人口減少が招く危機 - #ベッドタウンが生き残るためにいま考えるべきこと
このシリーズでは、人口減少が加速する日本がどんなリスクを抱えているか、とくにベッドタウンがこれからどうやってサバイブしていけば良いのかを考えています。
前回の記事では、人口減少の凄まじいスピードを確認しました。また、人口減少が招く危機として、経済の停滞と介護現場などでの人手不足をあげました。
今回の記事では、人口減少がもたらす危機をさらにみてみます。
まず、人手不足です。
人手不足は前回取り上げた介護職だけではありません。
たとえば警察官です。
どの街にも駅前や商店街の近くに交番があります。交番は道案内をするだけでなく、近隣のトラブルや事件・事故に警察官が素早く駆けつけるための待機場所でもあります。また、交番に警察官がいるだけで、その近隣の治安は向上します。
しかし人口減少で警察官の成り手が少なくなると、交番に誰もいない「空き交番」が増加するでしょう。
警察官以外にも、街の安心・安全をまもってくれる消防隊員や救急隊員の成り手不足も心配です。
改めて言うまでもなく、火事や急病は時間との戦いです。対処がわずか数分遅れただけで、取り返しのつかない事態になります。人口減少と少子高齢化は消防署員や救急隊員の成り手にも影響します。肉体的にハードな仕事なので、シルバー世代には難しい仕事です。
賃金や待遇を改善するなどして人員を確保していかなければ、ごく近い将来にあなたがお住まいの地域で火事や急病が起きても、誰も助けに来てくれない事態になるかもしれません。ただ、人口減少の恐ろしいのは賃金や待遇を改善しても人が集まらなくなる点です。金をいくら積んでも、人がいなければどうしようもありません。
人手不足はインフラにも影響します。
私たちの生活に欠かせないのが流通です。
流通ドライバーは現在でも人手不足が深刻なのだそうですが、これは序章に過ぎません。コンビニやスーパーの棚が寂しくなる未来はすでにすぐ近くまで来ています。野菜や生魚などの生鮮食料品が希少品になるかもしれません。ネットで買い物をしてもなかなか届かなくなるでしょう。薬やガソリンも流通が滞れば入手が難しくなります。場合によっては命に関わる事態にもなりかねません。
人口減少が招く危機は人手不足だけではありません。
利用者不足による影響も無視できないでしょう。
例えば、日々の生活に欠かせないコンビニです。かつてコンビニは、お弁当と雑誌、ちょっとした文具などを買う場所のイメージでしたが、現在のコンビニは公共料金の支払い場所であり、宅急便の受けつけ場所であり、銀行ATM設置場所でもあります。「まちの安全・安心の拠点」の機能も担っています。重要な生活インフラです。
コンビニは店舗オーナーにとって利益率が低いビジネスです。客が少なくても光熱費や人件費はかかり続けます。毎日、相当数の売り上げがないと赤字になってしまいます。
私が住んでいる埼玉県鶴ヶ島市ではこの10年で、複数のコンビニが閉店しました。鶴ヶ島市役所近くにあったローソンは閉店し「眼鏡市場」になりました。ゴルフ練習場と藤中学校に挟まれたローソンは現在「ヤクルト」です。鶴ヶ島市役所通りにあったファミマも、西入間警察署そばのセブンイレブンも閉店しました。いずれも好立地に見えましたがビジネスを成り立たせるほどの売り上げが確保出来なかったのかもしれません。
一般顧客向けのビジネスを継続するためには、各業態ごとに必要な市場規模がなければいけません。極端にいえば、どんなに素敵なカフェを開業してもそこが無人島であれば成立しないのです。
利用者不足などでコンビニが撤退し、カフェや居酒屋が閉店します。すでに書店が1軒もない街が増えています。
街の重要な魅力は店です。飲食店や書店、美容室、映画館や劇場など、そういった店で過ごす時間が人生を豊かにしてくれます。しかし、利用者不足で閉店を余儀なくされる店が増えれば、街の魅力は損なわれていきます。街に魅力がなければ、住民は別の街へ引っ越すでしょう。
人口減少は他にもさまざまな影響があります。
空き家問題も深刻です。倒壊の危険や治安の悪化だけではなく、景観を損なう為に周辺地域の地価が下がります。
税収も減ります。
住民が少なくなれば、住民税収が少なくなります。国からの地方交付税も減らされます。税収が減れば、公共インフラをメンテナンス出来なくなり、行政サービスもやせ細ります。
公共料金も高くなります。
上下水道は人口規模に関係なく設備の維持・管理コストがかかります。そのコストを人口で割って負担するため、人口が少なくなれば上下水道料金は高くなります。私が住んでいる埼玉県鶴ヶ島市の上下水道料金は近隣地域で有数の高さです。
人口減少は後継者不足も招きます。
農業・漁業・林業などの第1次産業に限らず、地元で古くから営まれている商売や、地域の誇りである工芸品なども、後継者がいないために継続ができなくなります。
産業や文化が失われれば、街の活力と魅力は大きく損なわれるでしょう。
人口減少が招く危機をざっと見てきました。もちろんこれはごく一部です。他にもさまざまな危機がやってきます。一言でいえば、人口が減少すると安心して生きるのが難しくなります。5年後10年後は、今と全く違う光景がどの街にも広がっているでしょう。
対策は非常に困難です。知恵と力を集めて目の前にある危機を乗り切らなければいけません。
人口減少は日本全国で確実に進行している現実です。無関係な人は一人もいません。目を背けていても事態は悪化するだけです。
良かったら一緒に考えてください。
次回の記事は、地域コミュニティについて考えてみます。
ご意見・感想をいただけると嬉しいです。
鶴ヶ島たろう
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