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外国にルーツを持つ子どもたちとともに

IAPE(イアペ・外国人児童生徒保護者交流会)の取組み

「だれもが安心して豊かに生活できる多文化共生の地域」を目指して、1993年、当時鶴見区に勤務していた小中高等学校の教員を中心に、IAPEが設立されました。IAPEの活動は、交流会(94年~)、ポルトガル語教室・スペイン語教室(94年~)、沖縄へルーツを探る旅(94年~)、サッカー教室「FC IAPE」(96年~)があり、IAPEのスタッフの他に、IAPEの活動を支援する人たち、IAPEの活動に参加したOG・OBたちの協力のもと、各活動を実施しています。
今回はその活動の一つ、サッカー教室「FC IAPE」について、指導に携わるIAPE事務局の板橋さんに話を伺いました。板橋さんは、外国にルーツを持つ子どもたちと長年関わり、その経験を活かしながらサッカーを通じて彼らの成長を支援しています。

IAPE事務局の板橋さん

サッカー教室の始まり

板橋さんがこのサッカー教室に関わり始めたのは、約18年前のことです。当時、板橋さんは潮田小学校に勤務しており、そこで外国にルーツを持つ子どもたちのサポートを目的としたサッカー教室が行われていました。この教室は、土曜日の午前中に、潮田小学校のグラウンドで開催され、外国にルーツを持つ子どもたちが中心に自由に集まり、サッカーを楽しむ場として機能していました。 「最初は、中学校のグラウンドを借りていたんですが、小学校の子どもたちも増えてきたため、徐々に小学校のグラウンドに場所を移していきました」と当時を振り返ります。自身も、教員としての勤務と並行して、この活動に深く関わるようになったそうです。

ボールを蹴って通い合うコミュニケーション

サッカーを通じて子どもたちが他者と協力することを学ぶと同時に、自己表現の機会を得ることができると感じているという板橋さん。また、外国にルーツを持つ子どもたちが直面する言葉の壁や文化の違いを、サッカーという共通のスポーツによって通じ合える場であることを強調します。 「サッカーは言葉がなくても楽しめるスポーツです。日本語が苦手な子どもたちでも、ボールを蹴っている間は一緒に楽しめる。それがきっかけで、友達ができ、コミュニケーションが生まれていきます」。

試合前にグループでパス練習

外国にルーツを持つ子どもたちの支援

サッカー教室に取り組む理由として特に重視しているのは、単なるスポーツ指導に留まらず、このFC IAPEが外国にルーツを持つ子どもたちの「居場所」となることにあります。彼らの中には、言語の壁や文化的な違いから日本の学校生活に馴染むのが難しい子どもも少なくありません。そのような彼らにとって、サッカーをする場は新しい友達を作り、自分らしくいられる貴重な場所となっています。「日本語が得意でない子どもたちも、遊んでいるうちに他の子どもたちと自然に交流できるようになるんです」と板橋さんは語ります。また、教室にはブラジルをはじめとする南米にルーツを持つ子どもたちが多く、共通のバックグラウンドを持つ子どもたちが集うことで、言葉の壁を越えた交流が生まれています。

サッカーが心の支えになる

参加している子どもたちの中には、生活の中で不安を抱えている子も少なくないそうです。「プレーの後に、突然、家族のことや将来のことなど、抱えている不安について話し始める子もいました」。FC IAPEが単なるスポーツの場ではなく、子どもたちが自分の不安や悩みを共有できる貴重な機会となっているのです。「ボールを蹴って仲間と楽しんでいるときは、子どもたちがその不安を忘れ、前向きになれる場になっているのではないか」と言葉を継ぎます。日常生活では見えない子どもたちの一面がサッカーを通じて表れることがあり、それが彼らにとっての心の支えにもなっているのです。
また、教室の終わりには、軽いお菓子を食べたり、飲み物を飲んだりして、リラックスできる時間を設けています。「参加者同士や、大人とも自然に話す機会を作ることで、FC IAPEが子どもたちにとって安心できる場所になってほしい」。

熱中症予防にしっかりと水分補給をします

外国にルーツを持つ子どもたちにとっての貴重な居場所となっているFC IAPE。参加児童や生徒が自分らしくいられる環境を提供し、彼らが新しい友達を作り、日本での生活に少しでも早く馴染めるようサポートする重要な役割を果たしています。 今後も多文化理解や多様性を尊重する支援がさらに広がっていくことが期待されます。

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