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◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店2「おなら文化と健康の証」

このは「ねえ、はなびー」

はなび「なんだよ?」

畳に寝そべって漫画を読んでいた弟のはなびは、ごろんと転がって面倒くさそうにこっちを見た。

このは「うちってもしかして、おならに開放的な文化なのかもしれない……」

はなび「は? なに言ってんの」

このは「どうやら、他の人たちは人前でおならをすることが、かなりタブーとされているようなんだよね。
基本的にはあたしおばあちゃんも我慢するんだけど、我慢できなくてしちゃったとしても、別にその、そこまでの恥ではないと思ってるの。
教室で、友達に『ちょっと、このは……ぷぅ、したよね? ぷぅ……』って、こっそり言われて。
なんていうかこう、おならってそんなに世間にはばかられるものなんだなぁって思いました」

はなび「普通人前では我慢するだろ」

このは「違うんだよ。おならをした時のタブー感というか、やっちゃいけない感が全然違う。罪の重さが違う。どうやらそれはうちの文化で、おばあちゃんに原因があるんじゃないかと思ってる」

はなびは怪訝そうに眉を寄せながら、座り直してこのはと向き合った。

はなび「オレはイヤだよ? 姉ちゃんが屁こいたら普通に怒るし、においの無いところまで逃げる」

このは「自分だっておならするじゃん」

はなび「うーん……。他人のおならは許せないけど、自分のおならは許して欲しい」

このは「ジャイアンか。
で、うちのおばあちゃんって『いいのよ、生活音だから』とか『誰でもおならもうんちもするの』みたいな、そういう価値観じゃん?
保母さんだったからっていうのもあるんだろうけど、おならやうんちに対しておおらかな人だと思うの。
自分がおならをしてもおばあちゃんには怒られない、許される。
そういう文化圏で育ったあたしたちは、おならに開放的な文化を持っていると言える」

はなび「実の姉がおならうんち連呼してる時の弟の気持ち」

おばあちゃん「ただいまー」

おばあちゃんがふすまを開けて入ってくる。
二人はおばあちゃんに向き直った。

このは「おかえりー、お店終わったの?」

立ち上がろうと力んだ瞬間、このはの尻からプゥーーと響く破裂音。
ゴロゴロと勢いよく畳を転がって回避行動をとるはなび。
このはの顔が真っ赤に染まる。

はなび「もおおおおおおーーーーーーっ! 姉ちゃん! 吸って! 責任もってぜんぶ吸って!」

おばあちゃん「すーはーっ! すーはーっ! んー、いい匂い! だいじょうぶ、健康の証!」

このは「やめて! 吸わないで! 恥ずかしい! なんか!」



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