“サカナの保全”は企業研修の新しい選択肢となり得るか?
こんにちは、つりチケのニシヤマです。
本記事では、環境保全と企業研修を組み合わせた新たな取り組みをご紹介します。
企業経営において、収益の確保のみならず、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献や生物多様性の保全といった社会的責任を果たすことの重要性がますます高まっています。
その中で、関係者と一緒に、環境保全と従業員エンゲージメントの向上を両立させる企業研修プログラムの実証実験を行いました。
取り組みの内容
活動はそれぞれ1日ずつ実施され、参加者は川に入ってヤマメの発眼卵を放流し、生態系保全の一端を担う「漁業協同組合」の活動を体験していただきました。
※発眼卵放流とは? 岐阜県河川環境研究所 資料
この取り組みを通じて、“地域の川を守る”という漁協の活動への理解を深め自然環境への意識を高めること、チームワークを育む機会にもなることを期待してトライアル実施を行いました。
参加者の声からは、“川の豊かさを肌で感じることができた”、“リラクゼーション効果があった”といった感想が寄せられました。
活動の背景
国内の河川では、水産資源を保全・増殖する役割を担う漁業協同組合が重要な存在です。しかし、多くの漁協が中山間地域にあり、過疎化や高齢化の影響で活動の継続が困難な状況にあります。このような背景から、漁協の活動を企業研修に活用し、参加する企業にも、受け入れる漁協にも、そして生態系にも良い「三方良し」を目指す試みがスタートしました。
企業にとっては、生物多様性の保全に直接・間接的に貢献できる機会を得るだけでなく、研修を通じて以下のメリットが期待できます:
生物多様性保全やSDGs推進の取り組み
チームワークなど組織力の醸成
社内の福利厚生コンテンツとしての活用(従業員家族への教育効果)
アンケートで見えた成果
活動後に実施したアンケートでは、参加者全員が「非常に満足」、「満足」との評価を示しました。また、“地域や自然にとって非常に意義のある活動”と感じた方が大半で、次年度以降の継続を希望する声も多数ありました。
さらに、この研修が職場のSDGs活動やサステナビリティ推進の一環としてどのような効果をもたらすかについて、以下のような回答が得られました:
社内コミュニケーションの活性化:9名
リラクゼーションやストレスマネジメント:7名
チームワークの向上:4名
このように、企業にとって実際の業務にも直結するプラスの効果が多数確認されています。
まとめ
この研修プログラムは、企業の社会的責任を果たしつつ、従業員の満足度向上や組織力の強化しうる可能性が見いだせました。
また、マンパワー不足に悩む漁協にとっても、課題の解決につながりうる第一歩になっています。
今回は栃木県内の2か所で、栃木県漁業協同組合連合会や地元の漁業協同組合と連携して行いました。
また、この取り組みには国の補助事業「内水面漁業・養殖業活性化総合対策事業 みんなでやるぞ内水面漁業活性化事業」を活用しました。
環境保全と企業価値の向上を両立させるこの取り組みに、ぜひ貴社もご参加ください!
後記:取り組む際の留意事項
また、企業が環境保全活動に取り組む際には、「グリーンウォッシュ」(見せかけだけの環境配慮)に陥らないよう注意する必要があります。
本取り組みを行う際に、漁協の活動そのものがすべてSDGsや生物多様性保全と完全に一致するとは限らないという前提を持っています。
例えば、漁協の増殖活動(放流等)について、漁業法に基づいて定められた義務放流量の達成が求められる放流活動も含まれており、それらを単純に「持続可能」、「生物多様性」と言い切ることはできません。
とはいえ、それだけをもって「漁協の活動が良くない」とは思いません。
カンタンに正解がわからないからこそ、最適な形を模索しながら、各河川ごとの特性に応じた取り組みを進めることで、少しずつ持続可能性を高めていく道筋が見えてくると考えています。