【大人の教養建築】シモキタ文化が集まる新商店街建築 BONUS TRACK
1.はじめに
この大人の教養建築シリーズでは、建築学生ならではの視点を踏まえて、
建築がなぜ、そしてどう美しいのかを考察しています。
この視点が共有できれば、
皆さんの日常をより華やかなものにできるのではないかと考えています。
前回は、平田晃久さんの太田市美術館図書館について投稿しました。
こちらもぜひご覧になってください
2.概要
設計者:ツバメアーキテクツ
新進気鋭の設計集団です。
この下北線路街のほかに住宅や集合住宅、
保育園や店舗などの設計実績があるようです。
場所:東京都世田谷区代田二丁目
下北沢という街は、都市開発が遅れたこともあり、
入り組んだ小道によって構成される
という特徴があります。
その小道に沿って小売店が立ち並び、
古着や劇場のような
多種多様な文化の発信地になっています。
住宅を改装した小規模なカフェなんかも点在し、
街を歩いているだけで楽しいのです。
また、この敷地は「線路街」といい、
小田急線の地下化にともなって生まれた空間です。
電車の存在によって分断されていた街を
建築によってつなげるという
意味合いもあるようです。
したがって、開発主である小田急電鉄は
「再開発」ではなく新たに生まれた空間を
「開発」するという認識をもっているのです。
3.特徴ある開発経緯
この施設の目的は
新たなチャレンジの「場」をつくること。
近年、家賃相場が高騰しており、
魅力的な商店が減少しつつある中で
町の商いや若い人達のチャレンジを応援する
という意味合いがあります。
この開発主は小田急電鉄なのですが、
建設前に入居しやすい賃料やコストを加味し
設計に反映することで真に街の活性化を図る
努力をしていらっしゃいます。
以下に見せる写真や文章で
その意図を感じとっていただければと思います。
4.魅力
この建築は
下北沢の文化を凝縮したような商店街であり、
建築の中央に大きな抜け道があることが
最大の特徴といえるでしょう。
人の動線にそったヴォリュームの配置がみごとで、
街に対してひらけた建築です。
建蔽率も低く外部空間を多く取り入れているので、
街と連続的につながっている印象を持ちます。
おそらく他の開発業者であるならば、
建蔽率ギリギリに、
敷地いっぱいに建築を建てるでしょう。
その方が入るテナントも多く
大きな利益を見込めるからです。
一方この建築は、
下北沢の路地文化を彷彿とさせる意匠、
すなわちゆとりあるデザインです。
また、外部と連続的に繋がっているが故に
足を踏み入れやすい。
そういった観点からも、
言葉だけではなく、実の伴った下北沢の活性化を
目指す小田急電鉄の意気込みを感じました。
また、奇をてらわない造形
も魅力の一つだと私は感じています。
木造2階建てで、明るく温かい雰囲気を
持ちつつ街になじんでいます。
入っているテナントは
個性的な飲食店や本屋、コワーキングスペース。
そして建築の2階部分には住居も入っています。
珍しいものを見に来た外部の人たちに加え、
地域に根ざした人々の受け皿
として機能しているような気がしました。
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
過去私が紹介した建築の多くは、
ファサードにインパクトがあったように思います。
一方でこの建築は
表面以上に内部に大きな魅力がありました。
運営方法然り、開発主と設計者がともに
地域を盛り上げようという気概を感じる
作品だったのではないでしょうか。
この作品は今後の建築、都市のあり方を再考する
いい機会になることでしょう。
では。