎧は決して自分自身ではないんだ。
人間はこの弱さを隠すために、嘘をつき、偽り、そしてその毒によって侵されていく。
完全を目指すために人間がしなければいけないことは、不完全であることを認めることなんだと思う。
もちろん、その時の僕はそんなことなんか分からなくてただただチャレンジが終わったことにホッとしていただけだ。相談するなら早い方がいい。この時の経験でこの事実を学んだ。
電話をしたことで息子の失態を自分ごとのように考えた親は、保証人になることを承諾してくれた。
後日、担当者が契約書を持って自宅を訪れることを約束してその日は終わった。
契約書と印鑑
約束した当日。あの優しい顔のおじさんとは別の担当者が自宅に来た。スーツを着た男性2人組だったと思う。
じいちゃんまで同席して、契約書に印鑑を押した。僕への150万の融資が決まった。
あっという間に終わった契約。淡々と事務的にすぎたその時間はのちに家族を震え上がらせることになる。
なぜ、契約にじいちゃんまでもが同席したのか?僕はただ単純に「孫のことだから事実を知っておきたい」というじいちゃんの感情がそうさせたのだと思っていたけど事実はまったく違っていた。
家族が震えた出来事。それは
150万の契約のために、知らぬ間に自宅を担保にされていたことに気づいたからだ。
家族は誰一人それに気づかず印鑑を押していた。そしてじいちゃんが同席を促されたのは、家と土地の持ち主がじいちゃんと父親2人だったからだったのだ。
「無知」ということが起こした1つの問題。この融資をきっかけで家族と僕との距離がどんどんと離れることになってゆく・・・そして新たな出来事が勃発する。
続きはまた・・