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自治会の終焉? - #ベッドタウンが生き残るためにいま考えるべきこと

このシリーズでは、これから日本がどんなリスクを抱えているか、ベッドタウンがどうやってサバイブしていけば良いのかを考えています。

前回の記事では、出生数の減少・人口減少・団塊世代の健康寿命終了という3つのリスクが、今後どんな問題を招くのかを確認しました。


今回の記事では地域コミュニティについて、とくに自治会について考えてみます。


自治会とはなにか

自治会とはなんでしょうか。

自治会は地域によって町内会とも呼ばれます。地域住民が任意で加入する組織で、地域コミュニティの中心的役割を担ってきました。

ゴミ集積所の管理、祭りなどのイベント開催、防犯パトロール、防災訓練など、自治会の活動は多岐にわたります。

自治会の歴史は古く、源流は室町時代とも江戸時代ともいわれています。
第二次大戦後、占領軍が自治会を廃止させました。占領軍が撤収したのち、再び活動を始めたのが今に続く自治会です。

ここで注目したいのが、占領軍が問題視した、戦時中における自治会の役割です。

町内会というと、竹やり訓練やバケツリレーを想像しますが、これらは「防空」とよばれ、重要視されました。
「私たちはみ国を護る戦士です、いのちを投げ出して持場を護ります」という「防空座右銘」のもとに町内の一致団結がはかられ、「全都市の家庭が一燈たりともゆるがせにせぬよう」灯火管制にあたり、爆撃の際は消火につとめるように求められました。

回覧板にも、「若しこんな通信をすれば、スパイの手でどんなに悪用され、どんな大きな不利を招くかも判りません」とありますが、その内容を見ると、近所づきあいの何気ない会話です。
このような日常的なやりとりにまで監視や統制が及ぶようになり、町内会は個人生活に深く入り込むようになりました。
その後、町内会は大政翼賛会の下に置かれます。

[町内会っていつからあるの?|公文書に見る戦時と戦後 -統治機構の変転-](https://www.jacar.go.jp/glossary/tochikiko-henten/qa/qa20.html)


戦時中の自治会は戦争に国民を送り出すために「一致団結」し、町内にスパイがいないか互いに監視しあうという、とても息苦しい組織だったようです。

地域コミュニティという『絆』は素晴らしいものだと思いますが、『絆』の別の側面も忘れてはならないでしょう。

『絆』という漢字は「きずな」と読みますが、もう一つの読み方があります。「ほだし」です。

ほだし【絆】
①馬の足などをつなぐこと。馬の足になわをからませて歩けないようにすること。また、それに用いるなわ。
②自由に動けないように人の手足にかける鎖や枠など。手かせ。足かせ。ほだせ。ほだ。
③人の心や行動の自由を束縛すること。人情にひかれて、自由に行動することの障害となること。また、そのようなもの。

日本国語大辞典


人と人をつなぐ「きずな」は、自由を縛る「ほだし」にもなります。

自治会は「きずな」であり「ほだし」です。
困った時に声をかけて助け合う良き関係になることもあれば、相互監視や同調圧力で息苦しくさせることもあります。


自治会の現状

私が暮らしている埼玉県鶴ヶ島市などベッドタウンは新住民が多い街です。高度経済成長期以降に進学や就職などで地方から移り住んで来た人にとって、自治会は魅力的ではありませんでしたし、加入が当たり前という感覚はありませんでした。

自治会の加入率は年々低下しています。
総務省の調査によると、2010年から2020年にかけて、どの規模の自治体も加入率が減少しています。
人口20万以上30万未満の都市ではこの10年で自治会加入率が7.6%も減っています。

1.8区分のうち、「B.人口50万以上(指定都市を除く)」の各年度の平均加入率は最も低く70%に満たないが、「H.人口1万未満」の平均加入率は最も高く90%程度となっている。

2.8区分のうち、H22~R2の10年間の平均加入率の減少幅が最も大きいのは「D.人口20万以上30万未満」で▲7.6%だが、減少幅が最も小さいのは「H.人口1万未満」で▲2.9%である。

自治会・町内会の活動の持続可能性についてhttps://www.soumu.go.jp/main_content/000777270.pdf


加入率の低下の主要因は高齢化に伴う担い手不足のようです。
自治会の役員や会長になると、日常的にさまざまな仕事があります。平日昼間に自治会活動ができる人は高齢者に偏りがちです。負担は少なくないでしょう。

もともと加入率が減少していた自治会ですが、2020年からはコロナ禍が深い爪痕を残しました。
高齢者にとってハイリスクな新型コロナ感染症は、自治会活動を萎縮させました。集会や祭りなどの中止が長く続いたことによって、自治会活動を休眠状態にする地区が目立ってきました。

とくに地域への影響が大きいと感じるのは祭りの休止です。
私が暮らしている埼玉県鶴ヶ島市には、『脚折(すねおり)雨乞祭り』があります。麦わらや竹で作った長さ30メートルを超える龍を住民が担いで街を練り歩くという、とても見ごたえのある祭りです。
この祭りは4年に一度、オリンピックイヤーの夏に行われるのですが、前回はコロナ禍の影響で中止になりました。4年に一度の祭りなので、一度中止すると8年も間があくのです。技術の伝承や地域コミュニティへの影響が心配です。

隣にどんな人が住んでいるか知らないのが、大都市やベッドタウンの当たり前ですが、祭りのときは地域の住民とふれあえます。その「ふれあい」が断絶されてしまいました。

しかしそもそも、祭りの存続が危ぶまれていた地域は少なくありませんでした。少子高齢化の影響です。
祭りには人の力が必要です。企画、チラシの作成、会場の設営、現場の管理は、多くの人が役割分担をしなければできません。
自治会だのみの季節行事は、今後継続がますます難しくなるでしょう。


自治会が抱えるリスク

自治会は地域で大きな役割を果たしてきました。共助システムとしての自治会は、戦後の日本を発展させる上で、欠くことの出来ない存在でした。

しかし現在、自治会はその役割を終えようとしているのかもしれません。

急速な人口減少と少子高齢化という難題を抱えた地域では、旧来型の自治会がかえって地域の衰退を招きかねないリスクになる場合があります。

日本は今後数十年、どんなに出生率を向上させたとしても、人口は増えません。
地方自治体が生き残るためにすべきは、他の自治体からの移住者を増やすことです。移住者を増やせない自治体は生き残れません。

他の地域から移住者を呼び込む際に障壁になりうるのが、自治会の存在です。
都市部での生活に慣れた若い世代にとって、自治会はなにをやっているのかよく分からない老人会(失礼)のように見えているかもしれません。

誘われて自治会の会合に顔を出してみても、その土地に古くから暮らす高齢者が偉そうにしていたり、高齢男性が女性に対し差別的に接するのをみれば、自治会に加入する気持ちは消えうせるでしょう。高齢者に悪気はなくとも、世代間ギャップが高齢者を高圧的・差別的に見せるのです。

そもそも都市部から来た若い世代は、自治会の必要性を感じないかもしれません。ゴミ集積所の管理は集合住宅の管理人の仕事であるのが都市では普通ですし、防犯パトロールや防災は警察や消防の仕事だとおもうでしょう。
祭りなど地域のイベントは住んでいる地域のものに参加しなくても、ちょっと足をのばせば魅力的なイベントがあちこちで開催されています。

自治会には自治体から補助金がでているケースが多いです。若い世代からみれば、なにをしているのか分からない高齢者の寄りあいに、自分の税金がつかわれていると知ったら面白くないでしょう。

地方議員は自治会の要望を意識します。自治会員は一般的に投票率が高く絶対数の多い高齢者で構成されています。そのため、地元自治会は地方議員にとって大切な票田です。地方議員は自治会のイベントなどに小まめに顔をだし、支持を獲得しようとします。上がってきた要望には可能な限り応えます。結果として、多くの地方都市は旧住民に優しく新住民に冷たい施策が行われます。これでは新しい住民が増えるはずもありません。

一方で旧住民の自治会員からみれば、都市部からきた新住民は地域のためになにもしないフリーライダー(ただのり者)に見えます。自分たちが長い時間をかけて守ってきた地域に後からきて、傍若無人に振る舞う若者を良く思わない高齢者がいても不思議ではありません。

このように、活動が不活発で継続が困難な自治会が、新住民と旧住民の間に溝を作ってしまっているのが現状ではないでしょうか。


まとめ

誤解のないように強調しておきますが、私は自治会を悪く言っているのではありません。
ただ自治会の現状をみるに、いまの自治会のあり方では持続可能性が低いばかりか新住民獲得の障壁にもなりうる、と言いたいのです。

新しい時代の新しいコミュニティの形を見つけた地域だけが、人口減少・少子高齢化社会をサバイブできるのだとおもいます。

「新しい時代の新しいコミュニティ」とはどんな形なのでしょうか。
これからの時代をサバイブしていくためには、地域や立場、属性や党派性をこえて、知恵を結集する必要があります。

ぜひ、ご意見・ご感想をお聞かせください。

近いうちに続きを更新します。
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鶴ヶ島たろう


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