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美容師の「日雇い化」
yahoo!newsで、以下のような記事が上がってきた。
『スキマバイト募集に「美容師求人」なぜ多い?「若手が居着かない」と深刻な人手不足に苦しむ現場の悲鳴 一方で「信用第一なのに“日雇い”でいいのか」』
記事から引用すると、
『自分の空いた時間を効率的にお金につなげる「スキマバイト」だが、その求人で目立つのが“美容師”だ。スキマバイト募集アプリにも求人が多く掲載されていて、美容師免許を持っている人向けに、「ブランクOK」「スキマ時間OK」、さらには「経験3年以上」など、短時間でも即戦力となる人材の求人は少なくない。
この背景には、美容院業界で「若手が定着しない」「離職率が高い」など、深刻な人材不足も指摘される。実際、「ホットペッパービューティーアカデミー」が今年4月に実施した「美容サロン就業実態調査」によると、美容師の初職就業期間は1年未満が10%、1年~3年未満が26.7%と、3年以内の離職率が約4割にのぼることが明らかになっている。』
さて、先日も『美容室の倒産件数が過去最高に』というニュースが出たばかりであるが、人手不足と原価高騰で、本来は営業利益率が高いといわれる美容系企業でも利益率が低下しており、雇用の流動性が急拡大しているのである。
その証拠に、現在では美容師の平均勤続年数は4年程度といわれる。つまり、カラーはなんとかできてもパーマやカットはできない美容師が大量生産されていて、カラー専門店やフリーランスサロン、シェアサロンなどがこういった定着できない美容師を業務委託で受け皿となって店舗拡大をしていく、という流れが出来上がっている。
したがって、今後もこの状況は加速していくと見てよいだろう。
美容師は国家資格である。
国民が、健康で文化的な生活を営むため「人の髪を切ってお金をもらっていいと国が認めた人」それが美容師であり、記事で指摘されているように「社会インフラ」という側面が大きい。
また、その仕事の性質とは「所得=客数」であり、機械化できない以上「労働時間=所得」となる。つまり、「熟達のリテラシー」という、自分自身の技術と付加価値を高めて高単価化できない美容師は生活ができなくなるわけである。
一方では、美容師という制度そのものが社会のセーフティネットとして機能してきた。
多くのそれを志す人は、そもそも「組織人」にはあまり向いていない下層の人であり、自分自身の限界が分からずに自分に「厳しくできない」人たちが多いのである。
それが現代、スマホの普及によって、「働きすぎ」「ブラック」「効率がいい仕事」などの口当たりの良い釣り文句に流されやすい情弱さが「見える化」され、結果、フィルターバブルに陥りやすく、長期視点で考えられずに自分を安く売ることに無抵抗になってしまうのである。
以上のように、美容師の「日雇い化」というコモディティ化は、それとは気づかないうちに美容師自身がまねいているといってよい。
しかし、このような現象は、かつて「熟達」が必要だとされていた職業(整備士、料理人、教育者、医療者、政治家など)全てにおいて見られるようになった。それをすでに予言していたのが、国分功一郎であった。
最後に氏の言葉をご紹介しよう。
『現代社会はマニュアル化が進み、人間そのものがひとつのアルゴリズムのように扱われている。いくらでも取り替えがきく存在として扱われ、労働者の主体が少しづつ変容する「熟達」というプロセスが無視されている。それらは、人間がAIに近づいて行っているということである。』国分功一郎
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