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”サカナの保全”を行う組合長の年間報酬は?

こんにちは、つりチケのゆきおです。

年間 約10.7万円


これは全国の内水面漁協(川や湖の漁業協同組合)における組合長の平均年間報酬額です。中小企業の役員報酬が平均700万円程度といわれる中で、この数字は驚きではないでしょうか。

今回は、漁協の仕組みや組合長の報酬事情、さらにはそれを取り巻く背景について掘り下げてみたいと思います。


内水面漁協の基本構造

まず、内水面漁協とはどのような組織なのでしょうか。

漁協は各都道府県から漁業権を認可された非営利団体です。熊本県の水産振興課の説明によると、漁協は「組合員(内水面で漁業を営む、あるいは従事する者)のために設立された非営利団体」であり、漁業権を持つ川で遊漁券を発行する役割を担っています。

つまり、釣り人が漁協管轄の川で釣りを楽しむためには、遊漁券を購入する必要があります。


遊漁券のいらない川との違い

一部の川では遊漁券が不要ですが、それらの川には漁協が存在せず、増殖義務(放流など)がないため、一般的には魚影が薄いことが多いです。

一方で、漁協が管轄する川では、漁協が放流を行い、釣り人がその維持管理の費用を負担しています。この仕組みによって、多くの釣り場が成り立っているのです。

また、遊漁券が不要な川であっても、都道府県の「漁業調整規則」によるルール(釣りの期間や方法の制限)は適用されるため、注意が必要です。


漁協組合長の年間報酬

冒頭で触れたように、漁協組合長の年間報酬の平均は約10.7万円。全国約800の漁協のうち、24漁協から得たデータを基にしています。なお、この24漁協のうち10漁協では組合長の報酬が「0円」でした。(放流などの手当は除く)

近年、役員報酬が増加した漁協はほとんどなく、むしろ減額傾向にあります。その背景には漁協の財政状況が影響しています。


報酬が下がる理由

漁協の収入減少の主な要因は以下の2つです。

1. 組合員の減少

漁協に所属する正組合員は、ピーク時の半数以下の約30万人に減少しています。組合員が減ると、賦課金や行使料といった漁協収入も減少するため、財政難に直結します。

2. 遊漁者の減少

釣り人(遊漁者)の減少も深刻です。2008年には全国で約319万枚の遊漁券が発行されていましたが、2018年には約222万枚に減少しました。(2023年現在は横ばい傾向)

これらの要因により、収入が減少しているにもかかわらず、放流などの義務費用が維持されているため、役員報酬を削る以外に選択肢がない漁協も多いのです。


組合長の仕事内容

漁協組合長の役割は多岐にわたります。

  • 増殖活動(魚の放流、産卵場の整備)

  • カワウや外来種の対策

  • おとりアユの準備と販売

  • 密漁者の監視、摘発(警察対応含む)

  • 遊漁券の準備、販売、売上回収

  • 釣り人からの電話やメール対応

  • 総会や理事会の開催

  • 決算書の作成と役所への報告

漁協の体制によっては事務員がいない場合もあり、その場合は組合長がこれらの業務の大半をこなす必要があります。時給換算すると、最低賃金にも遠く及ばないケースが多いといえるでしょう。


役員報酬の実態を知ってほしい

「漁協役員は儲けている」という誤解を持つ人も少なくありません。しかし、実際にはボランティアに近い形で漁協を運営している方がほとんどです。

今回の記事を通じて、釣り人や行政機関、釣り具メーカーの方々に漁協の実情を知っていただき、釣り場の維持や運営に関わる人々への理解が深まることを願っています。

漁協の組合長たちは、どのような思いでこの役割を担っているのか。その答えはこちらの動画をご覧ください。