星海社の電子書籍参入は「いまさら」なのか?
講談社の子会社であるところの星海社が創業10周年記念企画として「電子書籍専用フォントによる」電子書籍の出版をアナウンスしました。
「電子書籍専用フォントを開発」の時点で「???」なわけです。アプリ側の対応どうするんだ、と。
そう思ってたところにImpress Watchに記事が上がっていたのでご紹介です。いろいろ引用しますが元記事もぜひご覧ください。
電子書籍専用フォントとは?
さてアプリ側の対応の件ですがなんと米Amazonに直訴したとのこと。
会議は「大爆笑」だったそうですよ。「なんで日本の小さな出版社がわざわざそんなことを考えるのか」って。
ですが「だがクレイジーだからやらせてみよう!」ということで、一発でOKが出ました。
さすがAmazonというスピード感ですね。ただ見切りをつけるのも早いので、後々アップデートで消されるなんてことが無いように売れてほしいものです。
※といってもどんなに売れても日本の市場規模ではAmazonの利益にならないので、Amazonが海外の出版社にも売り込んでいくのでしょうが。
フォント以外のこだわりについて
同社の小説には、レイアウトに凝った物も多い。文字や画面の大きさに合わせて文字を流し込む「リフロー」型の電子書籍では、そのすべてを再現するのは難しい部分もある。だが、そうした部分にも、出版社側として手をかけて再現していくという。
ここは詳細がまだ不明ですね。どんなものになるのか実際に買って確かめてみようと思います。手をかけすぎてリフロー型の利点が損なわれていなければよいのですが。
星海社はすでに「文庫」の新刊ラインナップを無くした。書店でビジネスをするなら、文庫という形態ではない、という判断からだ。そして、文庫の市場を代替するものとして、電子書籍を出すべく準備がすすめられていく。
星海社の本、特に星海社FICTIONSは凝った装丁が多いので(『RPF レッドドラゴン』とか)紙の書籍は愛蔵版として扱うのは理解できます。そもそも星海社文庫は「小さな愛蔵版、星海社文庫」のキャッチコピーのとおり、天アンカットで栞がつくという豪華なつくりで価格も千円を超えるものが多く、文庫として機能していなかったですし。
あと気になるとしたら価格でしょうか。さきほども言ったとおり星海社文庫も高価格でしたし、電子書籍でもこれだけの仕掛けを作るとなるとコスト的にそれなりの価格になりそうな気がします。「文庫の市場を代替する」つもりならできる限り低価格がいいと思うのですが……。
ほんとうに「いまさら」?
確認したら星海社文庫はもう4年も新刊が出てないんですね。当時から電子書籍を準備していたのでしょうか?専用フォントを作るにしても時間がかかるでしょうし。となると本当に「いまさら」なんでしょうか?むしろ「やっと出せる」が正しいのかもしれません。
星海社の今後に期待したいこと
星海社は自社サイト『最前線』にてコンテンツを無料公開し、その後に紙の書籍を出版して利益を得るというビジネスモデルで10年やってきました。これは現在Webコミックで多く採用されていますが当時はまさに「最前線」の手法だったと認識しています。しかし残念ながら『最前線』に読者を呼び込む導線ができておらず、コンテンツバリューに頼ってしまい苦戦していた印象があります。(※ただの憶測です。)なので宣伝面でもっとうまくできないかなぁと思っていました。すでにコミックではツイ4をツイッター上で展開することで巻き直しを図っているようですし、小説やノンフィクションでもWebを中心とした出版の実現を目指してほしいです。