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ヒトリエ 10-NEN-SAI FINALE TOUR ライブレポ


2024年にデビュー10周年イヤーを迎え、10-NEN-SAI計画を走り回ったヒトリエは、9月の日比谷野外音楽堂ワンマンの最後に発表された2025年1月に東名阪三ヶ所でのツアー、10-NEN-SAI FINALE TOURを持って大団円を迎える。
そんなFINALE TOURのファイナルはZepp Shinjukuという大きな箱でありながら早々にソールドアウトを決めた。
正真正銘、10-NEN-SAIの最後はどんなセットリストになるのかも楽しみである。

今月末には新アルバム「Friend Chord」のリリースと3月からのツアーも決まっている。
10-NEN-SAIから11年目へ…バトンを繋いだライブのレポート。




17:00 ほぼ定刻通りに暗転。いつものSEでメンバーが登場する。

3人が定位置に着くとまもなくDr.ゆーまおが4カウントを刻むとやはりSister Judyから幕開け。結成時から今に至るまでヒトリエのライブ1曲目といえばこの曲である。そしてSister Judyが来たなら2曲目は勿論モンタージュガールなわけで。
ボカロとロック両方を配合したwowakaらしい高速ダンスロック、4人の時ですら人間が出来ないレベルの演奏技術が必要とされていたのに、今の3人は容易くこなしてるようにも見える。
そしてこの日もこの2曲でフロアは一気に火がつく。自然とステージの方に身体が向かうのだろう…後ろから押し寄せる人の波を背中で感じた。

既に最高潮のような大歓声の中、セッションからオン・ザ・フロントラインへ。
ヒトリエの最前線を表す渾身の1曲で、2024はこの曲とともにヒトリエは走って来た。
そんな新旧混じえた3曲で1ブロックを駆け抜けた。


MC
「新宿のホスト、ホス狂い、ぴえんらを乗り越えてここZepp Shinjukuにインターネットからやって来ました我々がヒトリエです!」


シノダが"ねぇ その心貸してよ"とゆっくり歌い出すワンミーツハーで再開。
wowakaの死後、長らく演奏されていなかったが、9月の野音にて3人体制で初めて演奏され驚かされたこの曲だが、3人の音に迷いはなくこの先もライブで演奏するという気概を感じた。
間髪入れずにワールズエンド・ダンスホールが流れると1曲目のように中央へ流れ込むオーディエンスの波。
ボカロ曲として知らない人はいない名曲だが、バンド体制でのカッコ良さは言うまでもない。

そんなやや珍しめの選曲で熱狂の中、緩やかなテンポへシフトチェンジしたかと思えば2024年の1月以来の演奏となる耽美歌が流れる。
2023年の秋ツアーに既に披露されていたが、同時期にリリースされたジャガーノートと違い音源化(映像作品にはあるが)は無く、約1年半かかったが遂に次のアルバムに挿入される予定である。
"悪い遊びをしようよ"というサビのフレーズがクセになる ミドルテンポのギターロック。
2023年に聞いた時よりもソリッドなサウンドになっていた。


MC

「Zepp Shinjukuくらい余裕でソールドですわ」
とドヤ顔のシノダ

この日の舞台であるZepp ShinjukuはZeppの中で最も新しく内装もほかと較べても煌びやかであるがスタンディングのフロアが地下5階にあり、かなり階段を降りた。
そんなライブハウスと新宿についてシノダは

「お前らにはこの街はしんどいだろ…」と話し始めると
\怖かったよ!/ \沢山声かけられたよ!/など、新宿という町に怯える声があまりに多く、シノダも「えっ…そんなに?? なんかごめんな笑」とタジタジ。
「え、いやでも…アクセスは良かったっしょ?」と急いでフォローするシノダに爆笑した。
「きっと新宿の地下だから壊して壊しまくるやつが…って俺しか知らなそうな漫画の話をしそうになった…」と 忍者と極道という漫画の話をしたり砕けたムードが漂うが、
「こんな盛り上がったけど、次は盛り下がる曲なんだよ」と言い立ち位置に戻る。



ゆーまおがゆったりと3度スティックを叩くとライブハウスを包み込むような優しいギターイントロはテノヒラである。
wowakaのボカロ曲であり、シノダは度々弾き語りしていた曲であるが9月の野音で初めてバンドで演奏し、11月のシングルにシノダのヴォーカルで音源化した。
弾き語りツアーでは「勝手に俺に由縁のある曲だと思ってる」と言っていたが、儚げにワンフレーズごと大切に歌い上げるシノダを見れば、彼がどれだけこの曲を愛していることが分かる。

テノヒラの余韻を残し、静寂が続く。
シノダのギターが静寂を破る。丁寧に弾かれるアルペジオは少し音が歪んでおり、儚ささえ感じる。
そしてこのアルペジオということはフユノである。
wowaka作のピアノの音色が印象的な冬のバラードは、サビで小さく細かいスポットライト降り注ぐ。
それは音もなく降り注ぐ粉雪のようでとても綺麗だった。

一旦暗転のち、
「皆さん新宿だからって、体がビビってるんじゃないですか? もっと軽快に踊ったり、跳んだり跳ねたりしてもいいんじゃないか?」と煽るシノダ。

トゲのあるシノダのヴォーカルとイガラシの太いベースの音が響く。daybreak seakerもテノヒラと同様、NOTOKに収録されている新曲。
wowakaが作曲したが歌詞が未完成のままであり、シノダの手によって完成した。
"ラザニアの焼ける匂いがして 空腹だったことに気付かされる"と言った歌詞にはシノダの文才は流石だと気付かされるし、カップリングでは勿体無いくらいにカッコイイ。
確かにwowakaの曲だと感じるが、シノダのこの歌声でないときっと満足出来ない気がした。



シノダはギターを置き、ハンドマイクに持ち変えるとフロア最前の柵に足を置く。
すると客はシノダの方へと流れ、その中にはシノダの体に触れようとする者もおり、
「柵に足掛けたけど、危ないから身体には触れないで…」としっかりと注意する。
正直、この日のフロアは普段と比べて荒れ気味だったように感じる。
Zeppを余裕でソールドするようになったからこそ、思いやりを持つというライブハウスでの前提条件を改めて問いただす必要もあると感じた。

ハンドマイクなら勿論Selfy charmであり、サビでジャンプするのも定番化してきた。

シノダは再びギターを持ち未発表の新アルバムよりネバーアンダースタンドを披露する。
ヒトリエの活動と並行してシノダ個人で47都道府県を巡った弾き語りツアーの途中から、シノダは新曲を作り続けてきた。
その中で産まれた楽曲で、シノダらしい一筋縄ではいかないメロディーのギターロック。
恐らくこの曲が表題曲になるんだろう…。そう思わせるほど、強烈に印象に残った。

セッションからジャガーノート
安定のカッコ良さ。
10-NEN-SAIではトップバッターとしてフロアを一瞬で盛り上げる役割が多かったこの曲だが、どこに置いてもブチ上げることが出来る。
イントロでイガラシが最前に立ち、クラップを煽る仕草や
"世界中が俺に跪け" でのシノダのサムズダウンも荒々しいこの曲でやるからこそ映える。


休憩を挟み、ギターをかき鳴らし終わったシノダは
「よし、10-NEN-SAI最後の3分29秒」

3人になって初めて作った曲はこの日も同期やギターの爆音も相まって破壊力バツグンだった。

「よし、この調子ならでっかい声が期待できるな…。上まで……随分地下に降りてこされたと思うけど、この新宿歌舞伎町の地上まで聞こえるくらい大きな声をお願いします。」

wowakaより愛をこめて アンノウン・マザーグース
前方中央に居たからか、Zeppが反響しやすいのか、渦巻いて勢力を増していくようなシンガロングは今まで体感したことがなく、胸が震える。
シンガロングの大きさをロックだと定義したくないが、フロアの一体感をより強くするシンガロングはアンノウン・マザーグースが我々にとって特別な曲だと再認識させてくれる。

そのシンガロングは3人にも伝わっていたようで、イガラシは拍手を返し、曲が終わるとシノダは「最高です。感無量です。」と賛辞を送る。


MC
ここでシノダは10-NEN-SAIを振り返った。

「今日、ついに10-NEN-SAIが終わります。本当にたくさんの人の力、今日集まってくれた皆さんに二度と忘れられないような景色を見させていただきました。2024年前には思ってもない景色を沢山見ました。

今のヒトリエを見せたい奴がいます。10-NEN-SAIで沢山ライブをしましたが、そいつが現れることはありませんでした。これからも現れることは無いでしょう。そいつのいないヒトリエの歴史が長くなっていくことになります。皆さんはどうかそいつの分までこれからのヒトリエを見届けてやってください。それでは10-NEN-SAIありがとうございました。11年目も、何卒、ご贔屓に願います。」

どのライブでもwowakaに触れない日はない。
それは3人になった今でもツアーをやる度にグッズに彼の名前が記され続けているように、3人の中に、我々の中に、彼の意志が生き続けているから。

シノダの熱いMCに涙を流すファンもいた。
シノダは髪が目にかかり表情が分かりにくいが、MC中に涙をこらえるようにクシャッと顔を歪ませた。

そしてそのMCに応えるように3人に送られた拍手の音は、柔らかく、暖かく、優しかった。


そして3人はwowakaが遺した1曲、NOTOKを演奏する。
9月の野音で初披露された時は、あまりのwowaka節に「令和になってwowakaの新曲を聞けるとは…」と感動した。
しかし音源化されてから聞くNOTOKは、イガラシ、ゆーまおのリズム隊の強靭な伴奏も、高度なギターを1人で弾ききるシノダにも、
wowakaの難関な曲を3人で5年間もやり続けてきた意地や自信を見た。


「次で最後です…」に\エー!!/とお決まりのような声が聞こえてくるが、
「誰が勝手に喋っていいと言った。オレがあと1曲歌ったら終わりだ…いいね?」と釘を刺す。


"こんなのさ 意味はあるのかい?
空虚が窓をノックする  それに誘われるように
僕は靴紐を結ぶ"

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花束を持ちそれを手向けるかのように、優しく歌い上げるシノダ。
シノダをヒトリエに誘った張本人で、wowakaの死後、ひっきりなしに「シノダ、お前が歌うんだ」と言い続けたイガラシが初めてヒトリエのために作った曲。
誰でもなくwowakaに向けられた歌。

3人の中にwowakaの意志は生き続けている。
だが彼は2度と帰ってこない。
wowakaに背を向けて3人で再び歩み出すかのように力強くも丁寧に演奏する姿が、頼もしく見えて涙腺が緩む。


きっとこれからもヒトリエは大丈夫だと確信した本編であった。


~本編終了~



アンコールに応えた3人。
シノダはシノダパーカー、ゆーまおはツアーTシャツ、イガラシは勿論 自作のゆーまお3人をプリントしたゆーまおTシャツを身にまとい再登場する。

ツアータオルを掲げたシノダは「このタオル以外のやつはおろせ…俺の言いたいことは終わったらこのタオルを買え。それだけだ。」と言い、後ろに下がるがパーカーのフードを被ると再びマイクに近づき
「これが終わったら皆さんは歌舞伎町に放り出されるわけですけど、客引きやら怖い人たちから身を守るためにも、このパーカーを買うこともおすすめしますよ…。決して利益のためではなくてですね!皆さんの安全を思ってですから」とパーカー購入も薦めた。

マイクはおしゃべりなゆーまおへ。

先日の名古屋公演でのMCがXで取り上げられていたが、「その話をするね」

ゆーまおが友人とラーメン二郎に行った話。
「列に並んでたら反対側からゆーまおTシャツのやつが歩いてきて、俺の4列くらい後ろに並んだのよ…。だからあの列に一時的に俺が4人居たことになるんだけど笑 」

「それで友人とラーメン食べてもうしんどい、ってなった時に隣の隣にゆーまおTシャツが来て、そいつは『全マシマシで!』って言っててマジか、逞しいな!って誇らしくなりました。
友人はよくライブ来てくれて、ゆーまおグッズ沢山持ってて俺と会う時は3回に1回でゆーまおTシャツ着るから、その日着てたら男の子にバレるとこだった…」

「んで、その友人の名前もさ、ゆうまなの!」とオチを言った瞬間に遮るようにカラノワレモノのイントロの同期音が流れる。
そんなハプニングに一瞬「??」と困惑したが大爆笑に包まれる。
シノダが爆笑する中、普段滅多に話さないイガラシはファイナルということでマイクを持つが
「今の…良かったね、とても良かった」とハプニングにご満悦の様子で、「もうやるか」とMCを放棄。
シノダは「付き合いが長いからわかるけど、こいつほんとに満足してる。この先何言っても蛇足になるって思ってる笑笑」にイガラシもニヤリ。図星だったようだ。


~アンコール~

お決まりのセッションから1曲目はセンスレス・ワンダー
思えば10-NEN-SAIは10年前のこのデビュー曲のリアレンジから始まった。
アンコールや本編ラストで幾度も演奏されてきたが、10-NEN-SAIで更に強さを増した。

続いて先程のアクシデントで分かっていたが、カラノワレモノ
ヒトリエとして初めて作った曲は相変わらず私の中で1番好きな曲。フェスや対バンではあまり演奏されなくなったが、大事なライブでは今でも必ず演奏される。サビで全員で手を挙げてジャンプする一体感は11年間変わらない。
9月の野音では涙が止まらなかった。それでもこの日は笑顔でジャンプできた気がする。

このバンドの存在そのものが私にとっての自慢だな。ジャンプしながらそう思った。


演奏が終わる。これで10-NEN-SAI終わりか…しかし3人は楽器を持ち続けている。

「ありがとうございました」とシノダが発すると、ゆーまおがビートを刻む。
明らかにライブver.だったけれど瞬間、次の曲が分かった。

YUBIKIRI

3人体制初のアルバムREAMPより。
ゆーまおが作る美しいメロディーとシノダの激情的なwowakaへのメッセージがこもった名曲。
10-NEN-SAIでは1度たりとも演奏されなかった。
それでも正真正銘最後にこの曲を選んでくれたのが嬉しかった。

"泣いて笑って怒って吐いて 吸って吐いて
意外と僕らそんな暇じゃない忙しい
それじゃ今日はここでおしまい
きっとまた声聞かせて もし消えたくなったら
誰より先に 僕に知らせてくれ"

wowakaへのメッセージ、その中にイメージの時に感じた3人で力強く前に進んでいく決意がこもっている。
歌詞を渋谷ではなく新宿に変えるシノダ。

"足りないものの影 形を思う"

NOTOK前のMCがよぎる。堪えていたものが溢れて3人の姿が歪む。やっぱり悲しいよ。

それでも
"きっと こんなんじゃ終わらねぇよな! "
と我々に訴えかけるシノダに大きく頷くように手を挙げる。
虹色の照明がステージを照らす。
1月と9月のライブの最後に演奏されたステレオジュブナイルでも同様の照明だった。

ただただ幸せだったステレオジュブナイルの時とは違う。
YUBIKIRIを聞いて、私とヒトリエとの思い出が走馬灯のように脳内を駆け巡る。
3人がヒトリエを続けてくれたこと、9月に野音に連れてきてくれたことなど、私たちはヒトリエによって救われてきた。
しかし「俺たちがいることで私達も救われている」とシノダは言ったことがある。

ヒトリエとそのファンの絆はどこよりも強い。
これからもヒトリエは絶対に大丈夫、絶対に私たちを裏切らない。と思わせてくれた。
YUBIKIRIを聞かなかったら気づけなかった幸せだったかもしれない。
それだけ嬉しい選曲だった。


~公演終了~


ヒトリエのライブを見終わると「やっぱり今日も最高にかっこよかった」と思わせてくれる。
勿論、どのライブも比べられないくらいにカッコイイのだが、毎回思えるのはヒトリエがライブをやる度に強くなっているから。
そしてこの日のMCでシノダは「ライブを重ねてるうちに強くなれた気がする」と言ってくれたことが嬉しかった。

特別な気持ちにさせてくれたこの日のライブ、新曲や、最後のYUBIKIRIもだが、NOTOK前のMCでのシノダの表情とそれを暖かく包み込むような拍手の音色は忘れることは出来ないと思う。


ヒトリエ  セットリスト

01.Sister Judy
02.モンタージュガール
03.オン・ザ・フロントライン

04.ワンミーツハー
05.ワールズエンド・ダンスホール
06.耽美歌

07.テノヒラ
08.フユノ
09.daybreak seaker

10.Selfy charm
11.ネバーアンダースタンド
12.ジャガーノート

13.3分29秒
14.アンノウン・マザーグース

15.NOTOK

16.イメージ

ENCORE
E.C1-1.センスレス・ワンダー
E.C1-2.カラノワレモノ
E.C1-3.YUBIKIRI

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