《エピソード16・始まりの鐘》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
始まりの鐘
挫折。そして生きる目標をなくした僕は自ら谷を転げ落ちる選択をしていた。勝手に決めた人生の目標に対してうまくいかなかったことを理由に人生を諦め、日々に唾を吐きかけ、来るであろう未来も悲観することしかしなかった。借金、勘当、駆け落ち、鬱、拒食、、。その様々なものが作り出していた暗くて深く、終わりの見えないトンネルの中で僕は死のうと決めた。それでも死ねなかった。死ぬ勇気すらなかった僕の中で決めたこと。それが“死ぬ気で生きてみよう“ということだった。
見失う時
人の目の前に広がる世界は、生きてきた中で記憶したもので成り立っている。見たことや聞いたこと、触ったことがないものに対しては理解の範囲を超える。未来はそれくらいなにが起こるかなんてわからないものだ。僕は
「野球選手になる」という夢を持った。小学生の時に始めた野球で生きていくことを決めていた。それでも、現実世界に現れる神様は簡単にはそれをさせない。「なる」と決めたからって「なれる」とは限らないのが現実世界だ。
「なる」と決めたことや「こうしたい」という理想が危ぶまれた時、人は現実から逃げようとする。「こんなはずじゃない」「うまくいかないわけがない」答えはいつでも自分の中にあって、それをどうやってこねくり回すかで未来が決まるのに、うまくいかない現実から外へ外へと逃げる。僕もあの時、理想とかけ離れていく現実から逃げた。向き合うことを恐れて遠くへ逃げようとした。
自分の中心から離れるように逃げれば逃げるほど、“自分“というものを見失っていって、本当はなにがしたいのか?自分は何者なのか?なぜ今、この状態なのか?みたいな自分への問いの答えがわからなくなる。
自分を失えば、自分の人生ではなくなる。世界は自分が作り出しているのに、だ。
僕は、自分から逃げて辿り着いた場所が“自殺“だった。それでも、終わりだったはずの自殺という場所に踏み入ることもできず後ろを振り返る。遠く、本当に遠くに僕が開いた扉がみえて、その隣にはまた違う扉があった。
僕はそこで初めて、その扉の存在を知りその向こうに広がる世界にかけようとした。それがあの時だったんだ。
選択を変えた先にあったもの
隣にあったまったく別の扉。それは僕にとって“真逆の選択“への扉だった。下るのであれば上りに、振り返るのならまっすぐ見据えるように。今まで、見たくも聞きたくもない、触れたくも感じたくもないまったく逆のものを全身で感じるようにとその扉は僕に言った。その先になにがあるのかはわからないけど、それでもなんとなく“自殺“という終わりにはいかないルートのような気がした。
というより、もうそれを信じて従うしか僕には道が残されていなかったんだと思う。
「ありがとう」や「ごめんね」の簡単な言葉が言えなかった僕は、自分が気持ちよいかどうか?の前に相手が気持ちよいかどうか?を考えなければいけなかった。
“自分“を見失っている時ほど、自分という存在をそこに確認したくて自分らしさをその場に振りまく。そして、自分を探せば探すほど結局は自分のことばかりを考えて相手を見失うのだ。相手を見失えば詰まるところ自分を見失う。相手があるからこそ自分を確認できるはずなのに、その相手を考えずにどうやって自分を確認するのだろうか。
鏡を見ると自分が映る。鏡の中の自分を大切にすれば、鏡の前に立つ自分にもそれが返ってくるのと同じことなんじゃないか。
真逆の選択肢を強いられた僕は、少しずつその原理原則のようなものを知ることになった。
さぁ。もうやることは決まった。その時の僕の目の前には積み重なった借金1000万円と駆け落ちしたS子という彼女の存在。そして、自分の中で離縁した家族と夢を失った自分自身があった。
この一つ一つに勇気を持って立ち向かう。
僕の“真逆への闘い“が始まった。
続きはまた・・