#検察庁法改正法案に抗議します とは何なのか

 5月9日頃から、Twitterにはあるハッシュタグが並ぶようになりました。それがタイトルにもある「#検察庁法改正法案に抗議します」です。なんだか見慣れない単語が並び、しっかりと理解している人はおそらくそこまで多くないだろう、という中でこのハッシュタグは多くのツイートに用いられ、今や300万件を超すツイートにおいて使用されています。著名人も何人かこのハッシュタグを用いており、最近の政治的動向においては相当大きなムーブメントと言えるでしょう。

 では件の「検察庁法改正案」これの何が問題なのでしょうか。今問題視されている事について私なりにまとめます。

①内閣による検察官の統制が加速する

 最も大きな論点はここでしょう。今回の法改正案の原文の問題とされている所を御覧ください。(引用箇所はソースの97pからです)

⑤ 内閣は、前項の規定にかかわらず、年齢が録十三年に達した次長検事又は検事長について。当該次長検事又は検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事又は検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事又は検事長が年齢六十三年に達した日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事又は検事長に、当該次長検事又は検事長が年齢六十三年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる。

 長ったらしくてわかりにくい文章ですね。要約すると

どうしてもその人じゃないとその職務遂行出来そうにないって内閣が判断したら次長検事(検察官)や検事長に関しては役職定年制の例外として、その役職を続けられる

 という事です。こうなってくると役職定年制って何?っていう話になりますが、簡単に言えば63歳になった時点で次長検事や検事長と言った階級高めの役職からしょぼめの検察になるよーという話です。(引用の前項というのはそれが記されているもの。)

 つまり役職定年制を取り入れ、かつそれに内閣が判断することのできる例外を設けようとしているのが現在という訳です。何が問題かというと

こんなルールがある上でわざわざ内閣の悪事を暴こうとする人がいますか?

内閣が自分に都合の良い検事長の任期を延長し、そうでない人をなるべく早めに辞めさせる事が可能になりませんか?

 という話です。どう考えたって自分の生活を考えれば内閣に忖度して少しでも良い位に居たいですよね。そもそも論として、検察というのは内閣総理大臣をも逮捕出来るという非常に強い特権をもった組織です。言ってしまえば内閣の不正を暴き法的に裁くことのできる唯一な機関な訳ですが、それが内閣に更に忖度するようになったら…?これが最近よく聞く「三権分立の崩壊」ロジックです。まあ今の説明から分かるように厳密には三権分立の崩壊では無いですし、そもそも現状の日本は三権分立が確立しているかという問題もありますが…。ともかく、検察という内閣を唯一裁ける機関と内閣との癒着を進める、という所が批判されているところであります。


 1つ目の論点だけで長くなってしまいました。では次に多く言われている「黒川検事長」について話しましょう。私が言いたいのは

②今回の件は黒川検事長にそこまで直接の関係がある訳ではないよ

 という話です。Twitter等を見ていますと、今回の件と黒川検事長の任期延長を一緒くたにして話してらっしゃる方も多くいたので、どう関係がなくてどう関係があるのか、話していきます。

 「黒川検事長の任期が延長され検事総長になることが可能になった」のは今回の延長とはまた別の話です。それは、今年1月頃に問題になった半年延長の方です。

 半年延長のやり方があまりにも酷くて叩かれましたが(というか私はこれの方が問題だと思っていますが)、今回の2年延長とは関係がありません。関係があるとすれば、

(1)無理やり法解釈を捻じ曲げて断行した半年延長の理屈を、後付で実際に法改正しようとしている←現在

(2)今回の改正によって第2第3の黒川が生まれる可能性が高まる

 この2点かと思います。(2)に関しては論点①で話したとおり、内閣に忖度する検事が増えるかもしれないという話の延長線です。(1)に関しては、後からこの半年延長はどういう理屈で行われたんだ?と問われた時に「いやその後に法改正もやったから」というこれでもまだ意味が分かりませんが一応の屁理屈が出来上がってしまいます。実際、現政権は法解釈の変更においては屁理屈とさえ呼べないような謎の理屈を述べているので、屁理屈でも欲しい、というのが現状ではないでしょうか。


 気づけば1900字も書いてしまいました。まとめると

①内閣と検事の癒着を進めることになるから今回のはヤバい

②しかし黒川検事長に直接的な関係はない

という事です。②の直接的な関係がない、というのは今の法改正を止めたからと言って黒川検事長が今すぐ定年退職することはないという意味です。論点を整理し、叩くべきところを明確にしてから叩きましょう、という事を伝えてまとめの言葉とします。

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