ENDSCAPE vol.40 ライブレポ
今年10周年のメモリアルイアーを駆け抜けてきたヒトリエの年内ラストライブは、新宿LOFTにて歌舞伎町移転25周年を祝う対バンイベントENDSCAPEだ。
気になる対バン相手はPK shampooとザ・シスターズハイというヒトリエとは関わりが無さそうな2組であった為驚いた。
PK shampooとシスハイは仲が良かったため、尚更ヒトリエが呼ばれたのは謎である。
この3バンドの共通点を見つけるとするならば、かっこいいギターロックなこと、それと山田亮一という男と接点がある…ということであろうか。
異色な(特にヒトリエが)スリーマンのレポ。
そんな妙な対バンイベントは出演順番も一切伝わっておらず、
ザ・シスターズハイ
ヒトリエ
PK shampoo
という書かれ方は恐らく五十音順だろうし…そんなことを考えているとあれよあれよと開演時間の7時を迎える。
PK shampoo
暗転すると「ポケットモンスター 金銀」のチャンピオン戦のBGMが流れた為、どよめくLOFT。
これが流れたということはPK shampooが先鋒ということだから、自分も驚く。
正直トリでもおかしくないと思っていた。
Gt&Vo.ヤマトパンクスの熱情的で痛みやロマンチズムを含むギターロックの楽曲は心揺さぶられる。
そしてそんな楽曲が熱狂的人気を博している。
儚くも歪んだギターが口火を切る。プリンセス・プリンセスの「M」を感じさせるイントロ、京都線からいきなりスタートする。
"君がいない夜って 何してたんだろうな"
生で、ライブハウスで聞くヤマトの叫びのような歌声に早速心揺さぶられる。
「PK shampooです。よろしく〜」
多分この挨拶この日5回はしてた。
続く夜間通用口も人気曲である。イマドキでは無い長い前奏がカッコよく思えるのは、やはりギターの音階が心地よいから。
演奏をとめない。そのままSSMEへ。
真っ直ぐでいかにもロックンロールなメロディーラインに、"星になれたら"なんていうロマンチックな歌詞を歌っているのが本当にヤマトパンクスなのか…と疑ってしまうくらい喋ると抜けてるのに、いざギターを持つと目の色が変わってフロントマンとしての輝きを放つ。
ヤマトパンクスの異彩なオーラを感じる。
MC
「実は新宿LOFTはあんまり出たことない。嫌われてんねやろな〜笑」と早速ジョークを飛ばすヤマト。
「最新のLOFTの思い出は…同期であの……クリトリック・リスというバンドがいまして!」と話し始めるヤマトにGt.福島カイトが「もうええて笑」とツッコむが、ヤマトは話を止めない。
「深夜3時に打ち上げに呼ばれて、いいちこのボトルをなんでか分からんけど『買ってくれ!頼む!』って全裸で土下座されて以来ですね…それが最新の思い出や……。それを塗り替えに来ました~。」
演奏と比べてMCが緩すぎる笑
今日の舞台が新宿であるから"西武新宿、死のうと思った~"という歌い出しがきっと聞けると思っていたS区宗教音楽公論でリスタート。
よく儚い曲を消えてしまいそうと表現するけど、PK shampooの場合、儚くて爆発してしまいそうなと表現したくなる。
それはヤマトの書く叫びのような歌詞が、虚勢とも等身大ともどちらとも捉えることが出来てしまうから。
曲の余韻そのまま緩やかなビートが響き、翼もくださいへ
ゆっくりなテンポでヤマトの伸びやかな歌声が映える前半から一転、後半はテンポが上がる。
掴みどころがないけれど妙にクセになる。
MC
「いやぁ〜、最近不眠症なんよなぁ…2、3時間しか寝れてへん。今日は朝9時に寝て11時に起きてもうた。カッコええかなと思って。」と自らの不摂生ぶりをゆっくりと話し始め、ここでも演奏との温度差がすごいヤマト。
ただ、重度のアルコール中毒者ということもありヤマトの体調は流石に心配だなと思っていると
「いや、俺からしたらしっかり寝てるのに疲れた顔してる皆さんが心配ですよ?」という返しに拍子抜けする。なんだ、大丈夫そうか。と思っているとヤマトの中でなにかスイッチが入ったのだろうか
「でも、あ、今日、新宿?眠らない街?月曜やのに?あ、そういう感じなん…?? え、お前らそうゆう感じなん…?? えぇ、マジで…」と1分間以上こんな調子で言葉を吐くからフロアも心配になってくる。しばらくすると、
「あぁもうそれなら俺は!俺は!俺はもう天使になるかもしれない…」に歓声が沸く
今年のアルバムが続く、天使になるかもしれない
緩い雰囲気からいきなりの攻撃的なギターの音色に、頭を殴られたかのような衝撃を受ける。
"高い所から飛び降りれば"と、自殺をイメージさせる内容があるこの曲だが、その場合"天使になれるかもしれない"と書くのは実にヤマトらしい。
再びヤマトの叫び声のような歌声から天王寺減衰曲線はショートチューン。
PK shampooとしては珍しめのビートに肩と頭が自然と揺れる。するとヤマトが「おいロフト!踊りたい時に踊らんと!!」と叫び、フロアが前方へグッと寄っていく。
「ありがとうございやした〜最後〜」
"Diary No.23 最近は都心に雨が少ない"という正に日記を読み上げるような歌い出しの、死がふたりを分かつまででフィニッシュする。
この曲もどこを切り取っても歌詞がいい。
特に "他の偉大な人たちが大体のことは歌ってるし"という所は、ミュージシャン側が書いているというところが珍しい。けれどヤマトは他の偉大な人たちが書けない痛みを書ける才能があるから、この歌詞を歌えるのかもしれない。
最後にヤマトは「ザ・シスターズハイ、ヒトリエ、打ち上げで待ってるぜ!」とヤマトらしく締めた。
PK shampoo、やっぱり最高に良かった。
MCと演奏の温度差で風邪をひきそうになったけれど、ヤマトの歌には他のバンドじゃ掬ってくれない思いがある。
個人的に思い入れのある、学生街全能幻想や第三種接近遭遇、新世界望遠圧縮など、そんな曲を1曲でも多く聞きたい。
だからこそヤマトには長生きして欲しいものだ。
PK shampoo セットリスト
1.京都線
2.夜間通用口
3.SSME
4.S区宗教音楽公論
5.翼もください
6.天使になるかもしれない
7.天王寺減衰曲線
8.死がふたりを分かつまで
ザ・シスターズハイ
続いて登場するのはまだまだ若い、新潟出身のスリーピースバンドであるザ・シスターズハイ。
シンガーズハイと名前が似てるなぁ…という印象を超才開Twinkるというミニアルバムでぶっ壊された。
5曲とも細かくタイプが異なり、それでいて楽しいメロディーラインと言葉選びで玉手箱をあげたような感覚させ合った。
そんな他2バンドとも異なるギターロックを聞くこと、楽しみにしていた。
2日前の名古屋公演ではインフルエンザ感染によりキャンセルしていたため、12/8これまたロフト主催の日比谷野音ぶりのライブとなる。
SEが鳴り、メンバーが全員登場するとVo&Gtの渡邉九歳は「大先輩のPK shampooの次ということで気合い入ってます!よろしくお願いします!」
セッションからpink pink vibrationといういかにもな選曲でスタートする。
"霊能力者にまで僕の恋を笑われた"というサビの歌詞が印象的だが、全体的に歌詞の意味はわかっていない。それでも聞き心地が良い。
続いて"優しくないアタシだけの裏話"という歌い出しの天使のごめんね。
1分半というショートチューンとは思えないのは、ショートチューンなのにさほどテンポが早くないのと単語の多さであろう。
演奏が終わってもギターでセッションへ入り、真理
"真理真理"のシンガロングが次第に大きくなっていく。最初の3曲を聞くだけでもこのバンドの唯一無二さを感じる。
MC
「PK shampooというさっきやってた変な人たちが、僕が1番可愛がってもらってる先輩です。そんなPK shampooと対バンするのは今日が初めてです!ほんとに皆さんのおかげです!今日も楽しくするために協力してください!」とやや興奮気味にも聞こえる。
「こっち来てヤマトさんとはよく新宿って言っても『西武新宿〜♩』で夜通しで酒を飲んでいるけど、1度ヤマトさんの後輩が7人くらい来てそれ連れて呑んだ時、ヤマトさん優しいから『ええよ金ないやろお前ら』って金を出してくれて…でも俺だけ財布ゴソゴソするフリしたんよ…そしたら『お前はあるやろ金』って僕の財布から全紙幣とPontaカードまで持ってかれました笑 あの頃から尊敬してます!笑」のMCにはさすがに爆笑。
"Chu Chu Lu BABY BABY HOLD"のフレーズが頭から離れないのは、eんパす・iん・tHe・ルーむである。
続くも超才開Twinkるから、リ・ルミナスのじゅもん も実に遊び心に富んだ歌詞が特徴的だ。
1曲1曲、曲の特徴が違うのに全て地続きのように曲と曲をセッションで繋げているのが印象に残った。
続く一生に一度、嘘みたいになろうは新曲で1月に音源が出ることが約束されている。
リスナーの救世主になることを力強く宣言するメシアになったでも、やはりこのバンドもギターがかっこいいなと思わされた。
「ありがとう、ザ・シスターズハイでした!最後はヒトリエ大先輩にカッコよくバトンを渡したいと思います!協力してください!」と渡邉は呼びかける。
そして、"今日も僕達は慣れない絶望DANCE!"
の歌い出しはもちろん、絶望MAQUIAである。
この曲は特に頭に残っていたからライブハウスで聞けるのが楽しみであった。そしてやはりこの曲以外で締めるのが考えにくいくらいカッコイイ。
曲途中渡邉は、「今日はめっちゃバンドドリームな日だと思ってます。ずっと昔から聞いてるバンドとライブができたり…幸せです」と噛み締める。
初めて聞いたシスハイ
先述したが、曲と曲を繋ぐために毎回オリジナルのセッションがありそれがどれもカッコよかった。
やはりこういうことはライブに来てみないと分からないなと思った。
音源を聞いてワクワクさせてくれるバンドは久々だったし、思ってた通り楽しかった。
PK shampoo同様、今日やらなかった曲(C♯memorial、デスラブなど…)をもっと聞きたいから来年はワンマンライブに行ってみたい。
ザ・シスターズハイ セットリスト
1.pink pink vibration
2.天使のごめんね
3.真理
4. eんパす・iん・tHe・ルーむ
5. リ・ルミナスのじゅもん、
6. 一生に一度、嘘みたいになろう
7. メシアになった
8. 絶望MAQUIA
ヒトリエ
今年バンドとして10周年を迎えて、様々なライブやイベントに参加してきたヒトリエ。
そしてそんな激動の1年間最後のライブである。
この日、どういうセットリストで来るのかも非常に楽しみにしていた。
リハ(音出し)では幕が下がってる中Vo&Gtのシノダは、ハヌマーンのリボルバー、ミッシェルのドロップなどを歌っていた。
特にリボルバーではPK shampooのファンも喜んでおり「やはり山田亮一とこの3バンドは共通点があるな」と思わせてくれる。
今年何度も聞いた電子音のSEの中メンバーが全員登場。
ゆーまおが高速で4度シンバルを叩く、その瞬間1曲目がMarshall Aであることを理解する。
いや、驚きしかない。初っ端緩急を付けまくるジェットコースターのようなこの曲を選ぶあたりカッコよすぎる。
そしてフロアに歪んだジャズマスターが鳴り響く。LOFTのフロア音がでかいというか、最早凶悪的なまでに返しが強い。
そして今年何度もライブ一曲目を担ってきたジャガーノートへ。
ライブで流せば盛り上がり確定、少し安心するくらい。今年1年間で序列を大きくあげた。
そしてオン・ザ・フロントライン。
Marshall Aスタートで格の違いを感じてしまうほど、そしてジャガーノート、オン・ザ・フロントラインという2024を象徴するコンボ。
結成10周年、改めてヒトリエの強さを再認識する。
MC
「改めまして私たちがインターネットからやって来ましたヒトリエです!新宿LOFT移転25周年おめでとうございます!」に拍手喝采。
ヒトリエもまたLOFTの思い出を話す。
「今年デビュー10周年を迎えたのですが、1年目の時、スペシャ列伝でココでサンボマスター、KANA-BOON、BURNOUT SYNDROME、THE BOYS&GIRLSとやりました…メジャーデビューしたらサンボマスターとやれるんだ…って」と回想する。
しばらく話すとシノダはハンドマイクに持ちかえる。
ハンドマイクということは勿論、Selfy charmである。イガラシらしいオシャレなミドルテンポは今年何度もライブで演奏されてきた2024のヒトリエを象徴するもうひとつの曲だ。
そしてこの日もサビでジャンプ。
シノダが乾いたギターを弾き、
「え〜PK shampooとザ・シスターズハイと俺たちの年齢差をギュッッッッッと縮めて3分29秒にしてやる!」とこの日ならではの口上で3分29秒。
同期音を交えたギターサウンドが横から上からフロアに叩きつけるように襲ってくる。
曲が終わるとこの日も「よっしゃ!」と叫ぶシノダ。この頃には完全にロフトを支配していた。
「皆さんにお願いがあります。この新宿LOFTいや、歌舞伎町もろとも吹き飛ばすような大きな声を下さい!」
そしてシンガロングが沸き起こる。
「wowakaより愛をこめて!アンノウン・マザーグース!!」
この曲の知名度の高さ、それを知るのはこう言った対バンやフェスなどでしかない。この日も周りが「あ!もしかして!」という表情に代わり全員でシンガロング出来て幸せだったし、やはり何度聴いても特別で大切な曲である。
小休憩を挟む。この時、私は10周年最後の曲をヒトリエは何にするんだろう…と考えていた。
するとシノダから3人体制で初めて弾いたあの曲のイントロが流れ始める。
ポラリス
正直、毎回このイントロを聞くだけでダメだ。涙がこぼれそうになる。
wowakaなりのファイトソングは、3人になったヒトリエの背中を常に支えてくれるwowakaが確かにいると思わせてくれる。
「ヒトリエでした!ありがとうございました!」
最後といえばやっぱりセンスレス・ワンダーかな…??と思っていると違うセッションが聞こえてくる。
最後に選んだのはハイゲインであった。
とても嬉しかった。
2024年1月にヒトリエがリキッドで2days公演を行った時に、シノダがシンガロングさせ「ようやく今日この曲が完成した気がする」と言っていたハイゲインを選んでくれて…。
やはり今年を振り返った上でのこのセトリなんだ…とイガラシとも解釈一致だった。
アンコール
アンコールを引き受けたヒトリエ、シノダは前に演奏した2バンドについても触れる。
「ザ・シスターズハイとはさっき楽屋で話したんだけど24歳…2歳ずつくらい分けてあげたい」
「PK shampooは今日ようやく見れたという感じで…ずっと知ってて、4年前くらいかな?MVとか見てたから今日会った時…うわ!ホンモノだ!ってなりました。」
と親近感が湧くような話でフロアにも笑みが溢れる。
最後に
「きっと来年も再来年も…その次はなんと表すのか分かりませんが笑 ずっと先も俺たちは同じことを続けるんでしょう。PK shampooもザ・シスターズハイもその他バンドも続きますように…そして!その受け皿として新宿LOFTも続いていきますよう!」と締めくくった。
暗転して同期が流れる。
アンコールはヒトリエとして初めて作った楽曲カラノワレモノ
10周年最後はヒトリエ最初の曲だった。
私はこの曲が1番好きだし、この曲をやり続けてくれるヒトリエが大好きだ。
最後は全員で脇腹が痛くなるまで飛び跳ねた。
ヒトリエのお陰で2024(特に上半期)は生き延びることが出来た、そんな年だと言っても過言では無かった気がする。
ヒトリエのライブに行くと毎回、ワクワクするしそのワクワクを越える熱狂がある。
それはヒトリエが進化し続けているからに他ならない。来年は遂に新アルバムが発売となる。
来年も沢山踊らせてくれ
ヒトリエ セットリスト
1. Marshall A
2. ジャガーノート
3. オン・ザ・フロントライン
4. Selfy charm
5. 3分29秒
6. アンノウン・マザーグース
7. ポラリス
8. ハイゲイン
e.c.
9. カラノワレモノ