すまスパで結婚トークからの、衣装選びの巻
さる金曜日の晩、ピリカさん、とき子さんのすまいるスパイスにお邪魔してきた。
実は、とき子さんの初ゲスト回である。
そんな記念すべき回にお呼びいただいて、もう感謝感激!
そしてちょうどこの収録日は、結婚式の衣装選びの前日だった。
すまスパのお誘いをいただいたとき、これはもう結婚の大先輩であるお二人になんでも聞いとくれというピリカさんの粋なお計らいなのではないかとさえ思った。
そんな意気込みで迎えた当日、お二人の結婚式の思い出をたっくさん聞かせてもらって、学びあり、大爆笑ありのなんとも贅沢な一時間に。
それにしても世代や地域によって、結婚式のやり方って全然違うんだなぁとびっくりした。
ピリカさんの怒涛のお色直しやとき子さんのブライダルエステでの悲劇などなど、華やかな一日に向けての大準備の数々、そして当日のドタバタエピソードをお聞きして、もうメモを取る手が止まらない。
私たちはそれぞれの両親と弟たちだけ呼んで、お色直しもしない超シンプルバージョンの予定。
それでもテーブルに飾るお花や料理のメニュー、衣装やメイク店など考えることが山もりあるように感じて、すでにひーひー言っていたのだけれど。
そっか、席次表とかスピーチ依頼とか、人数・余興盛りだくさんでやろうとしたらもっともっと大変なのか!とちょっと気が遠くなった。
三人三様の結婚式、ぜひすまスパでお楽しみいただければ幸いです。
そしてこのときは絶賛募集中だった「夏ピリカグランプリ」も、いまは審査期間に移っています。
ご執筆いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
とき子さんのキレッキレの結婚式エピソードはこちらから。
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さて。
明けて土曜日、衣装を選びに式場へ。
予約した12時に間に合うように家を出ると、アスファルトから湯気が立ち上るような禍々しい暑さだった。
私たちは自分たちの持っている最薄の服に身を包み、首筋に冷却タオルを巻くというおよそ式場に行くとは思えない格好で式場内の衣装店に向かった。
汗だくの私たちを出迎えてくれたのは、すっごく丁寧な口調の同い年くらいのお姉さん。
汗を拭き拭き事前アンケートに答えたあと、まずは白無垢が整然と並んだ棚に案内された。
ちょっとハイカラなお花柄と、鶴や御所車が縫い付けられた古典柄のどちらがいいかと見せていただいて、「鶴がいる方でお願いします!」と迷わず即答。
とはいえお花柄を除けば、基本どの白無垢にも鶴はいて。
パールが入った鶴、立体感のある刺繡の鶴、群れをなして生地を舞う鶴、堂々と存在感のある鶴……。
『鶴図録』としてまとめたくなるような鶴たちの艶姿に迷い果てた私は、とりあえず予算内に収まっている三枚の白無垢を着せてもらうことにした(もちろん全部、鶴刺繍)。
一枚目に着たのは、立体感のある刺繍の、袖に赤色が入った豪奢な雰囲気の白無垢。
ワンピースの上から簡易的な着物を着せてもらって、その上から白無垢を羽織る。
「あー、お着物似合いますねぇ」
お姉さんの言葉にホッとしつつ顔を上げると、前髪が汗でびったりと額に張り付いている鏡の中の自分と目が合った。
いや、汗かきすぎじゃね?
ハンカチで首元や額やらは拭いたのだけれど、前髪がすでに手遅れになっていたのにはまったく気がつかなかった。せっかく久しぶりに化粧までしてきたのに、台無しである。
万が一にも、白無垢を汚すわけにはいかない。
緊張するとまた噴き出そうとする汗をなんとかなだめつつ、スマホを構える彼の方に顔を向ける。
あとで写真を見ると、これ以上汗をかかないようにと緊張していたせいか妙にこわばった笑顔で写っていた。つらい。
続く二枚目は、柄の間に余白が多い、ほかと比べると素朴な白無垢。
袖を通した感触がつるりと心地よく、そう言おうと彼とお姉さんを振り返ると二人は無表情で直立していた。
ちょっと埴輪に似ていて、こわい。
一瞬の静寂の後、お姉さんは「とっっっても似合ってます!!!」とこれまでにない声量で断言してくれ、彼は「……それ、めっちゃいいな」と押し出すようにつぶやいた。
そ、そんなに?
たしかに前に着た白無垢よりは質感といい刺繍のさりげなさといい、なんだか好きだなぁとは思ったけれど。
でも……。
後ろで一つにまとめた髪に手をやって、「これ、ちゃんとしたカツラかぶりたくなりますね」とお姉さんに言ったら、「だよね、超わかる!!!」と彼女は勢いよく頷いた。
解釈の一致からの、突然のタメ口。
三枚目には銀色の入った重厚感のある白無垢を着せてもらったのだけれど、満場一致で二番目の白無垢に決まった(ヘッダーのやつです)。
その後、彼氏も三パターン紋付き袴を試着。
①黒い着物と紋付きに、縦縞の白黒の袴というスタンダードスタイル。
②緑の着物と紋付きに、笹模様の袴。
③白い着物と紋付きに、亀甲模様の袴。
えー、どれも似合う~!!
着せ替え人形と化して心なしか普段より精悍な顔つきの彼を、大はしゃぎで撮りまくる。
でも、一番よかったのはこれだな。
心の中でベスト紋付きを決めたうえで「どれが好き?」と彼に聞くと、「二番目の、緑のやつかなぁ」と彼が言った。
めちゃわかる!!!
「これいいよね!!!」とまたバカウケするお姉さん。
またしても鮮やかに一致して、私たちは清々しくお店をあとにした。
つつがなく衣装が決まって気が抜けたのか、急に腹が鳴った。
そういえば12時からの予約だったから、おむすびを結んできたんだった。
おむすびを食べられそうなところを探してホテル内をうろうろしたが、煌びやかな空間に吞まれてラップを開く勇気が出ない。
結局式場から出て少し歩いた公園のベンチで、ふたりひっそりとおむすびを食べた。
大きくブランコを漕ぐ子どもたちの笑い声と、帽子をかぶれと砂場の子に注意する親の声を聞きながら、黙々と米を食む。
眩しい青空、風に揺れる木々、水風船のゴムの匂い。
私、本当に彼と結婚するんだ。
わいわい衣装を選んでいたときにはなかった実感が急に湧いてきて、つい強めに彼氏の背中を叩いてしまう。
「どしたん?」と間の抜けた声でこちらを見た彼はもう、衣装店で見たキリっとした青年ではない、何の変哲もないいつもの彼だった。
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