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『かかりつけ管理栄養士』のいる未来は、とても明るい。 — レシピコンテストの取材を通してわかったこと

レシピコンテスト。その背景に、将来の健康の在り方を左右する、熱い想いと壮大なビジョンが隠れているとは、取材前には全く予想していませんでした。




『レシピコンテストの結果が出ました』。そんなお知らせが舞い込んだのは、ちょうどトータルビューティコンテストの取材準備をしていた秋頃のことでした。お知らせの詳細を見ると、「管理栄養士」を対象としたレシピコンテストで、定期的に開催されているようです。管理栄養士?なぜドラッグストアでレシピコンテストが?今回もいろいろな疑問が浮かんできます。これは取材のチャンスです。


『管理栄養士』レシピコンテスト

管理栄養士レシピコンテストの責任者 木根本部長


こうして私は情報の発信元をたどり、レシピコンテストを取りまとめる責任者の 株式会社ツルハホールディングス 執行役員 グループ能力開発部門担当 能力開発本部長 木根(きのね)さんにお話を伺うこととなりました。


——レシピコンテストについてお話を伺いたいと思ってご連絡いたしました


木根:
ありがとうございます。レシピコンテスト、正確には「管理栄養士レシピコンテスト」と言いますが、これはツルハグループに所属する管理栄養士が考案した『簡単・手軽に調理が出来て、おいしく栄養を摂取できるメニュー』を募集し表彰するというコンテストです。主に管理栄養士のスキルアップや認知の拡大を目的として、2020年より継続して開催しています。


——管理栄養士って、栄養士さんのことですか?

木根:
実は栄養士と管理栄養士は全然違う仕事なんですよ。どちらも栄養士法という法律に定められた国家資格という点は共通ですが、栄養士は健康な方を対象に栄養指導や給食を行う一方で、管理栄養士は病気や高齢のため食事がとりづらくなっている方たちや、個別に指導の必要な方たちに対して、栄養指導や栄養管理を行うという、高度な専門知識が必要になる仕事なんです。そのため、栄養士は都道府県知事が発行する免許であるのに対して、管理栄養士は厚生労働大臣が発行する免許となっているんですよ。


——そうなんですね。恥ずかしながら全く知りませんでした。そもそも栄養士さんってあんまり身近にいないイメージがあります。給食などでお世話になったくらいだと思います。

木根:
そうですよね。実際のところ、これまで管理栄養士の活躍の場は、主に病院やクリニック、介護施設、学校や企業の給食施設などで、一部の方が保健所など公務員として働くというのが一般的だったようです。

なぜ『レシピコンテスト』なのか

管理栄養士の魅力を、熱く語ってくださいました(グループ管理栄養士会議会場にて)


——でも、管理栄養士を対象にしてレシピコンテストを開いているということは、ツルハグループにもある程度の人数が在籍されているのでしょうか?

木根:
良いところに気づいてくださいました。そうなんです。実はツルハグループには現在800名近くの管理栄養士が在籍していて、今も積極的に採用を進めています。


——800名も!でも、先ほど伺った管理栄養士さんの仕事の内容からすると、ドラッグストアにおける活躍の場って限られてしまうように感じます。

木根:
以前は確かにそうでした。私が教育の責任者となった2014年頃は、管理栄養士を積極的に採用するという動きはありませんでした。管理栄養士の資格を持つ、非常に志の高いスタッフは在籍しておりましたが、正直なところ皆さんの職能が活きる場を我々が用意することが出来ていなかったと言うのが実情です。でも、管理栄養士の皆さんは、そうした中でも「自分のスキルを活かして働くことが出来るはずだ。」という強い信念を持って仕事に取り組んでおられましたし、何よりも目を輝かせながら、未来を見据えている姿に個人的に感銘をうけたことを覚えています。


——そこからどのように、今の800名にもなる管理栄養士のグループへ拡大していったのか、いきさつが気になります。

木根:
そもそも、管理栄養士は「食事で健康をサポートする」という意識がとても強いのが特徴です。そのため一見、サプリメントや健康補助食品など、様々な商品を扱うドラッグストアとは相性が悪いように思えるのですが、お客様の健康をサポートしたいという部分では目的がぴったり一致していました。それならきっと何か出来るのではないかと、当時の社長と、管理栄養士の皆さんと一緒に考えた施策のうちのひとつが、「レシピを作ってお客様に渡す。」という活動だったんです。その時すでに自主的にレシピを作成して店舗に置いている方もいらっしゃいました。


——その流れでレシピコンテストを開催することになったと言う訳なんですね。

木根:
そうです。他にも、管理栄養士が在籍していることをお客様へ積極的にお知らせする施策をとってみたり、管理栄養士の資格を持つ方に手当を付けたりと、少しずつ管理栄養士のみなさんが働きたいと思える職場作りを進めていくことができました。


——管理栄養士の皆さんを受け入れるための環境整備をしていったと言うことなんですね。でも、そこからさらに沢山の方を積極的に採用することに決めたのはどうしてなんですか?

木根:
それはきっと、本人たちに話を聞いて貰えば、すぐに理解していただけると思いますよ。一人、適任の方が居るので、ぜひインタビューしてみてください。



という訳で、木根さんのインタビューの途中ですが、ツルハグループの管理栄養士の方に直接話を伺うこととなりました。ご紹介いただいたのは、株式会社ツルハ 中部・関西運営本部 管理栄養士 リーダー の 竹本(たけもと)さんです。木根さん曰く、管理栄養士がなぜドラッグストアに必要なのか、熱く語ってくれる方とのこと。早速、お話を聞きました。


管理栄養士:竹本さんインタビュー

株式会社ツルハ 管理栄養士リーダー 竹本さん


管理栄養士を目指したきっかけ


——早速ですが、竹本さんは入社が2018年と伺いました。そうすると、まだ現在のように積極的に管理栄養士を採用していなかった頃ですね。

竹本:
そうです。私たち管理栄養士としても、ドラッグストアへ就職しようと考える人たちは少なかったように思えます。私ももともとは病院への勤務を希望していました。


——そうなんですね。でも現在はドラッグストアに勤務しておられます。進路が変化したところに、きっと竹本さんを紹介していただいた真意がありそうです。竹本さんが管理栄養士を目指したスタートのところから順を追って教えていただけますか?

竹本:
わかりました。私が管理栄養士という職業を知ったのは高校時代のことです。どんな職業なんだろうと調べてみると、病院や高齢者施設で栄養管理をする仕事なんだと知りました。その時、ふと祖父のことを思い出したんです。祖父は私が幼い頃から寝たきりで、特別養護老人ホームに入所していました。飲み込みもうまく出来ない状況だったので、食べ物はムース食(食べ物をムース状にして食べやすくする手法)でした。栄養を摂ることが目的なので、食事の全部をごちゃ混ぜにしてもいいとは思うのですが、その時出されていたものは、緑色のムースやオレンジ色のムースなど、素材の色ごとに分けられたとても綺麗なものだったんです。小さいときの記憶ですが、今でも鮮明に思い出すことが出来ます。きっと、食事を作る人が、少しでも美味しそうに、栄養を摂ることを楽しめるようにと、手間をかけ工夫をしてくださっていたんですね。そして、それが管理栄養士がする仕事なんだということに気づきました。それで、私もそういう仕事をしたいと強く思うようになりました。


病院志望からの変化〜ドラッグストアへの入社


——それで病院や施設での勤務を希望しておられたんですね。そこからどのような変化があったんですか?

竹本:
大学3回生の夏までには、進路を病院一本に決めて、現地実習を重ねていました。その時の実習先の病院にはNST(Nutrition Support Team, 栄養サポートチーム)という医師や看護師、薬剤師や理学療法士、そして管理栄養士が一つのチームとして患者様の栄養管理を行う仕組みが導入されていて、私も定期的に病棟に上がらせていただき、直接入院患者様とお話しする機会がありました。とてもやりがいのある仕事でした。
あるとき、それまで美味しそうに食事を食べて感想を教えてくださっていた患者様が、急に「ちょっとご飯食べれないんだ」と仰って、翌週にはもっとつらそうに食事をしていたんです。だんだんと衰弱していくのがわかりました。そういう状況を初めて目の当たりにしたときに、こうなるもっと前から、つまり病気になる前から管理栄養士に出来ることがあるんじゃないだろうか?と、『一次予防』へのアプローチを真剣に考えるようになったんです。


——病気になる前の『一次予防』ですか。

竹本:
はい、未病とも言いますが、病気にならないようにサポートすることに興味が移りました。つまり、病気になって病院に来るタイミングでは出来ないことで、それは高齢者施設も同じです。もっと身近なところで、生活の一部としてサポートできなければ、病気を防ぐための栄養管理はできない。そう考えはじめたときに、それまで全く気にも留めていなかったドラッグストアへ就職した先輩のお話を急に思い出したんです。


——そこでドラッグストアが出てくるんですね。

竹本:
ドラッグストアは、病気の方だけでなく健康な方も、誰もが来店される身近な場所です。もちろん健康に不安を抱えている方も来る。病気になる前に相談を受けることもできる。私がイメージしている、一次予防、未病に効果的なアプローチができるのはドラッグストアなのかもしれないと考えはじめました。


——病院で実習した経験が、病気の予防へアプローチする意識を生んだわけですね。

竹本:
はい。そこからはすぐに進路をドラッグストアへ切り替えて、就職先を探すようになりました。とはいえ、その当時には管理栄養士を積極的に採用しているドラッグストアが、ほとんどありませんでした。様々な企業に話を伺って気づいたことがありました。それは、『社会がさほど管理栄養士を求めていない。』ということです。


——そんな・・・。それでも諦めずドラッグストアへ就職することにしたのはなぜなのですか?

竹本:
管理栄養士は将来、必ず一次予防の現場で必要とされると確信していたからです。また、管理栄養士を求めていないというよりは、管理栄養士自体の知名度が低いという所に問題があることにも気づきました。そこで、就職先として選ぶなら、管理栄養士が必要とされる場所を自ら作っていくことができる、柔軟に活動をサポートをしてもらえるような、風通しの良い社風の会社にしようと考えました。


管理栄養士おすすめのPB商品を手に取る 竹本さん


管理栄養士としてツルハグループを選んだ理由


——結果、ツルハを選ばれたということなんですね。実際に就職してからは、思うように活動ができていますか?

竹本:
まだまだ道半ばですが、会社のサポートを受けながら仲間たちと一緒に、さまざまな施策を打っていて、一部は効果が出始めていると思います。たとえば認知度の向上ですが、『管理栄養士の日常活動』という毎日の目標を設定しています。その中に『名乗り接客』という項目があって、接客の際に「管理栄養士の○○です」と名乗るんです。シンプルですが、ドラッグストアに管理栄養士がいるということに気づいていただくうえで大きな効果を上げています。実際に名乗りがきっかけで「実は中性脂肪が高くて・・・」とか、「なかなかよく眠れなくて・・・」といった相談を受けて、継続的にサポートさせていただいたこともあります。その他にも、栄養相談会を企画したり、今回取材していただくきっかけとなったレシピコンテストを行ったり、最近ではメーカー様と一緒にプライベートブランドの商品を企画させていただいたりと、徐々に活動が拡がっています。


——着実に活動を進めておられるんですね。素晴らしい・・・。ひとつ質問なのですが、ドラッグストアで扱うのは薬や健康補助食品、サプリメントなど、どれも食事に直接アプローチするものでは無いように感じるんですが、健康管理の基本を食事で解決する管理栄養士として、ドラッグストアという職場は最適といえますか?

竹本:
そうですね。ドラッグストアは管理栄養士にとって、とても親和性の高い職場だと改めて実感しています。ご指摘の通り、私たち管理栄養士のメインアプローチは食事ですし、そこは変わりません。でも、どんなに一人一人の健康状態を考えて、レシピを考案し、丁寧にアドバイスしたとしても、それを実践できなければ病気を防ぐことは出来ません。沢山の野菜を食べるのが現実的でない方や、お肉がどうしても食べれない方もいらっしゃいます。そういうときに、健康補助食品やサプリメントなどを活用して柔軟に提案できるのがドラッグストアです。アプローチの幅を広げ、より効果性を高めることが出来る。私はこの環境を最大限に活用したいと思っています。そのために、登録販売者の資格も取得しました。


——ドラッグストアには管理栄養士が必須だと、竹本さんが強く信じる理由がよくわかりました。これからの目標はありますか?

竹本:
現在は幾つかの店舗を回って、店頭に立つ管理栄養士のサポートをさせていただいています。管理栄養士が集まって定期的に情報交換をする場が設けられたり、使えるツールも充実してきました。管理栄養士が在籍している店舗では、認知度も少しづつ向上しています。でも、もっともっと管理栄養士は活躍できると思っています。そういう職場にしていくことが、今の現実的な目標です。

店頭の管理栄養士にアドバイスする 竹本さん


管理栄養士としての夢を語る竹本さんの熱い思いを受け取りました。まさかレシピコンテストが、こんなに大きな信念のもとに動いているとは思ってもみませんでした。感動です..。



地域医療の中心を担うドラッグストアの管理栄養士


——竹本さんのお話を伺ってきました。とても、とても熱い思いを持っておられる管理栄養士さんでした。

木根:
そうです。そしてツルハグループには同じように志の高い管理栄養士が沢山居る。ということもお伝えしておきます。管理栄養士は、いまやドラッグストアに無くてはならない存在となっています。実際のところ、現在、国は病気の一次予防、セルフメディケーションに力を入れていて、その拠点としてのドラッグストアに注目が集まっていますし、実は地域病院からもドラッグストアの管理栄養士が注目されているんです。


——病院からですか?

木根:
はい。医療機関との連携は今後も増えていくと予想されます。例えば病気になって、かかりつけ医に行ったところ手術が必要ということで大病院を紹介されたとします。そこで治療が適切に行われて退院する。でも、また同じように病気になって戻ってくる割合が非常に高いというのが医療機関の悩みなのだそうです。その率を下げたい。それには一人一人が自分で病気を予防するセルフメディケーションが必要です。でも、退院したあとはすでに病気が治っているので、かかりつけ医にも出来ることは無い。とはいえ誰かがサポートしなければいけないというときに、病気に関係なく普段から利用しているドラッグストアがハブとして機能するのでは?と考えたわけですね。


——つまり、かかりつけドラッグストア、『かかりつけ管理栄養士』ということですね。

木根:
そうです。それで実際に、退院する際、ツルハグループを紹介していただき、セルフメディケーションのサポートを行うプログラムが、医療機関との連携のもとにはじまっています。そして、その中心にいるのはもちろん、お客様の栄養管理を行える、ドラッグストアの管理栄養士なんです。


——全ての人の健康を支える重要な役目を、ドラッグストアの管理栄養士さんたちが果たすことになる。ここまで壮大な話になるとは思っていませんでした。レシピコンテストについてのインタビューのはずでしたが・・・。

木根:
実はレシピコンテストは、回を重ねることで春・夏・秋・冬それぞれのレシピが揃うように計画的に実施しているんです。そうすることで、店頭の管理栄養士が健康指導に使えるツールを整備するという目的もあるんですよ。


——なるほど。全てが繋がりました。

木根:
レシピは多くの方の目に止まりやすく、管理栄養士のスキルをわかりやすく知っていただける、とても良いツールだと考えています。これからもより多くの方に『かかりつけ管理栄養士』がツルハグループの店舗に在籍していることを知っていただくため、管理栄養士のみなさんが考案したレシピを活用して、周知活動を積極的に行っていきたいと思います。
直近では、大手レシピサイトとタイアップさせていただき、ツルハグループの管理栄養士が栄養のスペシャリストとして監修したレシピを公開しました。



——管理栄養士が身近に居ることを、もっと多くの人に知っていただきたいですね。最後に、木根さんの考える『ツルハグループと管理栄養士の未来』を教えてください。

木根:
私を含め、ドラッグストア業界はやっと管理栄養士の大切さを実感したところだと思っています。そのため今は特に採用に力を入れています。私の役目は、全店舗に一人以上の管理栄養士を在籍させることで、誰もがツルハグループのお店に『かかりつけ管理栄養士』が居る、そういう未来を作ることです。現在ツルハグループは全国に2,600店以上あります。つまり、まだまだ足りません。薬剤師・登録販売者、ビューティーアドバイザーに次ぐ三番目の柱として管理栄養士を置くことで、そばにあって本当に良かったと思えるドラッグストアグループを作ること。そのために、これからも管理栄養士がそのスキルを十二分に発揮できる環境作りに注力していきたいと思っています。

レシピコンテストの知られざる魅力を語ってくださいました


管理栄養士が身近な存在になる未来


自分自身での健康管理が当たり前になる将来、独りで取り組むのが難しく思えるときにも、身近なドラッグストアに気軽に相談できる『かかりつけ管理栄養士』がいて、強力なサポーターとして私たちに伴走してくれる。セルフメディケーションとは、決して孤軍奮闘することではないと気づかせてくれる、とても暖かなインタビューとなりました。

今度、店頭で管理栄養士さんを見かけた時は、積極的に話しかけてみようと思います。


(編集部)

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