CTOを10ヶ月経験した私から、CTOを任されるあなたへ贈る 3つの問い
Merry Christmas!!
はじめましてこんにちは。@tsutormです。
名古屋にあるIT企業、株式会社エイチームの子会社、株式会社エイチームライフスタイルにて執行役員CTOをしております。
本日はAteam Lifestyle Advent Calendar 2019 の25日目にあたって、
今年2月にCTOに就任してからの10ヶ月間を通じ、「CTOってどうあるべきか?」がわりと明確になった 3つの問い とそれが機能した背景を共有して、今年の振返りとしておこうかと思います。
はじめに
会社のこと
エイチームというと "名古屋" の "ゲーム系"と一括に言われてしまうのですが、私が所属するエイチームライフスタイル(以下 ライフ)では ナビクル, すまいうる, ライフドット や ラルーン といったWeb/アプリサービスの開発運営を主にしており、いわゆる"Web系"の会社に所属しています。
技術スタックとしては、WebがRuby/Rails を軸に Modular Monolith に近い技術戦略をとってますが、一部レガシー系にPHPが残置。
アプリはJava/Swift+APIサーバー。バックエンドは両者いわゆる LAMP構成で、インフラは大半がAWS。一部GCP、国内プライベートクラウドでの運営を行っており、今年一年でだいぶコンテナ仮想化へと移行しつつある状況です。
開発スタイルは2~5名程度のエンジニアと、デザイナやマーケなどの他職種を含む事業メンバーで事業軸に垂直統合されたアジャイル開発が多いです。
わたしのこと
「ソフトウェアで世の中に貢献したい」をポリシーに20歳から名古屋の中小独立系ソフトウェアハウスにて、受託開発とSES契約を軸に、
・Web,アプリ開発のセールスエンジニアリング
・RFP&要件定義
・技術選定、チーム構築
・設計開発テスト〜リリース後サポート
業務系のソフトウェア開発全般をチームで行う傍ら、隙間で
・自社インフラ基盤構築保守
・労務管理システム構築
・新規事業提案
・採用新卒教育
など、なんでもやっていましたが、
色々あって2014年12月からライフに中途入社。
サービス開発を通じてエンジニアリングやマネジメントなど様々な経験の末、2019年2月に技術開発部 兼 名古屋開発部 部長を経てCTO就任。
現在38歳二児の父で、この業界のCTOとしてはややおっさんの自己認識。
バリバリ就職氷河期世代で自己評価低めですが、自己肯定感高め。マイペースで基本は楽天的ですが、仕事はややリスク重視に傾けがち。といった感じです。
2019年2月 着任当時のCTO観
当時、私はWeb/アプリの開発組織といわゆるSRE組織の2つのエンジニアリング組織を兼務統括する技術部長の立場でした。
自分で言うのもなんですが、責任感はそれなりに有る方だと思ってますし、CTOとか執行役員とか言われても「いや、今時点で技術を軸に経営と事業がドライブするにはを考えて行動してるし、実際問題なにか変わるのか?」
みたいなことを思っていて、正直あんまり「CTOとはなんぞや」といったことについて正面から考えていなかったのかもしれません。
そんなとき、初代CTOで前任の @kopug から「VPoEとしてマネジメント領域を見るので、CTOとライフの技術領域は任せた」と言われました。
何が変わるの?と思っていた割に面白いもので、
実際「任せた」の言葉をもらうと、「本当に今のままでよいのか?CTOとしてやるべきことってなんだ?」と自分の中に課題感が湧き上がり、改めて「CTOとはなにか」を色々と調べていきました。
とりあえずググってWebでよく見るのは以下。
・CTOのやるべきことは何なのか?(翻訳と考察)
・一般企業におけるCTOの役割を、5つのタイプで考える
・AmazonのCTOが説明するCTOの4つの役割
・CTOという職業の人を採用するときに気をつけるべきこと
私は「雑草系CTO」かな。
また書籍も何冊か読み、特に「エンジニアのためのマネジメントキャリアパス」でCTOの役割について、エンジニアマネージャと別にCTOはかくあるべき。とあって一般知識としてのCTO観は参考になるものがありました。
また、他の会社の現任CTOやそれに類する肩書の方々を片っ端からFollowしたり直接お会いして話をしたり、イベントやMeetupなどでどのような活動をされているかの意見交換などを行い、他社先輩のCTO観というのも吸収するようにしました。
これらより、"知識としてのCTO像" はついたのですが、自分の会社や自分自身と重ねた"私がCTOとしてあるべき姿"については、正直うまく説明できない状態でした。
多少のモヤつきありましたが、時間は待ってくれないのと、あんまり深刻にとらえて身動きできなくなってもしょうがないので、「崖から飛び降りながら、飛行機を作る」的に、活動をしながらそのへんは見出していく事にしました。
現在のCTO観につながる 3つの問い
それから、10ヶ月。
R&D領域として研究開発プロジェクトの推進と ラルーン生理日予測AIリリース、DevSecOps推進のための新規ツール導入や基盤整備、開発組織とSRE組織の役割分割。デリバリ速度向上のためのCI/CD基盤整備といった、技術で事業を推進するための活動を行ってきました。
また、外部PRとして ヤフー名古屋 Tech Meetup, Cloud Native Nagoya, 名古屋Ruby会議04 スポンサーLT などに登壇。
特に名古屋Ruby会議04ではスライドなしカンペなしで引越し侍の姿で会社紹介LTするという暴挙にでました。
悔いはない。(また来年よろしくおねがいします🤣)
それ以外にも炎上プロジェクトへの緊急参画など色々あって全部書くと大変なことになるので割愛しますが、あっという間の10ヶ月でした。
その中で、「あ、CTOとしてこうあるべきでは。」とモヤが晴れたような感触につながった、3つの問い を紹介したいと思います。
1. 結局「何屋」なのか。
1on1でメンバーからふと聞かれた問いで、「そりゃCTOですよ」って言ったら終いなんですが、そういう事ではなく、
私は何屋 = 自分の価値を最大限発揮できる要素はなにか? です。
技術的な知見や経験が一定ある自負はありますし、仕事と家庭の間で技術面キャッチアップもしていますが、それでも有限の時間の中で世の中のすべての技術を網羅して吸収し続けるのは事実上不可能です。
あのリーナスも既にコードは書いておらず、明確に「カーネルメンテナー」として振る舞っているし、create-react-app作者のDan Abramovさんも 2018年の段階で私が知らないこと を公開しており、みんな自分の中で価値発揮できることとそうでないことをきちんと認識しています。
"技術全般に責任を持ってなんとかする" のは気概として良いとして、そもそも私はどんな武器を持ったCTOなのか。を明確にした上で、
直接手を下す所、だれかに任せて行く所、追わない/捨てる所の線引きをして経営と事業を前に進めていくことが大事なんじゃないかと思います。
2. 会社の何に責任を持つのか。
社外メンターの方に言われた言葉で、若干「何屋」の派生なのですが、
要するに 執行役員CTO みたいなタイトルが着いた「から」、急にTech x 新規ビジネス立案を始めたり、いきなり今まで見たこともない事業に首を突っ込むべきなのですか?
あなたが本当に取り組むべき組織課題領域は何ですか?ということです。
私の場合、エンジニアリングマネジメントに関してはVPoEとの役割分担を前提としてますので、責任を追うべきなのは技術全般と自明です。
(ただスタートアップでCTO全方位がんばれフェーズの場合は当てはまらないことがあることは十分ある・・・とおもいます・・・!)
会社組織として、だれが何に責任を持って推進していくの網が重複してれば混乱の元ですし、掛かってなければそれは組織としての弱点になります。
組織として責任の網がもれなく掛かった状態であるか。そうでなければどうするのか?を考えて実行する責任がCTOにはあると感じました。
3. 2030年の世界はどうあって、会社としてやるべきことはなにか?
社内研修で取り扱った題材で、10年後、世の中はこうなっているかを考えてください。という問いかけでした。
これはぶっちゃけ正解はありません。気温変動、人口予測など予測しやすいものもありますが、確実にこうなる。といえるものは少ないです。ただ、そのなかで、多分これはこうなるだろうから、先手を打ってこうしておこう。というものが無いと、競合に二手三手先を行かれたり、破壊的イノベーションによりすべてを失う可能性もあります。
だから、目の前の事だけでなく長期的なビジョンを踏まえて"今やるべきこと"を定義する。ということと、予測の精度を上げて会社としての競合優位性を作る。の2つの機能を発揮する必要がCTOにはあると感じました。
おわりに
"3つの問い"の答えはなんでしょうか?
これは人によって変わります。 CTOとして所属する組織の特性や課題、本人の経験志向、市場状況や社会環境などが千差万別であるので、人それぞれであることが当たり前なんじゃないかな。と思います。
大事なのは "CTOとはこれです" という絶対解は無く、最大価値発揮できるよう自らに問うて自らで選択していくしかない。ということなんじゃないかな。と感じています。
同じような悩みを持たれてる方、おめーそれはちがうぜって方、
善意のコメント頂ければ幸いです。
長くなりましたが、来年も執行役員CTOとしてフルコミットしていきます!
Happy New Year!!
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