《エピソード29・夜明け》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
数センチの思い
砂のように遠くへ離れたCちゃん。最初で最後のベッドの上には色が一つも落ちていなかった。その色を埋めたのがM。相談相手としてお互いが求め合って夢や目標を共有してた。縮まりきらなかった距離が少し、また少しと近づく。近づいてはまた少し離れるという繰り返しの中でMへの想いは強まった。もしかすると・・
Mは
僕のことなんかなんとも思っていなかったのかもしれない。僕の思い過ごしだったのかもしれない。それでも、仕事終わりの深夜から飲みにいって自転車で一緒に帰り触れ合った日々は、なにかしらのMの気持ちが含まれていたと思う。
夢に向かって体を作り上げていた僕をMは褒める。仕事でアルバイトをまとめたり、現場管理をしていた僕に男らしさを感じてくれていたらしいけど、それはおそらく元カレとの比較で生まれた幻想に過ぎない。そう思ってた。なぜなら、僕自身、変化の途中ではあったけど自信も結果もなにもない男だったから。
それでもMの前では男らしさを押し出す。Mは次第にそばにくるようになった。
Mは歌手を目指していたから、クラブで歌うことが多かった。DJの練習で外に出かけてまたクラブで回す。才能にあふれる彼女の周りには常に人生を思いっきり生きてる男の人がいて、その度に妬いたしその人たちと比較しては自分自身にさらに自信をなくす。
でも、自信をなくすが故に手放したくない気持ちも増えるのは歯痒くて仕方なかった。
“恋は盲目“なんて言うけど、時に恋は成長を加速してくれる。自分を成長させることで振り向いてもらおうとする気持ちはなかなかパッと湧いてくるものでもなく、そこら中に転がってるわけでもない。
手にできそうでできないからこそ人はそれに手を伸ばし続ける。そして、あと数センチの距離を伸ばすために日々を生きようとする。その“届かない不完全さ“が人を幸せや何かに向かわせるんだと思う。
僕は自分を変えることでMを振り向かそうとしていた。夢に近づけばMが喜んでくれるから。
好きだからこそ
僕とMは朝まで語り合うことが増えていた。とめた自転車に2人でまたがり体を寄せ合った。たぶん、その時お互いが好きだったんだ。
相変わらずクラブで歌うMは夜に出かけてはリズムにのっていた。彼女の歌声を聴きたいのになぜか恥ずかしくて聴けない自分がいて。
それでも初めて聴きにいった僕を喜んでくれた。人が多い場所が苦手ですぐに帰ったけど、それでもクールなMは珍しく無邪気に喜んだ。
たしかあれは冬だったと思う。
いつものように飲みに行ったあとだった。いつものコースじゃない道を二人で歩いた。
僕たちはその日初めて2人で寝たんだ。
でも、最後までできなかった。きっと、突然すぎたし、緊張をほぐすためにお酒が増えていたし。
「ごめんね」って言ったけど、Mも一緒で。
その日初めてMを独り占めできたと思った。Mがどう思っていたかは知らないけど僕の日々にはまた色がついた。Mとの距離も近づき、夢へのステップも加速し始める。
抱き合った日からまた、Mを思う気持ちも増えた。Mもまた僕との距離を縮めた。
それでも皮肉なもので、神様はその円滑さを許さない。幸せはずっと続かないし、いやと言うほど数センチの距離を保とうとさせる。
必ずよき後には何かが待ち構えているんだ・・
続きはまた。