《エピソード20・一歩目と一段目》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
進化なのか、それとも退化なのか
ようやく”リスタートライン”に立った。ものすごく遠回りしたけど、目的地に辿り着く道はとても単純ですぐ目の前に転がっていた。遠くばかり見れば近くを見失い、近くばかりを見れば遠くを見失う。大切なことは木も森も見ることができる俯瞰的な力。そんなことには最初は気づかなかったけど。明るそうな未来。変わろうとする僕。それなのにやっぱり試練は訪れたんだ。
壁の厚み
今まで起きた僕にとっての後ろ向きな出来事。それを振り返り前向きに変化させるために紙に書き出した。紙に書いてみると
とても簡単そうに思える。だって、紙に書けるくらい短い言葉で、何度読み返しても簡単にしか思えなかったから。僕は思いの丈を書いた。書けば書くほど僕がいかに後ろ向きでいたのかがわかった。紙は僕の後ろ向きな言葉で埋め尽くされた。
「本当に、何も取り柄がないなぁ・・」
野球も勉強も何もかもがうまくいっていなくて、その時付き合っていた彼女ともうまくいかなくなって。埋め尽くされた紙を眺めてまた、後ろ向きになりそうになったけどもう書き尽くしたあとだったから後ろを振り返ってもなにも見当たらなかった。
紙に書いたあとで、元の自分に戻ってしまう前に僕は借金のことを親に話そうと立ち上がった。それくらいその時は一歩目を踏み出し、階段を昇ろうとしていたんだと思う。
「ねぇ・・・。あのさぁ・・・・」
長く家を離れていたからぎこちなさがあったけど、子供の頃から住んでいた家の空気感だけは慣れ親しんだもので。だからこそ、勢いで立ち上がったままそうやって話始めることができたんだと思う。
僕は、それまでの過程をすべて話した。怒られるかもしれないと思ったし、呆れられるかもしれないとも思ったし、そんな思いが強くなるほど体は震えたけど、それでも「言わなくてもどうせ日々に震えるのなら」という気持ちと、街金から電話して震えたあの時間よりはマシだったのとが背中を押してくれていた。
家出していた経緯も話した。どれくらい借金があるのかも話をした。どれくらいの時間が経ったかは覚えていないけど、話終わったあと
「どうしようか、ねぇ・・」
という親の返答に少し安堵した。怒られることもなかったし、それなりに呆れられたのはあったけど改善策を一緒に考えてくれる人が今、初めて目の前に現れたのだから。
借金の精算
僕の借金はその時1000万近くあって、そのうちの300万はすでに車とバイクを売りに出すことで解決していた。残るは700万弱。これをどうするのかで悩んだ。複数社で借り入れをしていたし、金利分だけでもそれなりに多くて、まずはそれを一つにできないか考えた。金利が安い場所で借金をまとめれば、まとめて一箇所に返すことができる。それでも、これだけ借りていると信用的にも低い金利で大きな金額を貸してくれる場所はほぼない。
”返さない”という選択肢はその時になかったけど、今となっては最悪”返さない”という選択肢もある。でも、あの時は返すことだけを前提に話が進められていた。
と、母親からこんな提案をされた。
「明日、仲の良い信金の担当者に聞いてみる」
仲の、、、よい?信金?
状況がうまく把握できなかった。母親は僕が生まれてからパートくらいしかしたことがなかったし、社交的な人間でもなかったし、その母親からまさかそんな提案をされるなんて思わなかったからだ。
「う、うん」
深くは聞けなかったけし、なんだか嘘なのか本当なのかわからない、冗談でも言っているのかくらいの話だったから呆気にとられてしまった。
それでも、親にすべてを話したこと。借金のこともこれからどうするかを他人に初めて相談できたことは僕にとって嬉しすぎるくらい嬉しくて。
人間は自分が辱めを受けるような相談はなかなか他人にできるわけじゃない。「恥ずかしい」「笑われるかも」「怒られるかな」そんな勝手な思い込みが相談できないという呪縛を生む。
でも結局、相談しなければ状況はどんどん悪化していくし、悪化していったあとに相談するのなら傷口が広がる前に相談したほうがよほどいい。しかも、相談される側になってみれば笑うことも怒ることもなく「相談してくれてありがとう」の気持ちのほうが強かったりするものだ。
この時も強く思った。
「もっと早く相談すればよかった」と。
そして次の日の夜、僕は母親に呼ばれた。
借金のことを担当者に話した結果だった。僕は固唾を飲んで話を聞いた。母親からの話は、また僕の目の前にある階段を大きくした内容だったんだ・・
続きはまた