自分を「正常」にはめこもうとした先にある不気味な世界
『消滅世界』(村田沙耶香・著)という小説の中に、実験都市というものが出てくる。そこでは、家族という概念を取っ払って、住民全員がみんなの「おかあさん」「子供ちゃん」として存在する「楽園(エデン)システム」が採用されている。
人工授精によって生まれた子供ちゃんは、「センター」に預けられて、『それぞれの脳の発達に合わせ、また心理学的観点からも十分に配慮して、個性に合わせたカリキュラム』で教育される。生活面からもコントロールすることで、すべての子供ちゃんが優秀な人材に成長するのだという。
ここでいう「優秀」とは、「多くの人が理想とする型にはめこまれていること」を意味する。その証拠に、楽園システムで育てられた子供ちゃんたちは、みんな似たような表情で似たような反応を示し、個性というものがまるで感じられない。
みんなでひとつの理想を目指した先、常識や「正しい」とされる価値観に自分をはめこもうとした先にあるのは、まさにこんな世界なんじゃないだろうか。
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