下北沢にて'24
THEラブ人間が主催する、ライブハウス文化のメッカ下北沢にて行われるサーキットフェス「下北沢にて」は今年で15周年を迎えた。
私は初参加。サーキットフェス自体が初めてであったが、より下北沢と自分の好きなバンドが好きになった愛のあるイベントのレポ。
フリージアン→SAKANAMON→MOSHIMO→THE BOYS&GIRLS→Wienners→D.W.ニコルズ→memetoour→yubiori→THE ラブ人間 の順で巡った。
この日は気持ちのいい冬晴れで雲ひとつなく寒く空気が澄んでおり、ライブハウスからライブハウスへ走るサーキットフェスとしては最高の天候だったような気がする。
12:00~ 〖MOSAIC〗 フリージアン
昨年のリプレイスメンツで初めて見て感激したフリージアンは、今年はE.P「歌葬」をリリースし、バント史上最大キャパである渋谷CLUB QUATTROでのワンマンも成功するなど、バンドとしてどんどん大きくなっている。
今年のリプレイスメンツとQUATTROワンマンが被っていたためライブは今年初である。
12:00ピッタリに開演。1曲目は正に朝を感じるラブソングである、お願いダーリンでスタートする。
肩を揺らしてVo.マエダの伸びやかな歌声に酔いしれる。1番が終わるとマエダが「ウィーアー!フリージアン!」と叫び目が覚める。
そんなゆったりとしたスタートから、新譜の「歌葬」から夕暮れとオレンジ、そしてこの新譜の目玉曲である青瞬という新譜通りの美しい繋ぎがやはり名盤だと再確認させる。
MC
「神戸からフリージアンです!このイベントにはフリージアン結成当初から呼んでもらって…」
「僕の歌が100届くとは思ってない。けど、何かが届けばいいな。 下北沢にては愛のイベントと聞いています。 "ラブ"人間のやるイベントだからね笑」
「このラブソングが月まで届きますように…」
月が咲くは細やかな心情を歌う美しいラブソング。
優しさを孕みながらも、力強く伸びやかなマエダのヴォーカルがより際立つ。
サビの最後の歌詞"今僕らは 愛をしている" 「恋をしている」ではなく「愛をしている」であるのはフリージアンにしか描けない愛のカタチ。
渾身のバラードが出来た!とリリース時から自画自賛していたのも頷ける。
「あと2曲!」
ライブで爆アゲ確定の宣誓!で再び手が上がる。
そして最後は名曲 悲しみの全てが涙ならばで締めくくる。悲しみの〜で大きなシンガロングを起こし去っていったフロアは今回も多幸感に満ちており、初めての下にて、最高のスタートを切れた。
フリージアン セットリスト
1.お願いダーリン
2.夕暮れとオレンジ
3.青瞬
4.月に咲く
5.宣誓!
6.悲しみの全てが涙ならば
13:00~ 〖251〗 SAKANAMON
姉の影響でコロナ前まで聞いており、2016のCLUB QUATTROでのライブも見た事のあるSAKANAMON。実に8年振りのライブとなる。
リハで「•••」の反照、ロックバンドという懐かしい曲を聞くだけで胸がいっぱいになっていた。
Dr.キムの合図から1曲目クダラナインサイドは8年前のライブでも聞いていたし、大好きな曲であり、あの頃のことを思い出していた。
小セッションを挟み、幼気な少女…。
大好きなアリカナシカの曲が聞けるなんて思って居なかった。クダラナインサイドでは挙げなかった手も自然と上がった。
"やいやいやい!" "わあわあわあ!"のレスポンスも懐かしかった。
まだまだ驚きは続く、卒業というテーマだが
「高校時代にギターが欲しくて節約する為に、修学旅行で外食せずスティックシュガーを持ち込んで凌いだ」など妙なエピソードも入れ込まれている ぱらぱらりはアリカナシカと並行して聞いていた為、狂喜乱舞した。
やっぱり藤森節の聞いた歌詞や癖になるメロディーラインが琴線に触れる。
「朝からありがとうございます!SAKANAMONです!こんばんは!!……あ、さっき裏でこんにちは!っていう練習してたのに…」と藤森の茶目っ気もあの頃と変わらない。
Ba.森野は「実は近松で下北沢にてのPAやったことあるんですよ…ホントイベントのPAさん大変だよ……皆さん拍手を」とエピソードと共にPAや裏方にも気を配る。
藤森「ラブ人間とはずっと前から親交はあるけど、初めての下北沢にて…しっかり爪痕残して帰ります!」
この頃には下北沢で二番目に大きいこのライブハウスにとめどなく人が入って来て規制がかかっていた。
「この季節にピッタリの曲を…」
"暑いか寒いか分からない ふわふわの赤いミニスカートで…"と藤森が歌い出す。1番驚いた選曲 ケーキ売りの女の子
ラスサビ後にジングルベルの歌詞もあるとおり、クリスマスソングだけどそういうのフェスでやるバンドだったっけ?と思うのはワンマンでもなかなか聞けないから…噛み締めるように聞き入った。
語り口調で始まる新曲ただそれだけではSAKANAMONがまだ様々なジャンルに挑戦していることを実感する。
「沢山のバンド見てください!ラスト2曲!」
SAKANAMONを一気にメジャーへと押し上げた初期曲、ミュージックプランクトン。そして大人気アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」提供曲の光の中へ という新旧の人気曲で駆け抜ける。
全体を通して感じたのはSAKANAMONは常に変わり続けているということ、そして骨太のスリーピースの演奏技術にはより磨きがかかっており、MCなどライブの雰囲気はあの頃と変わっていないこと。
総じて嬉しさでいっぱいだった。
SAKANAMON セットリスト
リハ 反照
リハ ロックバンド
1.クダラナインサイド
2.幼気な少女
3.ぱらぱらり
4.ケーキ売りの女の子
5.ただそれだけ(新曲)
6.ミュージックプランクトン
7.光の中へ
13:40~ 〖ERA〗 MOSHIMO
ムロフェスで見れず、今回ようやく初ライブのMOSHIMO。251からERAは700m以上の距離、そして10分間というタイムリミットがありダッシュしてなんとかリハにも間に合った。
このERAでは超音波という音楽番組とコラボしており、後日テレビで放映されるらしく機材が入っており、それによりERAのステージに上がるバンドはどれも力のあるバンドばかり。
"君は猫かぶる"というVo&Gt岩淵が歌い始める猫かぶるで颯爽にスタートする。
そしてかっこいいロックサウンド、とりわけGt.一瀬のギターが際立つ化かし愛のうたではクラップでフロアに一体感をもたらす。
"はないちもんめ"や"じゃんけんぽん"、"あっぷっぷ"と言った言葉を散りばめている歌詞が特徴的だが、どれもリズミカルでつい口ずさみたくなるもの。
MC
「超音波ステージということで、昨日下北のラーメン屋に行って顔浮腫んでるかも…カメラマンさん可愛く撮ってくださいね!!」とあざとくも可愛らしい岩淵。
そんなMCを挟んで新曲、パッパラパーでもクラップだったり"あっかんべー"という歌詞も妙にクセになる。
MOSHIMO特有の上手くいかないリアルな少女の恋愛観を歌う、人気曲である命短し恋せよ乙女では、歌詞を変えて"命短し恋せよ 超音波"のコーレスを披露する。
"1に美容師 2にバーテンダー 私が好きなのバンドマン" という付き合っていけない3Bを好きになるダメな女の子を歌うバンドマンでのコーレスは男女混声だったのが印象的だった。
そしてそんな大盛り上がりのフロアに岩淵は思わず、「嘘だろ 下にてこんな最高なのかよ!」と漏らす。
最後はコーレスだけでなく、振り付けもある電光石火ジェラシー。
振り付けも岩淵が率先してレクチャーして全員で楽しませようとする。
とにかく楽しい30分間だったのは岩淵をはじめ、リハからMOSHIMOのメンバーがPAやスタッフに気遣ったりと物腰が柔らかく、そして全員で楽しもう!という気概が伝わったから。
そしてライブハウスを主戦場としてるバンドらしく、演奏技術も素晴らしかった。
MOSHIMO セットリスト
リハ もっと
リハ ヤダヤダ
1.猫かぶる
2.化かし愛のうた
3.パッパラパー
4.命短し恋せよ乙女
5.バンドマン
6.電光石火ジェラシー
14:30~ 〖SHELTER〗 THE BOYS&GIRLS
大好きな札幌のボイガル。今回のイベントで唯一の1時間という長枠での出演。
伝説のライブハウスSHELTERでワンマンライブほどの長尺なのは、ボイガルがTHEラブ人間のkey.ツネさんが代表のレーベルに所属してるだけでなく、ラブ人間に信頼されてる証だ。
リハ前にSHELTERに到着すると規制が起きてもおかしくないほどの客の数に驚く。
その中に既に泥酔して叫び続けるおじさんが…フロアにいる者のほとんどが怪訝な目をしていたがリハが流れると嫌な予感が的中。
そのおじさんが中央へとなだれ込む。
それを見たVo&Gtのワタナベは曲を止め「おじさん、酔ってる?人傷つけるの望んでないからさ」とスタッフを呼び、退出させる。
私も含め多くの者が安堵とともに拍手を送り、万全の状態でスタートする。
この日のワタナベの白Tシャツに「背中はどんどん遠くなっていく」と書かれていた。
どう1時間走り抜けるのか…と思っていると、
"今年の夏は暑かった"と歌いだすワタナベ。初めて聞いた冬が来て僕等は滅多にライブでやらないボイガルらしい熱いバラードだ。
「このイベントに出ることで、俺達も冬が来たことを感じるんだ。」 と話すワタナベ。
予想していなかったのもあるけれど、この曲があまりにも良かった。この曲以外1曲目はありえなかった。
続いて陽炎で一気に火がつくフロア。
オリジナルメンバーがワタナベ1人になってから最初にリリースしたこの曲は何回聞いても胸が熱くなるし、続くロックバンドに心奪われる者を歌う階段に座ってでは毎度泣きそうになる。
「ここの階段の曲だ!」SHELTERの入口にある階段を指差す。そこには子供の姿も。
そしてこの日も泣きそうになってしまったのは
"あなたがやってるロックバンドが優しかったから"
泣きそうな余韻を打ち消すかのようにフェイバリットカラーへと畳み掛ける。
この曲をライブで聞く度に、その日の情景が、色や匂いがフラッシュバックする。
MC
「22くらいの時、まだ札幌に出たばかりの時、下北が嫌いだった。何も分かってないのに。でも、ラブ人間に出会って下北を教えて貰って沢山ライブをして、下北沢にてに出るようになって下北が大好きになった。」
と下北について話すワタナベ。
「今日も環七通りを、井の頭通りを抜けて…」
国道恍惚線はフェス、ワンマン関わらず多くライブで演奏されるが、その日の帰り道が恍惚と輝くような…特別なバラードである。
そしてここからボイガルのアッパーチューンが続く、ライブハウスを歌うフロム・ア・ナローボックス、"ディスイズマイウェイ"の歌い出しからダイバーも続出するよーいドンの流れはいつも通りのライブハウスでのボイガルである。
休憩せずにDr.ポルノ大岡がビートを刻む。
そこでワタナベは「モッシュ、ダイブ、シンガロングだったり、手が上がってる数の多さがロックかどうかの基準じゃないと思う。好きに踊ろう、それをロックとしよう」と定義する。
それは続く曲が肩を揺らして踊らずにはいられない心のままという選曲だから。
子供が挑戦するをコンセプトにしたローカル番組の主題歌ということもあってか、階段の段差でライブを見る子供と幾度も目を合わせ、楽しそうに踊るワタナベと子供。本当に暖かい。
"仲間内で始まったバンドは解散し"というシリアスな歌詞も含まれる遠いストーリーは、以前のライブで「いい曲すぎる!」とワタナベが自画自賛したほどのグッドミュージックで、この日もとりわけ印象に残った。
「休みたい!」と曲途中でワタナベは本音を吐露するも、疲れを感じさせない歌声には力強さにより拍車がかかる。
そしてこのブロック最後の一撃はライブ常連曲ライク・ア・ローリング・ソングで締めくくる。
ラブ人間が、ボイガルに1時間を任せる理由がこの脅威の6曲連続披露からもよく分かる。
「2011年の5月、ボイガル結成したばかりの頃に(ラブ人間のGt&Vo)金田さんがTwitterに電話番号とメアドを載せてて、俺は深夜2時5分くらいに(札幌でバンドやってる者です。あんたの"大人と子供(初夏のテーマ)"って曲が好きで今度アコースティックで演奏していいか)とメールしたんだ。そしたら」
「『勿論だ。自分の曲だと思って歌ってくれ』って、カッコよくね!?俺、めっちゃ影響受けてるんだよ!!」と当時から憧れを抱いていたと熱く語る。
そして"ズタボロのままで行け"とラブ人間のズタボロの君へのワンフレーズ歌い始めるワタナベ。そんな胸が熱くなる熱唱からボーイにフロアの熱は最高潮に達する。
SHELTERの規制を受け、演者や関係者をステージ脇に来させ1人でもフロアに多く入れるようにとしていたボイガル。そんな演者さえ舞台裏で拳を上げて歌う姿が印象的であった。
切実で等身大のワタナベ自身を歌い上げるかのような声にならねえなでこのライブが既にクライマックスだと理解する。
最初からバラードでも関係なく全力投球を続けたワタナベは枯れそうな声を振り絞る。そしてその度に何度もボイガルの泥臭さやパワーを感じて心打たれる。
「時間がギリある!」と追加でショートチューン最初で最後のアデューを高速でスタートさせる。自らもステージに飛び込むワタナベ。
最初から最後まで「この日にしかできない音楽を全力で」やり切ったボイガル。
やはり下にてにはボイガルありと語り継ぎたいほど
これ以上ない1時間のアクトであった。
THE BOYS&GIRLS セットリスト
リハ その羅針盤
1.冬が来て僕等
2.陽炎
3.階段に座って
4.フェイバリットカラー
5.国道恍惚線
6.フロム・ア・ナローボックス
7.よーいドン
8.心のまま
9.遠いストーリー
10.ライク・ア・ローリング・ソング
11.ズタボロの君へ(THEラブ人間cover)~ボーイ
12.声にならねえな
13.最初で最後のアデュー
16:00~ 〖251〗 Wienners
ボーカルでありソングライターの玉屋2060%がでんぱ組などにも曲提供するなど、電波ソングの印象もあるWiennersだが、コテコテのライブハウスバンドであり、ボイガルやラブ人間、SEVENTEEN AGAiNなどとも古くから交流がある。
そんな銀河系パンクバンドの一発目は玉屋が「まずどんくらい声出せるんだ下にて!」と煽り、よろこびのうたを歌わせる。ノンストップでこれまたショートチューンであるCult pop suicideで完全に251をジャックする。
1分満たない曲を連続で演奏した後だと、ショートチューンとは言えないが、これまた短いTRADITIONALという息つくまもない流れ。
いつも通りの圧巻の流れにレスキューレンジャーが演奏されてさらに盛りあがったのはフェスでは中々やらないから。
同期音を多用するバンドは多いが、メドレーのようにほぼノンストップで流れ続けるのはトップシークレットマンかWiennersくらいでは無いか。
満を持して新シングルのTOKYO HOLIはラップのような早口な始まり方だが、展開に展開を重ねてサビではダンサブルでキャッチーなメロディーといかにもWiennersらしいナンバーだ。
フロアも手を挙げながら飛び跳ねたり、踊ってたり、ダイブしたりとそれぞれがそれぞれの楽しみ方をしており、これもまたWiennersのライブの魅力だと思う。
「おいおい、踊んなくていいのかよ?」と玉屋が踊るように煽ったのは、次の曲がTOKYO HOLIのカップリングでタイトル通りのダンスミュージック、おどれおんどれだったから。
曲途中でこの日も玉屋は客席へダイブしながら歌う。
この曲中はほとんど客の上で歌い続けた玉屋はステージに戻ると客からイヤモニを返され、
「いや、マジでサンキュー!途中で取れちゃって、、俺ほとんど音楽聞こえてなかった…でも曲作ってるからね。なんとなく展開はわかるさ」とニヤリ。
"我ら馬鹿な神に意義を申す"のシンガロングが以前より強さを増していた何様のラプソディ。
この曲が完全にライブ定番曲になったことを感じさせた。
「ラブ人間とかいう腐れ縁みたいなバンド、そんな奴らが15年も続けて、呼んでくれる下北沢にてというイベント…今日会えた俺たちを繋げてくれてありがとう!」と玉屋なりのラブ人間への最大限の賛辞を送り
GOD SAVE THE MUSIC、そしてSOLAR KIDSという人気曲の応酬で最高の締めくくりを図るWienners。
磐石の流れで終了…と思ったら再びよろこびのうたをぶち込みより最高のエンディングを迎えた。
玉屋のボーカルとアサミのツインボーカルは相性バツグンだし、同期音で気づかれにくいが∴560∵のベースは相変わらず超高度である。
最初から最後まで息付く間もなく走り抜けるWiennersのライブはこの日もとにかく楽しかった。
Wienners セットリスト
リハ SHINOBI TOP SECRET
1.よろこびのうた
2.Cult pop suicide
3.TRADITIONAL
4.レスキューレンジャー
5.TOKYO HOLI
6.おどれおんどれ
7.何様のラプソディ
8.GOD SAVE THE MUSIC
9.SOLAR KIDS
10.よろこびのうた
17:15~ 〖440〗 D.W.ニコルズ
ライブハウス251の斜め上、地上のフロアにいかにもアコースティックライブが行われそうなバーカウンター付きで椅子に座ってライブを見れる雰囲気の良い440。
そんな440で見るのはアコースティックスタイルも得意でエバーグリーンな楽曲の多いD.W.ニコルズである。
大好きなボイガルやラブ人間とも親交が深いバンドだか、ライブで見るのは初であった。
リハが終わるとGt&Vo.わたなべは「皆さん疲れてますよね~。もう少ししたら来るので寝て待っててくださいね~。」と緩い雰囲気を醸し出す。
そしてこのイベント、どこのライブでも必ず金田の「下北沢にて'24」のタイトルコールが流れてライブがスタートするのだが、
わたなべは「あれ?いまの金田康平??こんな感じなの??笑」とリハ同様に緩い雰囲気に440の客もリラックスする。
しかし間もなくわたなべの目の色が変わる。
「季節外れですが…」としてはるのうたからスタートする。
Gt.鈴木のアコギとわたなべのパーカスのみなのに、心地の良いビート…そして本当に春の匂いがしたような暖かみのある楽曲に開幕早々心を奪われる。
「散歩の歌です」WALKINGもどこか春の情緒を感じさせる。"そのうち心も晴れるでしょう 少しは前向きになるでしょう" そんな歌詞を歌う優しいわたなべのボーカルが心地よい。
MC
わ「どうもD.W.ニコルズって言います〜。ビックリ沢山お客さん入ってる…次のライブ目当てですか?」と再び笑いを掻っ攫う。
わ「いやぁ昔は下北でブイブイ…いやブイくらい言わせてたんですよ?僕らも。その時はフェスとかに呼ばれると規制になってなんぼ…とか思ってたけどこの歳になると『こんなに音楽好きな人いるんだ』って嬉しくなります。」
鈴「そうそう。さっきここ入る前にお客さん沢山出てきて、『うわ、まだ出てくるすごいすごい!』って盛り上がってました。」と、楽曲からのイメージ通りの優しい2人。
わ「次はライブでもやる曲でフランスパンのうたっていう曲なんですけど、、」とYA KI TA TEと書かれたタオルを手に取るわたなべ。
そして「やきたてやきたて!」のコーレスのレクチャー、かと思えば途中から「しもにて!」と「やきたて!」を混ぜ難易度を上げる。
"バランス バランス バランスが大切
人生は長いよ 長いは フランスパン" という歌詞からも、この曲も聞くと肩の重りを外してくれる。
「皆さん乗れてますね!! え、知ってたこの曲?この前、アユニ(現 PEDLO)がインスタでこの歌を歌ってて…その影響かな」と終始腰が低い。
わたなべがアコギを持ち、鈴木はエレキギターになる。
わ「今日錦糸町でギターメーカーのイベントに呼ばれて、ギターを弾いてみて色んな人が買ってくれたらいいねっていうイベントなんだけど…僕がギター買っちゃって! だから今日僕赤字なんです!笑 でもそういう日もいいよね」というMCにD.W.ニコルズの魅力が詰まっていた。
「懲りずに新しい作品を作ろうとすると、曲作ってる人は分かるかもしれないけど自己肯定感が上がるのよ…誰かが聞いてくれるとか関係なく」と言い新曲それだけでを披露する。
穏やかなバラードだった。主旋律はアコギでエレキギターをベースのように使っておりバンドとしての熟練度も垣間見る。
" ハイリ ハイリホー ハイリ ハイリ フレホー"を一緒に歌うスマイルも名曲。
ホントに1人でも多くの人に聞いてもらいたい曲だ。
あまりに優しすぎて涙が出るほど。
わたなべは440を歩き回りマイク無しで ハイリホーを全員と歌う。
時より「下手だな!」というのもご愛嬌。
最後は再びアコギ/エレキギターの体制でリハでも披露した笑えるように
終始肩を揺らして笑顔の30分間であった。
サーキットイベントで座りながら笑って肩を揺らしながら手を叩き、楽しむことの新鮮さ、
なによりD.W.ニコルズという最高すぎるバンドが見れたこと 色んな感情が混ざるけれど、この時間にD.W.ニコルズを選んで人生は自分のいい方向へ転がったと思う。
D.W.ニコルズ セットリスト
リハ 笑えるように
1.はるのうた
2.WALKING
3.フランスパン
4.それだけで(新曲)
5.スマイル
6.笑えるように
18:30~19:05 〖ERA〗 memetoour
東京のインディーズバンド界隈ではかなり知名度のあるmemetoour(メメタァ)。それは唯一のオリジナルメンバーであるGt&Vo西沢のいわゆる凡人の私たちを肯定するようなハートフルな歌詞とキャッチーなサウンドがガッチリと支持を得ているから。
メメタァからmemetoour(me+me+to+our)に改名した今年はムロフェスでも彼らのサウンドを聞いたが、ライブハウスで聞くのは初であった。
リハで西沢は現れなかったがメンバーとフロアで歌い既に出来上がる。
18:30ピッタリ西沢が中央に立ち右手を上げた瞬間、全神経が西沢に集中する。
いきなり人気曲少年で幕開ける。リハでの盛り上がりそのままに熱狂の渦へ。間髪入れずにロスタイムではシンガロングを巻き起こす。
この2曲だけでmemetoourの強靭さが分かる。9mm Parabellum BulletのTalking Machineを彷彿とさせる前奏からライブハウスからダンスフロアへと変身させる初期曲ディスコビートではミラーボールも周り、我を忘れて踊る客がとても楽しそうだった。
キラーチューン3曲での衝撃的スタートだった。
MC
西沢はこのライブハウスがTV番組「超音波」とコラボしていることについて、
「俺は学生の頃とかは音楽で有名になって音楽でご飯食っていくって思ってた。でもそうはなってなくて、途中から自分の音楽がテレビに流れるなんて思わなくなった。でも、今日テレビに俺の音楽が流れるって…俺はそう言われた時にありのまままの、ライブハウスの、俺を見せたいって思った!だからいつも通り」と力強く宣言してから、
"音楽の才能が無いから 声を枯らして叫ぶしかないんだよ"
とブルースドライバーを歌い始める。
カッコつけず等身大の自らを歌う西沢に「着いていくよ!」と応えるかのように拳を上げ、共に歌う光景が眩しく、美しかった。
個人的に最も好きなI wanna beでは西沢の特徴のある中高音とでも呼べばいいのだろうか…伸びやかボーカルが際立つ。
最後は光の向こうへ〜インスタントソングというシームレスな繋ぎでフィニッシュした。
このバンドの強さに改めて気付かされた。
特にブルースドライバーという曲の素晴らしさ…それは生音と素晴らしい光景を見なかったらきっと気づかなかっただろう。
年末には11時間ライブ、来年には今年も主催フェスであるメメフェスの開催も決まっている。
これからもmemetoourの動向に目が離せない。
memetoour セットリスト
リハ 全能感と勘違い
リハ スクールカーストアウトサイダー
リハ間違い探シンドローム
1.少年
2.ロスタイム
3.ディスコビート
4.ブルースドライバー
5.I wanna be
6.光の向こうへ
7.インスタントソング
19:20~ 〖シャングリラ〗 yubiori
memetoourが終わり、ダッシュで最大キャパを誇るシャングリラへと急いだのは、11月に川崎で行われたリプレイスメンツでこのyubioriという社会人バンドが武道館アーティストであるハンブレッダーズよりも盛り上がりを見せていたため。
着いた頃にはリハが始まっており、急いで階段を降りると案の定8割以上が埋まっていた。
シャングリラではアーティストの演奏の前にお笑い芸人による漫談およびコントがあるのだが、yubiori前の滝音(タキオン)の漫談が非常に面白かった。
高身長の秋定の「家族には長い間草生えてて欲しいからな」など面白いワードチョイスを、ラブ人間金田とルームシェアしているさすけが華麗にツッコむというシンプルな漫談は終始爆笑を掻っ攫っていった。
最後には「腕折り」とyubioriをかけるという最高の繋ぎでyubioriへとバトンを渡す。
歪むギターとゆったりとしたドラムビートで始まる放射冷却は冬にピッタリの1曲だったし、yubioriらしい緩やかなスタートからアップテンポで閉めるという曲調はたとえシャングリラであろうと集まった者を掌握するのには十分だった。
続いて人気曲のギターでは私含め、手に缶やグラスなどに思い思いの酒類を持ち、サビの
"生活に乾杯"で手に持った飲料を掲げる。
サビやAメロ関係なく大合唱のフロアはリプレイスメンツ同様に異様な盛り上がりを見せ続ける。
Vo.ジミーが声を張上げて歌い始める造花も人気曲で、歌い出しから全員が両手を上げる光景やジミーの強烈な歌声に震え上がってしまう。
そしてなんと言っても同期を必要としないギター3人の編成は、yubioriの激しいギターロックにピッタリで重厚感がある。
MC
「ラブ人間を初めて見たのは僕が大学1年生の時、渋谷で最終少女ひかさと、あと誰だっけ…ラブ人間もそこにいて無料だったんで観たのがきっかけです…大1っぽいっしょ笑 そこであーこんなカッコイイバンドいるんだって思いました。」と最終少女ひかさという名前をここで聞くと思っていなかったが、ラブとの出会いを語る。
ここで今年から新たなメンバーとなったトランペットの女性が入り、つづく~rundownという流れはリプレイスメンツ同様であった。
トランペットの女性はrundownでは男性陣の体全身を使った激しいプレイングにキョロキョロ周りを見渡していたが、SNSやその場に居たファンが「トランペット入れてマジで正解だよね」と言っていたようにyubioriを更に強くしている。
トランペットが退場して、最後はアジカンのサイレンを彷彿とさせる雪国。リプレイスメンツで聞けていなかった名曲をここで見れたことを非常に嬉しく思う。
最後までフロアを巻き込んだシンガロングと重厚感のあるバンドアンサンブルでこの日も異様なくらいホームだったyubioriの30分間。
リプレイスメンツの時にジミーが「トランペットも加入してこれ以上増やすのかよと思うかもしれませんね。最終的には50人くらいになるんじゃないのかと思ってます。」と言っていたが、yubioriのその判断はSNSを見てもフロアの雰囲気を見ても自分の目から見ても大正解である。
だからこれからも良いと思ったものはどんどん採用していくことで、今までと変わらない等身大のまま名曲を世に放ち続けて欲しい。
rundown含めpure blueなど音源化されてない楽曲も多いため来年あたりに新譜が出るのも期待している。
yubiori セットリスト
リハ rundown
リハ 映画の中に
1.放射冷却
2.ギター
3.造花
4.つづく
5.rundown
6.雪国
20:40~ 〖シャングリラ〗 THE ラブ人間
いよいよ下北沢にて主催のTHE ラブ人間のステージ。ラブ人間の盟友とも呼べるお笑いコンビ「ニッポンの社長」の出番前からシャングリラはドリンクカウンターまで人が通るのがやっとなほど、大満員状態であった。
「ニッポンの社長」のコント前にはM-1でも話題になったダンボールで作ったバット芸を金田も混ざって披露する。
そして「流石にくどいんじゃ笑」と思うほど一辺倒な"マヨネーズ"のコントを披露し終わった頃には場内スタッフから「150人以上が入る見込みです」といくらなんでもそれは…と思わされるアナウンスとともに協力して前の方に詰めるフロア。
そんな大満員の中SEが鳴る。
静まるシャングリラに美しいヴァイオリンの音色が響く。ストリングやキーボードといった型に囚われない演奏スタイルがラブ人間らしさでもある。
そんな緩やかなバラード太陽の光線からスタートを切る。
そして金田ともう1人の中野ミホの美しいツインボーカルも今のラブ人間の特徴であり、そんな中野のボーカルから始まる新曲スーパースターは2022年リリースの「晴子と龍平」の最終章となる楽曲だ。
そして今度はツネさんのキーボードがリードする青嵐線を披露する。
フロアは肩を揺らし楽しむ。先述した通り、このイベントでもストリングスを用いたバンドは多くは無かったから全てが新鮮に聞こえる。
MC
「残ってくれて本当にありがとう!ラブ人間も15周年を迎えて今年は全国を巡った。そこでは動員の面でも悔しい思いをしたよ。それでも思ったんだ。これってちょっとした『 奇跡』って。
俺は東京の清瀬ってとこで産まれて、24の時に代田橋ってとこのアパートでDmを鳴らした。べつに誰に聞かれなくても良かったけど、俺は音楽を作れてそれが京都の顔も知らない20人に届いているんだって。今日もだよ。
下にてが15年続けていくうちに、こんなに規模が大きくなって、人が集まって、これってやっぱり『 奇跡』だと思ってるわけ。
音楽を好きでいてくれてありがとう!」
やはり愛のバンドだ。THEラブ人間というバンドがいかに素晴らしいかこのMCだけでもよく分かった。
「よし、じゃあそろそろロックンロールするか!」と金田が言う。
レイクタウンはその名の通り、越谷レイクタウンを舞台とした「晴子と龍平」シリーズ。
"ショッピングモールは 家族で溢れている くすぐったいけれど あんな風になりたかったんだ"
と曲調とは正反対の関係の終わりを感じさせる1曲だ。 ここまでの4曲はどれも「晴子と龍平」シリーズであり、ありのまま、今のTHE ラブ人間を魅せるその姿に攻めの気概を見た。
「最後までほんと遅くまで残ってくれてありがとう!アーティストも残ってくれたみんなもスタッフも全員が下北沢にて!」と言う金田は幸せそうだった。
軽やかなメロディーだが"苦しめそうだ、狂いそうだ"と悲しい歌詞の20代最後の歌、クリームソーダではサビで手を左右に振る。
そしてこの曲ではサビで合唱が起こり、曲の締めで金田はこれまた嬉しそうな表情で
「そうか!みんなこの歌を知ってるのか!THE ラブ人間よりクリームソーダ!!」と叫ぶ。
ラブの中では人気曲だけれど、知名度はどうだろう…。だからこそこの曲で合唱が起こったのが私も嬉しかった。
終盤に差しかかる。女性と男性のセリフをツインボーカルで掛け合いのように歌い合う、熱くも儚いバラード東京の選曲にも唸った。
"ここは君の街 ここはぼくらの街"
下北沢がまた自分にとって特別な街になる。
そして最後は東京と2枚両面シングルとなるラブ人間屈指の名曲砂男である。
ラブ人間と親交のある、忘れらんねぇよの柴田は「音楽の教科書に乗るべき」という程に、本当にこの曲だけでも聞いて欲しい。
"いっそ砂男になって 全てを砂に出来たなら
愛する貴方に触れたくても 触れようとはしないでしょう"
2番の歌詞
"年に数回しか会えない お前なんかでも この「金髪」にはお前がいるんだからな!"と歌詞を変える。
シャングリラ全体に響き渡る砂男の大合唱。
この瞬間ここで一緒に砂男を歌ったこと、満員のシャングリラを見ながら幸せそうに歌い、演奏するTHE ラブ人間のメンバーのこと、絶対に忘れない。
最高の大団円だった。
拍手大喝采のシャングリラはすぐさまアンコールを求める「もう1回」コールが鳴り続ける。
しばらくすると下北沢にてのハッピを全員が着て再登場する。
そこで来季に新アルバムの発売、ニッポンの社長とのツーマンツアーの発表を行った。
「こんな夜遅くまでありがとね!これからも音楽を好きでい続けてくれ!また来年もやろう!」と力強く16回目の開催を宣言した。
「最後は俺たちのメジャーデビュー曲を」
"これはもう これはもう青春じゃないか"の大合唱が起こる これはもう青春じゃないかである。
きっと多分、シャングリラに集まった350人の中にラブ人間を知らない人は少なくないと思う。
それでもここに集まったのは各々好きなバンドが口々にこのイベントとTHE ラブ人間というバンドに敬意を表していたからであり、その理由を観たであろう。
THE ラブ人間のライブ無しで下北沢にてを締めくくることなど不可能だと思わさせられた。
若かりし頃に戻ったような純粋に音楽を、今を楽しもうと思えた。
これはもう、最早もう青春じゃないか?
THE ラブ人間
1.真夏の光線
2.スーパースター
3.青嵐線
4.レイクタウン
5.クリームソーダ
6.東京
7.砂男
e.c.
8.これはもう青春じゃないか
毎年11月、川崎にて行われるSEVENTEEN AGAiN主催の下北沢にて同様の1日中音楽が聞ける大好きなイベント、リプレイスメンツは今年、4,000円とチケット代を少し上げた(それでも安すぎる)が今年から2箇所ライブハウスを貸し切ったことにより結局赤字に終わったらしい。
だから下北沢15箇所ほどのライブハウスと下北沢一帯を取り巻くこのイベントが、5,000円では赤字は間違いないだろう。
ライブ中に金田が終始、「音楽は好きかい?」「音楽を好きでいてくれてありがとう!」と言っていたのは純粋に利益追求ではなく音楽好きで盛り上がる一日にしたいというラブ人間の心意気そのものであろう。
本当に頭が上がらない。どうか下北沢にてが毎年続きますように、そしてTHE ラブ人間に幸あれ!