小川ひろみ氏(医師・鶴ヶ島市議会議員)の炎上事案: 小川ひろみ議員はどんな罪を犯し、どのような罰が適当か
私が暮らす埼玉県鶴ヶ島市の市議会議員である小川ひろみ議員(https://twitter.com/_ogawa_hiromi)が、Twitter(現 X)で炎上を起こして騒ぎになっているそうだ。小川ひろみ議員の辞職を求める声もあり、鶴ヶ島市の有権者として見過ごせない。
なにが起こったか
炎上しているのは主に、小川ひろみ議員による8月23日22時56分のツイート。
「とても面白い方がいたのでご紹介します。」
須田睦子さんという方(https://twitter.com/suudayoooooo)と小川ひろみ議員のやりとりをスクリーンショットした画像が添付されていた。
このツイートのなにが批判されているか
小川ひろみ議員が「とても面白い方」と「紹介」した須田睦子さんの夫、正太郎さんはコロナワクチン接種後に急死したそうだ。
私は存じ上げず恐縮だが、須田睦子さんはコロナワクチンの「被害者遺族」のようだ。
「ワクチン被害者遺族を指して"とても面白い方"と揶揄した小川ひろみは医師として議員としてひどい」と批判されている。
小川ひろみ議員は「被害者遺族」を揶揄したのか
問題となったツイートに添付されたスクリーンショット画像で示された、小川ひろみ議員と須田さんのやりとりを要約すると以下のとおり。
市議の権限で市民の個人情報を調べられないと言っている小川ひろみ議員に対し、須田さんは繰り返し「調べたらわかるはず」と訴えかけている。小川ひろみ議員はこのやりとりを指して「面白い方」と表現したようだ。須田さんが「被害者遺族」だから揶揄しているわけではない。
小川ひろみ議員のツイートにより、どんな反応があったのか
小川ひろみ議員のツイートを読んだ反ワクチン派とみられる多くのアカウントが、小川ひろみ議員に批判ツイートをよせる。その数は8月28日時点で数千におよぶ。
https://twitter.com/search?q=to%3A_ogawa_hiromi%20until%3A2023-08-28&src=typed_query&f=live
批判内容は
「被害者遺族」を揶揄するのはひどい
市議であり医師なのに心無い
須田さんに謝罪するべきだ
議員を辞職せよ
など。
なかには小川ひろみ議員の容姿を揶揄したり、出身校を侮辱したり、「死んだほうがいい」など極めて攻撃的なものもある。障害者差別や民族差別を使ったツイートも目にした。
鶴ヶ島市への影響
小川ひろみ議員のツイート後から、鶴ヶ島市に苦情の電話やメールを入れるよう促すツイートが散見されるようになる。
その影響か、鶴ヶ島市議会の事務局には、多くの電話やメールが殺到することとなったそうだ。
※追記 2023年8月31日19時00分
事実確認のため、私も鶴ヶ島市議会事務局に問い合わせをしてみました。
小川ひろみ議員に鶴ヶ島市議会はどんな罰を与えるべきか
まず前提として、今回の小川ひろみ議員のツイートが、議会外の個人活動として行われたものである点には留意しなければいけない(もちろん、公職である市議会議員であるのだから、個人活動のSNS投稿においても最低限度の倫理的ふるまいが求められるのは言うまでもない)。
たしかに、小川ひろみ議員のツイートは須田さんとのやり取りを揶揄したものだと感じる。しかし、議員が個人活動で発する言動は自由であるべきだ。ヘイトスピーチを行ったり、侮辱や名誉毀損などで起訴でもされない限りは、議会が注意したり処罰するべきではない。そんなことをすれば議員の自由な言論活動、政治活動の妨げになる。
電話が殺到して議会事務局の手間が増えたところで、小川ひろみ議員に責任はない。疑問や苦情があれば役所に連絡をするのも市民の大切な権利であり、かかってきた電話に対応するのは事務局の仕事のうちだ。議会事務局に配慮して言論活動を制約されるべきではない。
問題のツイートをした翌日、8月24日を最後に小川ひろみ議員はツイートをしていない。
議長から小川ひろみ議員に一切のツイートを控えるよう要請したと、同僚議員がツイートしている。
※追記 2023年8月30日22時00分
鶴ヶ島市議会から公式にステートメントがでました。
小川ひろみ議員に対し処分等は行っていない。
ツイートの自粛要請の事実もない。
※追記 2023年9月2日18:00
高橋議員から訂正ツイートがでました。
議員が個人活動の中で発した言葉が、侮辱でも名誉毀損でもヘイトスピーチでもないにも関わらず、議長がツイート自粛を要請する根拠はなんであろうか。まさかとはおもうが「世間を騒がせた罪」「議会事務局の手間をとらせた罪」なのか。そうだとしたら、それこそ問題ではないか。
小川ひろみ議員は医師として厚労省の見解と矛盾しない発信をし、議員として市民の個人情報にはアクセスする権限はないと答えた。それでも納得しない須田さんの再三の要求に呆れた小川ひろみ議員が、そのやり取りを指して「とても面白い方」と揶揄したのである。個人活動としてだ。議長が注意し、議会として懲罰するほどの重大な罪とは、とても考えられない。せいぜい、先輩議員の立場で「ほどほどにお願いしますよ」くらいに諭す程度に留めるべきだ。
ネットで炎上を起こした、議会事務局に多くの苦情が寄せられた、という理由で小川ひろみ議員に非があるかのような捉え方は間違っている。
今回の発言で小川ひろみ議員が市議会議員として不適格なのであれば、次の選挙で鶴ヶ島市の有権者が審判を下せば良い。
小川ひろみ議員への社会的罰は充分か
小川ひろみ議員は連日、膨大な数の誹謗中傷を受けている。また、職場である議会や公開している電話などにも苦情が送りつけられている。これはネットリンチと言って過言ではない。
議員に対するハラスメントや嫌がらせ、誹謗中傷は、深刻な問題だ。たとえばイギリスの議会において、ネット上の誹謗中傷があまりにひどいため特に40代以下の若手議員の離職が顕著になっている、という報道が、8月19日に共同通信で報じられたばかりだ。
著名なウェブライターで東京新聞のコラム欄をもっている中川淳一郎氏が、担当している連載記事欄を使って「新聞沙汰にする」とツイートしている。
中川淳一郎氏は、古くからのネットユーザーにはよく知られた存在で、『炎上するバカさせるバカ』や『ウェブを炎上させるイタい人たち』など多数の著書がある。ネットの炎上に大変詳しい人だ。
中川淳一郎氏自身もこれまで、基地問題に翻弄される沖縄を揶揄したツイートなど、多くのネット炎上を起こしている。中川淳一郎氏のツイートが炎上をよんだ沖縄への問題ツイートを振り返った記事において、氏はこう記している。
小川ひろみ議員に「とても面白い方」と「紹介」された須田さんは、小川ひろみ議員の揶揄に対し「私はとても面白い奴だそうです」とツイートした以外、なんの反応もしていない。
須田さんは小川ひろみ議員に対し抗議をしていないし、謝罪も要求していない。現在起きている小川ひろみ議員に対するバッシングを当事者である須田さんは望まれているのだろうか。私にはそうはおもえない。須田さんは純粋に、須田さんが感じておられるコロナワクチンの危険性を小川ひろみ氏に認識して欲しかっただけなのではないか。
もし須田さんが小川ひろみ議員に今回のことで罰は与えたいのであれば、 小川ひろみ議員を民法709条(不法行為)で訴えるのが最も有効だ。議員相手なら発信者情報開示請求などしなくても名前と住所は公開されているため訴訟費用は安くすむ。裁判にでもなれば、議会もあらためて小川ひろみ議員に"罰"を与えることになるだろう。
現在起きている炎上は中川淳一郎氏の言葉を借りれば、「当事者を置き去りにした空中戦が繰り広げられている」のだ。「本来は、当事者にとって問題解決になることだけをするべきなのに」。
小川ひろみ議員は議長から注意を受け、ネット上で多くの攻撃を受けている。職場である議会や元の職場である病院や出身校にも迷惑がかかっているだろう。公開されている電話番号や住所にも批判の連絡が届いているのは想像にかたくない。ご家族や友人も心労を抱えてらっしゃるのではないか。
小川ひろみ議員の"罪"は「揶揄した相手がコロナワクチン被害者遺族だった」である。 罪に対して充分すぎる社会的罰を受けている。これ以上の罰は不当である。
まとめ
小川ひろみ議員は6月定例会の一般質問の最後に、このような発言をしている。
小川ひろみ議員は当選して初めての議会において、医師の知見を活用して市民のために積極的に働く意志を示している。
また、議員報酬の一部を寄付するという選挙時の公約を守り、毎月10万円を市外のNPO団体に寄付をしている。
私は小川ひろみ議員と、選挙や議会傍聴の際に何度か言葉を交わしたことがある。一見クールな印象であったが話してみるとチャーミグな好人物で、鶴ヶ島市のことを熱心に考える有能な議員だった。4月の選挙で私は他の候補者に投票したのが心苦しいが、地域の人には自信をもって紹介できる市議会議員だ。
今回の炎上は、互いの立場や考え方の違いから生じた誤解が発端だ。小川ひろみ議員は決して、薬害の被害者を揶揄するような人間ではない。
当事者である須田さんは今回のことに関して小川ひろみ議員に抗議もしていないし、謝罪も要求していない。当事者でないものはそろそろ口をつぐむ時ではないか。
鶴ヶ島市議会は、議員の個人活動で発せられた物の言い方にまで介入すべきではない。今回のことでなんらかの懲罰を小川ひろみ議員に与えるのであれば、それこそニュースになり、他の自治体のいい笑いものである。小川ひろみ議員の先輩議員や議長・副議長におかれては、もっと鷹揚に構えて、ことの本質を捉えていただきたい。
今回のケースに限らずネット炎上に加担している人、ネット炎上を起こした人に、中川淳一郎氏の言葉をおくる。
最後になったが、須田さんをはじめとして薬害の被害にあったすべての人が心穏やかに暮らせる日々が一日も早くやってくることを切に願う。
※追記 2023年9月2日19:00
デイリー新潮の記述のファクトチェック
9月2日づけのデイリー新潮Web版に、小川ひろみ議員の炎上事案についての記事が掲載されました。
執筆者はライターの山内貴範氏
記事の内容は地方議会の問題についてです。
小川ひろみ氏に関係する記述の一部に問題を感じたので、一次ソースを確認してみます。
小川ひろみ議員が引用したのは須田睦子氏のポストというのは本当か
先に確認したとおり、小川ひろみ議員が引用したのは「須田睦子氏のポスト」ではなく、小川ひろみ議員と須田さんとのやりとりである。
ツイートでは分かりにくいが、引用されたスクリーンショット画像は以下のとおり二人のやりとりだ。
市議の権限で市民の個人情報を調べられないと言っている小川ひろみ議員に対し、須田さんは繰り返し「調べたらわかるはず」と訴えかけている。小川ひろみ議員はこのやりとりを指して「面白い方」と表現したようだ。須田さんが「被害者遺族」だから揶揄しているわけではない。
「鶴ヶ島市議会は公式Xを更新(中略)炎上は収まる気配がなく」は本当か
8月30日17時29分、鶴ヶ島市議会は公式Xから声明を出した。
声明後も「炎上は収まる気配がなく」は本当だろうか。
リプライの数を確認してみる。
ネット炎上はリプライだけではなく引用ツイートやアカウント名を指した言及も含まれるが、対象アカウントに対するリプライは炎上の指標となる。
手作業のカウントなので、多少の誤差はご容赦願いたい
小川ひろみのアカウントに送られたリプライの数
鶴ヶ島市議会公式Xから声明が出された8月30日の翌日には、小川ひろみ議員へのリプライが激減している。
では、公式声明をだした鶴ヶ島市議会アカウントは炎上しているのだろうか。
鶴ヶ島市議会アカウントに送られたリプライの数
24時間で5件とか15件のリプライを「炎上は収まる気配がなく」という人がいれば、よほどネットに疎い人だろう。
山内貴範氏は何を根拠にしているのだろうか。
「自分の頭の悪さを認めることができない人」とは誰のことか
「自分の頭の悪さを認めることができない人」とは、なかなか強い表現である。こんなことを一般人や薬害被害者遺族にむけて発したのであれば、市議会議員として問題があるだろう。
確認してみる。
小川ひろみ議員が「あね」さんのツイートを引用したところから始まる。「あね」さんは「ワクチン被害者遺族」で、体験を漫画にしてTwitterで発表した。そのツイートが小川ひろみ議員が引用した。
この小川ひろみ議員の連投に対し第三者のアカウント、「トスターダ(内科医)」氏がリプライを送り、エビデンスについての議論が始まる。
このあとエビデンスについてのやりとりが交わされるが、少し長いので省略する。詳しく知りたい人は以下のリンク先からスレッドを遡ってほしい。
https://twitter.com/_ogawa_hiromi/status/1693957839889559637
問題となる直前のツイートから確認する。
このあとに、問題視された「頭の悪さを認められない人」発言があった。現在は削除されている。
このツイートに対し、「あね」さんがリプライをしている。
ちょっとわかりにくい。
つまり、小川ひろみ議員が「頭の悪さを認めることができない人」と名指した対象は、「被害者遺族」の「あね」さんではなく、「内科医」を名乗るアカウントなのだ。
「頭の悪さ」発言の前、小川ひろみ議員と「内科医」氏のやりとりを要約するとこうだ。
「内科医」氏が論文をだして小川ひろみ議員の間違いを指摘し、小川ひろみ議員は「内科医」氏から指摘された「間違い」の間違いを指摘。「内科医」氏は小川ひろみ議員からの指摘に答えず、自分が示した論文を小川ひろみ議員が知らなかったことを批判。小川ひろみ議員は、特定の論文を医師が知らないことで医師が責められることはないと返し、論文の吟味ができない「内科医」に呆れる……。
このような流れだ。
医師同士が論文を持ち出して議論した。論文の内容を吟味できていない「内科医」氏に対して同じく医師である小川ひろみ議員がつぶやいた。これが問題とされたツイートだ。同業者間のやりとりだ。
しかし、この小川ひろみ議員のツイートを、恣意的に切り取るとこうなる。
これと同様のスクリーンショット画像をつかった批判は複数見られた。
これでは、小川ひろみ議員が「ワクチン被害者遺族」の「あね」さんに対し「頭の悪さを認められない人」と侮辱したようにみえる。しかし実際は、小川ひろみ議員と「内科医」氏とのやり取りの末に出た発言だ。
発言は前後の文脈によって意味がかわる。流れの中から一部を切り出して批判すれば、「恣意的な印象操作」の誹りを免れない。
「教育レベル」ツイートは何が問題なのか
内容を検証するまえに、「炎上」の基準についてひっかかった。この追記を書いている9月2日18時現在、当該ツイートには35件のリプライ、78件の引用ツイートがついている。10年前ならともかく2023年の現在、この程度の反応を「炎上」とよぶのか、私は疑問である。
内容の検証にもどる。
小川ひろみ議員の発言は、どこが問題なのだろうか。
このツイートによせられた反応をみてみる。
どうやら、小川ひろみ議員のツイートは「低学歴差別発言」だと批判されているようだ。
小川ひろみ議員は、自身のツイートを引用して、このように根拠を示している。
最終学歴と予防的医療アクセスにははっきりとした相関関係があるようだ。この点は、今後の医療を考える上で重要な視点で、まずは事実を周知することから始めなければならないだろう。
最終学歴が、育った家庭の経済力に強く影響を受けることはよく知られている。経済格差が学歴格差になり、健康格差や寿命格差につながる現状への問題提起が、小川ひろみ議員のツイート主旨だと受けとるべきであろう。「学歴」という言葉にのみ反応して、「学歴差別だ」と批判するのはいかがなものだろう。
小川ひろみ議員はなぜ「開示請求する」と言ったか。それは脅しなのか。
「自分が気に食わない発言をした人に対し、開示請求をすると脅していた」と山内貴範氏は書いている。事実を確認してみる。
検索してみたが、小川ひろみ議員が「開示請求」と書いているツイートは一つだけだった。
ここで言う「開示請求」とは、「発信者情報開示請求」のことであろう。ネット上で侮辱・名誉毀損・脅迫などの問題書き込みがあった場合、被害者はコンテンツプロバイダ(例: ツイッター社)にIPアドレスを、アクセスプロバイダ(例: ソフトバンク社)に氏名や住所を開示するよう、裁判所に申し立ての上で請求することができる。氏名と住所が分かれば、民事訴訟を起こせる。
つまり「開示請求します」という発言は、「あなたを民事訴訟するかもしれません」と暗に伝える行為だ。
言うまでもないが、訴権は大切な権利である。権利侵害を受けた人が相手を訴訟すると宣言することが「脅し」だと受けとる人がいるのであれば、その人は訴権をなんだと思っているのだろうか。
さて、小川ひろみ議員が受けた「自分が気に食わない発言」とはどのようなものであったのだろうか。小川ひろみ議員が「自分が気に食わない発言」程度で訴訟するのであれば訴権の濫用で、厳に慎むべきである。
確認してみる。
このアカウントは、小川ひろみ議員の家族まで指して、「寄生虫一家」と言っている。完全に侮辱である。公然と侮辱する行為は犯罪だ。
記事執筆者の山内貴範氏はこのような侮辱を「自分が気に食わない発言」と書いている。良識を疑う。
追記のまとめ
確認して分かったのは、山内貴範氏のデイリー新潮の記事は恣意的な切り取りがあり、小川ひろみ議員への批判が目的になっているように感じる。このような文章を書かれるのは自由だが、私のようにnoteかツイッターなどでお願いしたい。
デイリー新潮はまともな調査記事やスクープもあるので、今回の記事は残念だった。訂正記事を期待する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?