《エピソード36•ゾーン》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。
変化
夢、目標は努力を続ければ叶う・・。そう信じたし教えられてやまなかった少年時代。人生は思い描いていた煌びやかな道ではなくて、人との関わり合いの中で感じる違和感。楽しさや喜びよりも疑問や疑念ばかりで、その後に味わった挫折が夢も目標も奪っていった。ギャンブル依存、家出、駆け落ち、多額の借金と自殺未遂。もう、死んで終わるところでも死ぬことができずに変わろうと思った。いよいよ、プロテストが近づく。
覚醒
不思議なもので、頭の中をめぐる
思考のルートを少しだけ変えることで行動が変わった。死へ向かわせたルートは、真逆な方向へと思考の舵を切ることで全く別の道へと変わったんだ。
相変わらず借金は減っていなかったけど、まだ掴んでいない何かを掴もうとする人間は吸う息も、吐く息すらも変わる。スーパーヒーローがなにかの拍子に変身するかのように。
それでも道のりは険しくて、1日7食を食べながら休むことなくトレーニングは続けたし、毎日のようにマメから出血するくらいにバットを振ったし。
僕は、自信がある人間なんてこの世にはいないと思っていて、自信がないから練習するし準備をするんだと思う。自信があったら練習なんてしなくてもいいし。
「どうしたら自信が持てますか?」という質問には、自信はないくらいがちょうどいいと答える。ありすぎる自信は変なプライドを作り、動きを制限して、学ぶことを止める。
世の中にある“欲しいもの“リストにあがるようなものは、ありすぎるよりも“少しだけ届かない量“くらいがちょうどいいじゃないか。追いかけるからこそ、追いかけてる自分に時々「自信」が芽生えるような気がするんだ。
プロテストは近づいていた中であった自信は、「これだけやったのだから大丈夫だ」という自身への言い聞かせでしかなくて、それは自信じゃなくて不安での現れでもあった。
体重は74kgまで増えた。体脂肪率は13%。
おそらく、一生のうちで1番本気で自分を変えにいった結果だった。それでも自信は不安での現れで。
なぜなら、今思い返すと「もっとできたんじゃないか」と感じるから。
突破口
プロテストは300人が一次試験を受ける。当日は一次試験で半分が脱落した。思い出受験のような人もたくさんいる中で、一次試験クリアする。
二次試験でそこから2/3くらいが脱落する。三次試験に行くのは30人程度だった。
自分の中ではどん底の自分とその時の自分を比べると別人のようで、不安の裏返しである自信とやる気に満ち溢れていて、“ゾーン“に入っているような感覚だった。
限界値を超えた食事とトレーニングの先に見えたものは、今まで決して味わえるようなものじゃなくて。ボールは止まって見えたし、なんでも打てるような気がしていた。実際、試験でも結果を出す。
30人から4人に絞られた中に残り、その4人は電話連絡で合否が判定され最終試験へといける。
4人の中に残った僕に後日、電話連絡があった。
最終試験に来たのは僕ともう1人。300人の中から残った2人のうちの1人が僕だったんだ。
最終テストはプロ野球選手に混ざり込んで試合をする。二軍といえど着ているユニフォームは一軍のそれと一緒だったし、テレビで見たことがある選手がゴロゴロいて、その中にポツンと練習着の僕ともう1人がいて。
電光掲示板には、そうそうたるメンバーの中に僕の名前が表示されていた。
9番・ショート。
二打席回ってくる。たった二回で結果を出さなければいけない緊張感は、ギャンブルで勝たなければ借金を返済できないという緊張感とはまた感覚が違った。
やっぱり自信はいつでも不安と闘っていて、自信が勝る時もあれば不安が勝る時もあった。あの時はどちらが優位なんて気持ちもなくて、ただただ夢中でしかなかったような気がする。
プロテスト最終審査が始まった。僕の始まりでもあり最終目的というゴールでもあった時間はあっという間に過ぎていった。
そして運命の第一打席。僕の振ったバットは、145kmの速球をとらえたんだ。
続きはまた。