《エピソード27・手にしたものは失うことの始まり》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
永遠のないキス
Cちゃんと抱きしめあったベッドは色がなくて、温かみのないお互いの肌だった。どこか投げやりで、どこか慌てていて。それでもCちゃんを抱いたことで次の日にみるCちゃんは違ってみえた。砂で作られた人形のように、あの日から僕の中のCちゃんは跡形もなく消えそうだった。それがなぜかはわからなかったけど、、、
突然の旅立ち
それから僕とCちゃんは形式的に会っていた。お互いの弱さや傷を舐め合うように会う中には、未来に対して前向きなことは言っていなかったと思う。体の関係を持ったあとCちゃんが僕に言った言葉
「嫌いに・・・なった・・・?」
あの言葉の意味はなんだったんだろう。どこかに少しでも好きな気持ちがあるからこそ抱き合ったと思っていたのになんで嫌いにならなきゃいけないんだろう。
「そんなことないよ」
僕はその言葉のあとに「好きだから大丈夫だよ」とは言えなかった。好きになりきれていない自分がいたのかもしれない。Mの魅力にとりつかれていたのかもしれない。ハッキリとした理由はわからなかったけど、僕にはその時「大好きだ」という嘘でも男らしい言葉は言い出せなかった。
その何日かあとだったかな。Cちゃんは実家のある九州に帰っていったんだ。
それをわかっていたからこそ、僕の気持ちを確かめたのかもしれない。サヨナラのかわりのSEXだったのかもしれない。そう思うと、色がなかった感覚や温かみのなかったお互いの肌の意味がわかる。
Cちゃんとの出会いは、出会った瞬間に終わりに近づいていたんだと思う。自分勝手に愛情を埋めていた僕にとって突然のCちゃんとの別れはつらいものだったけど、未来を考えるのなら依存関係を断ち切れるくらいの距離にまで離れていくCちゃんでよかったのかもしれない。
あれから1度もCちゃんとは会っていない。そしていつしか連絡も途絶えた。やっぱりCちゃんは、砂のように消えていってしまったんだ。
隙間の中に
あれから心に穴が空いたようで。事情を知らないMには弱さをみせた。Mは僕を誘って励ましてくれた。飲みにいったり、カラオケにいったり。Cちゃんとのことを知らないMは、僕が何かで落ち込んでいるようにみえたんだと思う。
時々Mと僕は立場が変わった。仕事や同棲中の彼の悩みを悩み打ち明けるMを僕は誘って連れ出した。お互いが居心地がよくて。
歌手を目指していたM。
夢を追いかけるMにとって、夢をもう一度追いかけていた僕の姿は励みになっていたことにも途中で気づいた。
「夢や目標に年齢の制限があるって、なんか切ないね・・」
いつものようにクールに、それでも優しく僕に言った言葉で「一緒に頑張ろう」と思うMの姿を映し出してたように感じた。Mに好意を寄せていたからそう感じたのかもしれないけど、それ以上はMに求めることは避けた。
いつものように仕事終わりで食事に出かけたMから突然、こう言われた。
「彼と別れたよ。別れたから私の家から出てった」
その言葉がまた別れの始まりだった。僕はMに急激に引き寄せられたいった。
続きはまた。