醤油と山葵とお茶漬け
小骨が少なく、淡白な味で美味しいティラピア。私はティラピアが好きだ。
子供の頃は”骨”が苦手であまり魚が好きではなかった。見事に喉に刺さったり、歯茎に刺さったり、歯と歯の間にはまったり、舌や頬の内側に刺さったりして、本当に魚を食べるのが下手だった。そのため、魚料理を”美味しい”と感じる余裕がなかった。だから大人になってからも、骨が取りやすい小骨のない魚ばかりを好んで食べた。食べたといっても自分では調理しなかったので、本当に極々たま〜にほどだった。好きなものは決まって、サーモン、鰤の照り焼き、さばの味噌煮、うなぎ。
ヨーロッパで社会人になるちょっと手前で初めてサーモンのお寿司が食べられるようになった。それまではお寿司は卵だけ。ヨーロッパのシンプルな魚料理は今もその当時も大好きだ。そしてタイに来て夫と知り合ってからやっと色々な魚の種類、色々な魚料理を食べ始め、釣り始め、調理し始めた。色々な種類の魚のカレーはもちろん、鍋、揚げ物、蒸し魚、塩包焼き、サラダ、缶詰を使ったメニューなどなど、どれも美味しいタイ料理だ。今は魚が好きだと言える。とくに、自分や家族が釣った魚の命をいただくというところを体験してしまうと、私は自身で絞められない捌けない、例えば鶏肉、を美味しいと感じるのとまた違う何かがある。
タイには魚専用のタレが存在する。日本で魚には醤油をつけて食べるのと同じくらい定着しているタレである。
”ナムチムサムロ”
緑の生の唐辛子を使うので緑色のソースだ。ちょっと辛いのだけれど、それだけでなく甘さと酸味が加わってとても爽やかな味が魚に合う。最近では、このナムチムサムロがどんどん工夫されバリエーションが増えている。そしてこのソースが美味しいお店の魚料理がよく売れたりする。私もこのタレが好きだ。このタレが美味しいところでティラピアの塩包み焼きを買いたい。
いろんな魚料理やナムチムサムロを普段から楽しんで食しているのだけれど、結局、自分自身で簡単に作り、美味しくてホッとするのがこちら。
ティラピアの切り身に軽く小麦粉をまぶして揚げたもの。
そして、揚げたてのティラピアを醤油とわさびでいただく。
熱さにほふほふしながら、コクのある醤油とツーンとする山葵の刺激が味わえると、すぐに熱々のご飯を口に運びたくなる。
このシンプルさにしみじみ、「はぁ、美味しい…」と思う。
そしてその次の楽しみがあるのだ。
翌朝、前の晩に食べきれなかったティラピアの揚げ物をお茶漬けにしていただく。これがもう最高に美味しい。
以前、たまたま食べきれなくて残しておいたものを、何となく思いつきでやって食べてみたらとても美味しかったので、最近はわざと多めに揚げておき、その次の日の楽しみにとっておくことにしている。
冷蔵庫に入っていた冷えたティラピアの揚げ物をわざわざ温め直したりはしない。
炊き立ての熱々ご飯にお茶漬けの素をふりかけ、熱湯を注ぐ。
このままでは熱すぎて食べられないので、そこで冷えたティラピアをのせ、お箸でぐっとご飯に押し込む。こうすることで、ティラピアは温かくなり、薄い衣に味が染み込む。そしてご飯とお茶漬けも口に運ぶのに丁度良い温度になっている。
朝だけでなく、疲れきって何も考えたくない時、一人で簡単に済ませたい時にもこれが食べたくなる。助けてくれる。
最近では、天かす、揚げたナッツ、胡麻、海苔など、その時その時あるものを足してはちょとした味の違いを楽しんでいる。
生まれは日本。子供の頃は魚嫌い、お茶漬けなんて食べたこともないまま、今人生の半分以上を海外で過ごしている。日本人っぽくないね、とも言われ、やっぱり日本人だね、とも言われる。
それでも、魚を食べるときに醤油とわさびにホッとする美味しさを感じ、お茶漬けを好んで食べ始めるのは、やはり「日本の血なのね」と思ってしまう。
いろんなお茶漬けの素を試してきて、これが一番美味しいというか、ティラピアに合うと思ったのがこちら。
鯛だし茶漬け。
そうだ!ティラピアは見かけも味も真鯛や黒鯛に似ていると言われているから、やはり鯛だしに一番合うんだなと納得。
海外にいながらにして、日本料理店で食べるのではない”ニッポンのごはん”的なものが味わえることに感謝。
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