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簿記3級試験不合格。結論 = ネット試験は結局パソコン慣れが必要でした

『時間終了です。お疲れさまでした』

の表示が画面に映し出されて
俺は右手をキーボードから離した。

肩から息が大きく漏れる

画面が切り替わったのは
それから5秒後

点数が映し出された。



62点。



絶望 ───。


風船がしぼんだように
全身から一気に力が抜ける
腰が抜ける。
急冷却される嫌な感覚。
それでも頭のどこかはやり場のない熱さを保っている。

70以下の数字に目が慣れない

認識できない

この数字って何て読むんだっけか?といった感じぐらい。


ああそれはろくじゅうにって読むんですよ。
へーこれでろくじゅうにって読むんですね。
ありがとうございます勉強になりました。

ってぐらい。


しかしそれ程の出来だったのは自分で理解している

間に合わなかったし
思い出せなかったし
操れなかった。


一生涯忘れないであろうこの屈辱的な数字。
目に焼き付くほどのショックだった。


もう何もしたくない ……

けれど重い気分を引きずって
点数の内訳を確認してみる。


第1問:42点

上出来…


第2問:3点。

繰越利益剰余金
繰越配当金
損益
の決算整理の穴埋め問題だった。
模擬試験の問題で解けていたのに…


第3問:17点。

精算表記入問題。
これが一番やっかいだった。
模擬試験問題では全然できていたのにキーボード入力に手間取いすぎた…



結果が出たあとは [印刷] ボタンを押してくださいと
注意書きにあった。

押すのも気が進まないけど押さなきゃならない。

もうこの席では何もやることはない。

部屋から出て受付に行かなくちゃ。

席から立たないと。
わかっているけど画面から目が離れない

数十秒経ってなんとか気を入れ直し
手元の免許証と電卓とロッカーキーと書類を掴みとり
部屋から出る。




俺は今どんな顔をしているだろう?
自分でもわかる敗者の表情。

受付のおねーさんと顔を合わせるのもつらい

それでも
負けても大人な対応は忘れてはならない
のは暗黙の了解。
終わりましたよ。


おねーさんが紙にプリントされた内容に確認を求めてくる

精一杯とりつくろって
間違えありませんと答える
( いっぱい間違えました )



「ではロッカーの ───」


ロッカーから上着を取って羽織り、
リュックを狭い出し口から強引に引っ張り出す。

なかなか出てこない。
ぐりぐり上下に揺らしてなんとか出てきた。
敗北感マシマシ


リュックを背負ってそのまま出ていこうとする背後から
「おつかれさまでした」の声

何も言わずに出ていこうとしたが
「ありがとうございました」と後ろ背で返事をして
その空間を後にした 。


絶望、憤り、不満、悔しさ、自分の愚かさ

手当たり次第に何かに当たり散らしたくなる衝動が止められない

天井が低くて狭苦しいエレベーターに乗るのさえ気分が悪くなる

どうにかなりそうな自分に耐えかねていた。


試験会場の近くに公園があった。

しばらくここで気分を落ち着かせることにした。

重い腰を上げれたのは
試験終了から1時間半経ってのこと。

空が夕暮れの色を出し始めていた。

そろそろ行くかと公園から出ていこうとする。

そこへ壁に向かって体をくねらす女の子に目がとまる。

公園中央部の少し高台になったステージのような場所で
大きな鏡張りの前で踊っている。

鏡の向こうの自分
鏡の向こうの動き

その動きから
かなり練習を積み重ねてきたんだろうなと勝手に想像した

鏡に向かって真っ直ぐに見つめる女の子の姿は
とても輝いてみえて

俺の心を少しだけ軽くしてくれた。



… そういえば俺
ノートパソコンが常用だから
デスクトップ慣れてなかったわ。

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