【40000字】ダウ90000との出会いを振り返りながら、第2回単独ライブ「20000」の感想を書く
はじめに
記事を開いていただきありがとうございます。この記事は約40000字の非常に長い記事となっています。とりわけ文才があるわけではないので、はじめに言ってしまうのもなんですが、読むのは結構しんどいかもしれません。
ただ、この記事の目的は、僕のライブの感想を読んでもらうことではなく、できるだけたくさんの人に「20000」の配信を観てもらうということです。(追記:配信は既に終了しています。)なので、正直記事自体は読んでいただかなくても大丈夫です。
なんの影響力を持たない僕がいくら面白いと言っても、あまり興味を引けないと思うので、文字数で攻めてみました。
ただ「面白いライブ」と宣伝するのではなく、「観たら40000字の感想を書きたくなるくらい面白いライブ」と宣伝すれば、僕のほぼ0に近い影響力でも少しだけ興味を持ってもらえるのではないかと思っています。
この記事は①ダウ90000の紹介、②僕とダウ90000との出会い、③ダウ90000のファンになってから今回の「20000」を観に行くまで、④「20000」の感想の4部構成になっています。
すでにダウ90000を知っている人は①を読む必要はないですし、②と③については僕の個人的なお話になるので、こちらも飛ばしていただいても問題ないです。 「20000」の感想が目当ての方は【「20000」の感想】の大見出し部分だけ読むことをオススメします。
「20000」の感想部分だけでも約28000字あり、この部分だけでも読むのはしんどいと思うので、全部読んでいただかなくても大丈夫です。
各コントについて「内容」と「感想」に分けて書いています。「感想」については基本的に「ここが面白かったです。」という、感じで小学生が書いた読書感想文のようなクオリティで、読むのが苦痛かもしれません。
なので、各コントの「内容」部分だけを見て、面白そうだなと思ったら配信チケットを買っていただければと思います。それが最善です。
それではこれから記事の内容に入っていきます。
ダウ90000について
「ダウ90000」というグループを知っているでしょうか?
おそらくこの記事を読もうと思ってくださった方のほとんどは、知っていると思うのですが、改めて、少しご紹介をさせていただきます。
右から4番目の男性、蓮見翔(26)さんが主宰の男女8人組の演劇・コント集団。
2020年9月に旗揚げし、メンバーの平均年齢は25歳という若さながら、現在、演劇界・お笑い界を中心に破竹の勢いで活躍している、今最も注目すべき8人組です。
2023年の活躍だけで見ても、演劇では、5月に「演劇の聖地」とも言われる下北沢の本多劇場にて、第5回演劇公演『また点滅に戻るだけ』を公演。全9公演のチケットは即完売。
コントでは、7月に放送された芸歴10年以内の芸人が競う若手芸人の登竜門ともされている大会「第44回ABCお笑いグランプリ」のファイナリストに選ばれており、10月に放送された「キングオブコント2023」では準決勝まで進出しています。
演劇・コント集団と紹介しましたが、彼らは漫才もできて、現在、準決勝まで開催されている「M-1グランプリ2023」(12/24(日)決勝戦放送)でも準々決勝まで進出を果たしました。準々決勝まで進出しているのは8540組中123組とかなり狭き門です。
ダウ90000は「ダウ90000」(蓮見さん+女性陣4人の5人組)と「1000」(蓮見さん+園田翔太さん(画像内右端の男性)の2人組)という2組で「M-1グランプリ2023」に出場しているのですが、その2組とも準々決勝に進出しています。M-1グランプリの準々決勝に同じ人が所属する2組が残ったというのは史上初のことだそうです。
さらに、2017年から開催されている女芸人No.1を決める大会「THE W」(12/9(土)決勝戦放送)にも女性陣4人のみで「ダウ90000」として出場しており、こちらも準決勝まで進出しました。
そして、テレビでも4月からテレビ朝日の深夜のバラエティ番組枠「バラバラ大作戦」の中で、ダウ90000初のレギュラー冠番組となる『週刊ダウ通信』が毎週月曜26時30分から放送中です。
このように演劇界・お笑い界で多くの功績を残しているダウ90000ですが、演劇の脚本、コント・漫才のネタはすべて主宰の蓮見さんが作成しています。脚本・ネタの作成をしながら、演出も担当し、自ら出演もするというその多才さから、芸能界をはじめ彼を評価する声は多いです。
(検索エンジンで「蓮見翔」と入力すると、サジェスト機能で「天才」と出てくるくらいです。すごすぎて逆に面白いですよね。)
僕もそんなダウ90000のファンの一人なのですが、近頃のあまりの活躍っぷりもあってか、お笑い好きの中では「今頃、ダウ90000を好きになるのはダサい」みたいな風潮もあったりするようです。(多分、ほんの一部の行き過ぎた人の意見だとは思いますが…。)
ただ、これはコアなお笑い好きの意見であって、実際、お笑いにそこまで詳しくない人にダウ90000の名前を出すと、名前は聞いたことあるというくらいの人、名前を聞いてもピンとこないという人もまだまだいます。
今回の記事は、そういう人にダウ90000を知ってもらい、少しでも面白さが伝わればいいなという想いもあって書いています。
(そもそもダウ90000を知らない人が、素人が書いた単独ライブの感想を読むか?と聞かれると困ってしまうので、そこはあまり追求しないでいただけるとありがたいです。自己満足の面もあります。)
出会いは「10000」
そんな僕がダウ90000を初めて観たのは、2022年の5月に渋谷のユーロライブで開催された第1回単独ライブ「10000」です。
きっかけは、昨今のエンタメ会の覇王と言っても過言ではない元テレビ東京のTVプロデューサーで、現在はフリーのプロデューサーとして活動している佐久間宣行さんです。
2021年の冬に放送していた『考えすぎちゃん』という番組内で佐久間さんがオススメの芸人として「ダウ90000」の名前を挙げており、そこから気になってYouTubeを観てみて、単独ライブに足を運んでみたという感じです。
僕と同じように佐久間さんがきっかけでダウ90000を知ったという人は結構多いのではないかなと思います。
今でこそ、ダウ90000主催ライブのチケットは先行販売の抽選倍率も高く、一般販売も発売開始と同時に完売してしまうほど入手困難になっていますが、第1回単独ライブの時点では「気になるから行ってみるか」くらいの熱量でもチケットが手に入り、まだ比較的入手しやすかった記憶があります。
ちなみに僕はこの「10000」を観に行くまで、お笑いのライブ自体に行ったことがありませんでした。ダウ90000を観ることも初めてでしたが、お金を払って芸人のネタを生で観ること自体も初めての経験でした。お笑いは大好きでネタ番組やバラエティ番組はよく観ていたのですが、「テレビやYouTubeで観れば良いや」と思っており、ライブにまで足を運ぶということはしていませんでした。
そのため、当日会場に行くまで、これからお笑いライブを観に行くはずなのに妙に緊張していたのを覚えています。ユーロライブという、行ったことも聞いたこともない会場だったのも影響していたと思います。
(ダウ90000を好きになってから、ユーロライブに行く回数も多くなり、今では馴染みの場所になりつつあります。)
会場に着いて自分の席を探すと、最前席ど真ん中の席でステージとの距離が近く、これから生でコントを観れるということもあり、ものすごくワクワクしていました。
いざライブが始まると、もうド肝を抜かれるくらいの衝撃の面白さでした。コント6本70分。ずっと笑いっぱなしであっと言う間に終わってしまい、エンディングのときに名残惜しさを感じるほど面白かったです。
登場人物が8人もいるのにそれぞれで笑うところがあって無駄な人がいない。8人それぞれにキャラクターがあって、メンバー全員が魅力的でした。
僕が個人的に会話のテンポやワードセンスで笑わせるタイプのコントが好きで、ネタの内容が自分の好みにかなりマッチしていたのも刺さった点のひとつです。
ダウ90000公式YouTubeには「10000」で披露したネタ6本のうち4本(「浪人」、「独白」、「今更」、「転職」)がアップされているので、興味が出てきた人は是非観ていただけると嬉しいです。
6本のコントのうち僕が一番笑ったのが「今更」で、中学生の頃から仲が良い、女2男1の3人組に焦点を当てた内容のコントです。設定の切り口にダウ90000っぽさが出ていることに加え、終盤の園田さんの泣きの訴えの部分の演技と面白さが素晴らしいコントです。会場でも爆笑が起こっていましたし、なんなら演者の蓮見さん自身も耐え切れずに笑ってしまっています。
ちなみに中盤に登場する、夜ご飯にケンタッキーとマックを買って帰っている上原佑太さん(「10000」ポスターの上段右端の男性)に対して、蓮見さんが「え、今日M-1?家でM-1観んの?」ってツッコむのも細かい点ですが、めちゃめちゃ笑いました。お笑いが好きな人ならもれなく笑ってしまうツッコミのワードセンスだと思います。
「10000」で最初に披露された「浪人」もオススメです。居酒屋に来た8人の大学4年生の中に1人だけ浪人生がいたことが発覚することから展開してく内容のコントです。ダウ90000が得意とする小気味良いテンポの会話劇で笑わせるパターンで、オチもきれいです。これを観た瞬間、面白さと凄さを同時に感じて、一気にダウ90000に惹き込まれました。
個人的にダウ90000の自己紹介的なコントのひとつになると思っていて、誰かにダウ90000のコントを勧めるとしたら、まずこの「浪人」を勧めると思います。
ライブ終わり、最高に面白い人たちを知ってしまったという嬉しさと高揚感に包まれながら、完全にダウ90000のファンになった僕は次の単独ライブも絶対観に行こうと心に決めました。
「10000」を観に行って、ダウ90000の面白さを知ることができて良かったのですが、もう1つ「ネタを生で観ることの楽しさ」も知ることができました。それまではテレビやYouTubeでネタを観て満足していましたが、生で観るとまた違う楽しさがあるなぁと実感しました。
ライブ会場に入って、開演時間まで待っている時間。会場にいる観客全員が期待や楽しみでこれから始まるライブにワクワクしている感じが伝わってきて、流れているBGMがフェードアウトし、これからライブが始まるとわかり、そのワクワク感が最高潮に達する瞬間。あの雰囲気はライブならではのものです。
ライブ最中についても、テレビやYouTube、最近ではもはや主流になっている配信ライブであれば、基本的に家で観ることができるので、ネタを観ながら他のことができてしまいます。その手軽さが映像で見るメリットでもあるのですが、ライブでは基本的にネタを観る以外することがないので、全集中してネタを楽しむことができます。何も阻害するものがなく100%の気持ちでネタを観ることができるのもライブの良さの1つだと思います。
「今更」のコントについてもYouTubeで観ても充分に面白いのですが、生で観たとき、特に園田さんの泣きの訴えの部分は痺れるくらいに面白くてめちゃめちゃ笑いました。自分と同じように会場の人たちも笑っていて、ドッと笑い声が沸き起こる中にいるという感覚もライブならではの体験のひとつで、僕はあの感覚が好きです。
あとものすごく単純なことですが、演者やネタを生で近距離で見れるというはやはり嬉しくて普通にテンションが上りますね。
最後にこれは僕だけかもしれませんが、ワクワクしながら家からライブ会場に向かう時間。ライブが終わって「面白かったなぁ…。」と噛み締めながら家路につくあの時間も個人的に好きです。帰りに好きなもの食べて帰ったりしたらもうその1日は言うことない最高の日になります。(僕は「10000」を観たあとにラーメンを食べて帰りました。)
「家に帰るまでが遠足」と言いますが、僕にとってはまさに「家に帰るまでがライブ」という感じで、そういった付録のような楽しさもあるかなと思います。
今ではダウ90000をはじめとして、好きなお笑い芸人のライブやイベントを観に行くことが好きになり、趣味のひとつになっているのですが、それは間違いなく「10000」を観に行った日の思い出がたまらなく楽しかったからです。
あのときは「観に行ってみるか」くらいの軽い気持ちでしたが、本当に観に行って良かったと思っています。
ちなみに僕はお笑いライブは基本的に1人で行くことが多いです。会場のお客さんの中には友達と来ている人やカップルで来ている人もいますが、僕のように1人で来ている方も結構いるので、1人だと浮くみたいなことはないです。
もし「ライブに行ってみたいけど、1人だと変かなぁ…。」と思っている人がいたら、全然そんなことはないので、是非気になったライブがあれば、1人でも良いので一度行ってみることをオススメします。
もしかしたらそれをきっかけにお笑いライブにハマるかもしれないですよ。
「10000」から「20000」まで
「10000」を観た衝撃の「渋谷事変」の後(僕の中での「渋谷事変」は『呪術廻戦』の中の出来事ではなく「2022年5月28日、渋谷のユーロライブでダウ90000の「10000」を観たこと」を指します。)、すっかりダウ90000のファンになった僕はそこからダウ90000が出演するライブなどに頻繁に足を運ぶようになります。
「10000」の次に観に行ったのが、2022年10月に新宿シアタートップスにて公演された、第4回演劇公演『いちおう捨てるけどとっておく』です。
ダウ90000主催のライブには「演劇公演」と「単独ライブ」の2種類があります。
「演劇公演」は1本の長編演劇を披露する公演で、「単独ライブ」は複数の単発コントを披露する公演です。「10000」は「単独ライブ」、『いちおう捨てるけどとっておく』は「演劇公演」にあたります。
「演劇公演」と「単独ライブ」で名前を分けている理由について、蓮見さんは「(コントを観れると思ったら演劇公演だった。あるいは、演劇を観れると思ったらコントライブだったというように)間違えて観に来てしまうお客さんがいるため、名前を分けている」と話しています。
実は僕もそれを間違えたうちの1人で、『いちおう捨てるけどとっておく』の公演会場に着くまでは、「10000」と同じようなコントライブを観るつもりでいました。
会場に着いて、舞台上に画像のようなセットが組まれているのを見て「今回やるのは演劇なんだ。」と理解しました。
僕はそれまで演劇を観たことがなかったので公演が始まる前は少し不安になったのですが、杞憂でした。ダウ90000は単独ライブだけでなく、演劇公演もものすごく面白かったです。(むしろダウ90000の根本は演劇にあると思っているので「演劇公演だけでなく、単独ライブも面白い」という表現の方が適切かもしれません。)
「演劇」というと少しとっつきにくいイメージを持ってる人も多いかもしれません。僕自身も演劇はまだダウ90000のものしか観たことがないので、これが適切な表現かは自信が無いのですが、僕個人としては、ダウ90000の演劇公演は「演劇とコントの中間にあるようなもの」と認識しています。
8人の登場人物のそれぞれのキャラクターを活かしたひとつの話が展開されていきながら、その中に笑いがたくさん詰め込まれています。「物語性のある長編コント」と言っても良いかもしれません。
そのため、演劇を観たことがないという人でもダウ90000の演劇公演は「初めての演劇」として観やすいのではないかなと思います。
『いちおう捨てるけどとっておく』の上演時間は約100分ほどでしたが、演劇を観るのが初めての僕でも長いと感じることは無く、むしろあっという間に感じてしまうほどの面白さでした。
演劇公演は観終わった後に、その物語の余韻に浸ることもできるので、単独ライブとはまた違った楽しみがあります。
僕は演劇公演については、第4回『いちおう捨てるけどとっておく』、第5回『また点滅に戻るだけ』の2つを観ているのですが、どちらも非常に面白い公演でした。
演劇公演の感想まで書いてしまうと、本題の「20000」の感想まで辿り着けなさそうなので割愛しますが、とてもオススメです。
(現在は観る手段が無いのが残念…!)
初めて観た「10000」から今回観に行った「20000」開催までの約1年半の間に、上記で紹介した2つの演劇公演も含めて、僕は以下のライブに足を運んできました。
・第1回 単独ライブ「10000」
・第4回 演劇公演『いちおう捨てるけどとっておく』
・劇場版 ダウ90000 ドキュメンタリー映画『耳をかして』
ダウ90000の蓮見さんの以外の7人に密着したドキュメンタリー映画。
その映像を蓮見さんとかが屋の2人をゲストに招いて一緒に鑑賞。
・+90000(タスキュウマン)
ダウ90000がゲストを招いて一日限りの共作コントを披露するライブ。
第1回目のゲストは「Aマッソ」。
・テアトロコント special コントライブ『夜衝2』
玉田企画・玉田真也さん、テニスコート・神谷圭介さんが企画、作・演出はダウ90000の蓮見さんのコントライブ。
ダウ90000からは忽那さん、中島さんの2人も出演しており、その他に伊藤修子さん、溜口佑太朗(ラブレターズ)、森本華さん(ロロ)が出演。玉田さん、神谷さん、蓮見さんの3名も出演しています。
・第5回 演劇公演『また点滅に戻るだけ』
・グランエース(お笑いライブ)
出演者は令和ロマン、9番街レトロ、ダウ90000、紅しょうが
・テアトロコント vol.62
「テアトロコント」はコント師と演劇人が競演し、交流により新たな化学反応を起こし、コント/演劇というカテゴライズによる≪縛り≫からの解放を試みるというコンセプトのライブイベントです。
出演者は桃尻犬、ザ・ギース、ぎょねこ、ダウ90000、春とヒコーキ
※僕は、桃尻犬、ダウ90000、春とヒコーキの3組出演の回に行きました。
・週刊ダウ通信presents ダウ90000 夏の八演会
・テアトロコント vol.64
出演者は切実、さすらいラビー、金の国、やさしいズ、ダウ90000
※僕は、切実、やさしいズ、ダウ90000の3組出演の回に行きました。
・第2回 単独ライブ「20000」
※配信でも以下のライブを観ています。
・あの子の自転車 vol.10
「あの子の自転車」はダウ90000が定期的に開催している芸人のゲストを招いたコントライブです。
出演者はダウ90000、ハチカイ、カーステレオミュージック、レインマンズ、リンドバーグ、人間横丁、無尽蔵
・至極の10分ネタライブ
出演者はザ・ギース、永野、キュウ、三福エンターテイメント、さすらいラビー、ダウ90000、春とヒコーキ、怪奇!YesどんぐりRPG、フランスピアノ
・18京
ダウ90000、10億円、ヨネダ2000の3組によるコントライブ。
最後には蓮見さん書き下ろしの3組の全員が参加するユニットコントが披露されました。
どのライブもとても面白くて、毎回「行ってよかったなぁ」「また観に行きたいなぁ」と思わせてくれます。
ただ、ライブを重ねていくにつれて大きな問題が発生しています。それは冒頭でも少し触れましたが、ダウ90000の人気が高くなり、段々とライブチケットを手に入れるのが難しくなっているということです。
特に、直近の演劇公演と単独ライブのチケットは先行抽選も高倍率、一般販売は販売開始と同時に完売するほどでプレミアムチケットになってきています。
このチケット問題については、ダウ90000を応援している身としては、チケットが入手困難になるほど人気になるのは嬉しいことである半面、ライブに行くのが難しくなるという切実な悩みでもあります…。
現に、僕もこれまでの単独ライブや演劇公演は運良く自力でチケットを当てることができていたのですが、今回の「20000」については、初めて先行抽選でも一般販売でも手に入れることができませんでした。そのため、会場で観るのは半ば諦めて、配信で観る覚悟をしていたのですが、何とかリセールで手に入れることができて、会場に観に行くことができました。(リセールに出してくれた方、本当にありがとう…!)
「20000」が最高に面白いライブだったので、このライブを会場で観ることができて本当に良かったと思っています!
それでは次から、そんな「20000」についての話をしていきたいと思います。(「やっとかよ。」と思ったあなた、僕もそう思っています。)
いざ「20000」へ
「20000」は下北沢にあるザ・スズナリという小劇場で開催されました。
ネタを生で観たいという気持ちももちろんなのですが、このザ・スズナリに行ってみたいという思いもあり、「20000」は絶対に会場で観たいと思っていました。(ちなみに僕はディスクユニオン側から行きました。)
僕はお笑いからダウ90000に入っているため、演劇については詳しくないのですが、このザ・スズナリも本多劇場と同様に演劇人にとっては「聖地」といえる劇場で、下北沢が「演劇の街」と呼ばれる起源となった歴史のある小劇場のようです。
ザ・スズナリは珍しいつくりをしていて、元々あったアパートの2階部分を改築してつくられた小劇場です。そのため、劇場に入る際は細くて急なアパートの階段を上る必要があります。
劇場内もそこまで広くなく、僕がこれまでに行ったことがある劇場と比べるとかなりこじんまりしている印象を受けました。キャパも多くなく116名ほどですが、その人数でも客席ではかなり密集して座る必要がありました。
(劇場のキャパが小さかったのが、今回のチケット倍率にも繋がっていたのかなと思います。)
僕個人としては、小さい劇場内に観客がみっちり詰まってライブを観るという空間が趣があって良いなと思ったのですが、もしかしたら窮屈で少ししんどいと感じてしまう人もいるかもしれません。
会場が小さく、観客同士の距離が近いのも影響してか、ライブが始まる前の期待感と楽しみ、少しの緊張感が入り混じった独特の空気が強く感じられて、いつものライブとは少し違うような感覚に包まれていました。
来ているファン層はこれまでのライブとそこまで変わらないはずなのに、劇場が変わるだけで、ここまで雰囲気が変わるのも面白いなぁなどと考えていたら、開演の時間になりました。
それでは、ここから「20000」で披露されたコントや幕間映像の内容や感想を書いていこう思います。(本題の感想に行くまでに8,500字ほど書いてしまいました。ダラダラと書いてしまいすみません…。)
※注意※
以下からは「20000」の感想になります。
ネタバレ等は気にせず書いていくので、まだ「20000」を観ていないという方は、是非以下のURLから配信チケットを購入してライブを観てから読んでいただくことをオススメします。
▼「20000」の配信チケットはこちらから!
https://pia-live.jp/perf/2340225-001?aetpia
価格は4,000円。(システム手数料を含めると4,220円)
ライブの内容は約10~20分のコント8本+幕間映像3本、時間は約140分です。
ボリューム的にもクオリティ的にもこのライブを4,000円で観れるのはとても安いと思います!
視聴期限は【12月24日(日) 19:00】(クリスマスイブ)までなので、早いうちに買っておけば、たくさん見返すこともできるので早いうちに買っておくのがオススメです!
僕も会場で観ましたが、配信チケットも買って改めて観直してます。それくらいオススメのライブです!
「20000」の感想
コント1:仕事着(約13分)
●内容
明転すると、パソコンを開いて机で向かい合っている蓮見さんと園田さんの姿。
舞台は服装自由のオフィス。冒頭、蓮見さんと園田さんのところに、部屋着のようなラフな格好で出勤し、先輩である蓮見さんに軽い感じで挨拶をする後輩の飯原さんが登場。飯原さんが去ったあと、飯原さんの服装や先輩に対する態度を良く思っていない園田さんが、飯原さんに説教をしたという話を始めます。
その後、女性陣4人が登場し、挨拶を終えてその場を去ると、道上さんが着ていた服がメンズものであったと言い、男の家から直接その服を着て出勤していると疑う園田さん。
道上さんの服装をさほど気にしていない様子の蓮見さんに対して、「どんな服を着てたかちゃんと覚えてる?」と問い詰める園田さん。蓮見さんは思い出せると主張し、そこから、中島さん、吉原さん、忽那さん、飯原さんがどんな服を着ていたのか思い出す勝負が始まります。
※ダウ90000のネタには、登場人物の名前にメンバーの名前をそのまま使用しているパターン、本名とは別の役名があるパターンがあるのですが、内容説明の際はわかりやすいように役名ではなく、メンバーの名前で記載していきます。
●感想
1本目からめちゃめちゃ面白かったです。序盤の蓮見さんと園田さんの会話劇では、園田さんが飯原さんへの説教内容を車で例えるのですが、「例えがくどすぎて全然本題が入ってこないなぁ…。」と思うところで、ちょうど蓮見さんが「なんで説教中にドライブしてんの?」ツッコんでくれて、めちゃめちゃ笑いました。ボケの泳がし方というか、溜めがすごく上手いなと思います。
「1000」のM-1の1回戦の漫才ネタも、蓮見さんが話す内容を気持ちの悪いボキャブラリーで例える園田さんを泳がせて泳がせて、最後にツッコむスタイルだったのですが、それに近いものを感じました。会話劇って、少し手を加えれば漫才にできてしまうものもあるので、ダウ90000が漫才もできるというのは、会話劇が面白くて上手いからこそだと思います。
女性陣4人が登場したとき、真っ先に出てくる道上さんが黄色の派手なベースボールシャツを着ているので、それが多分、この後の何かしらのフックになりそうだなというのはなんとなく想像がつきます。
ただ、その後、道上さん以外の女性陣の服装を思い出す流れになったときに「うわぁ、道上さんの服に気取られてたぁ。どんなん着てたっけな…。」と一緒に思い出していたのですが、園田さんの「クリスマス思い出したんだよね。」というセリフで「うわぁ、そうだ~!そんなんだった~!」と思って、笑ってしまいました。会場でも笑いが起こっていたので、おそらく観客の多くも似たような情報が頭の中に残っていたのではないかと思います。
蓮見さんが忽那さんの服装を「ホットカーペットを引きちぎってつくったような服」という思い出し方をしているのも、自分の頭の中に残っていた忽那さんの服装の要素にピッタリはまっていて笑っちゃいました。
観客の頭の中に残っているであろう、視覚的な情報を予測して、それを面白く例えて言語化して笑いにしているのが、面白いと思うと同時に、すごいなぁと感心してしまいました。
このコントのタイトルが「仕事着」ということがわかるのは終演時です。
なので、観始めの段階では服装に視点を当てた内容になるということはわかりません。服装について触れているのは、序盤の園田さんの「服装自由とは言え、あんなラフな格好で仕事来るか?」というセリフのみだと思います。
その後に、道上さんが派手なベースボールシャツを着て登場することで、観客の注意を服装に向けさせつつ、その他のメンバーがどんな服装をしていたか、思い出していく中で観客の頭の中に残っているであろう情報を面白く言語化していくことで笑いを起こすという、観客の視点の持って行き方や構成がすごいなと感じました。
これだけ構成などを褒めたりしていますが、このコントで一番笑ったのは明らかにレディースの服を着ている上原さんだったりします(笑)。カーディガンを脱いで、袖がキュッとなっている服が観えたときにめちゃめちゃ笑ってしまいました。
飯原さんの服装を思い出しているときに、袖がキュッとなっている上原さんが舞台を横切り、園田さんが「今見えてくんじゃねぇよ!」とブチギレツッコミをするところもめちゃめちゃ笑いました。
「ホットカーペットを引きちぎった服装」と言われている忽那さんの服装を見て、「ホットカーペット引きちぎってないよね?グレーじゃないもんね?」という園田さんに対して「誰が下地の方で言うんだよ」と蓮見さんがツッコむ一連の流れもめちゃめちゃ面白かったです。
飯原さんの服装の答え合わせをする際に、オチで飯原さんが道上さんと付き合っていることがわかり、失恋する園田さんを見て「やっぱり園田さんには負け役が似合うなぁ…。」と思いました。
(飯原さんが着ていた野球選手がクリスマスツリーになっている柄がプリントされたシャツは実在するものなのか、このコントのためにつくられたものなのか、少し気になりました。)
ちなみに「仕事着」は服装に視点を当てたネタでしたが、ダウ90000のコントには『タイタニック』を観たことないのに『タイタニック』のTシャツを着ているやつにツッコむことから始まるコント「タイタニック」があります。こちらのコントも面白いのでオススメです!
幕間映像1:オープニング(約1分半)
●内容
「20000」のポスターを撮影した際の映像と合わせてメンバー紹介をしていくオープニング映像です。
●感想
「10000」の時はオープニングや幕間映像はなかったので、オープニング映像を観たときはテンションが上がりました。このオープニングで流れている音楽が舞台転換の時にも流れるのですが、頭に残る曲で、気が付くと口ずさんでしまいます。「テレレッテッテッテーレ テレレレレ…」
(関係ないですけど、Yahoo!知恵袋でこういう感じでリズムをカナカナでしか書いてないのに曲名当ててるやつすごいですよね。)
コント2:異世界(約9分半)
●内容
明転すると、机に並んで楽しそうに話をしている園田さんと上原さん、横でイヤホンをしながら漫画を読んでいる飯原さん。そこに蓮見さんが登場。
蓮見さんが飯原さんを見て「何読んでるの?」と聞くと、「トロメラ」と飯原さんの代わりに答える園田さん。「トロメラ」とは『トロイメライの声』というアニメ化もしている漫画原作の異世界ファンタジー作品(架空)のようで、「トロメラ」を知らない蓮見さんに、「トロメラ」が好きな上原さんと園田さんが、どんな作品なのかを紹介していくことからスタートします。
その後、女性陣4人も合流し、8人の「トロメラ」の内容を巡った会話劇が展開されていきます。
●感想
上原さんが蓮見さんに「トロメラ」を説明する際に、全く知らないキャラクター名や用語を事前情報もなく、つらつらと話していくタイプで「うわぁ、こういうやついるわぁ…。」と思いながら聞いていると、蓮見さんも「あぁ、読まない。一気に嫌いになっちゃた。」と言い放ってくれます。作品を誰にどう紹介してもらうかで、その作品の印象って変わっちゃうから、誰に紹介してもらうかって結構重要ですよね。
「異世界」の上原さんみたいなタイプの人って、嫌なやつではないんですけど、作品への好きへの思いが強すぎるあまり、話すときに聞き手が見えてないことが多いです。こういう人結構いる気がします。蓮見さんの「こういう人いるわぁ」の引き出しとその解像度の高さ、それを笑いに結び付ける力がすごいなぁと感じました。(自分も誰かにダウ90000を勧めるときに上原さんみたいにならないように気を付けようと思います。)
続いて、そんな上原さんの話を「全然違うよ」と片付ける園田さん。この「異世界」については、園田さんのキャラクター設定と表現力が光っていて、それが一番面白かった点です。それに尽きるなと思います。
上原さんは「トロメラ」の主人公は「エリオット」だと話していたのですが、園田さんは「フィーリア」が主人公だと言います。この上原さんと園田さんの考えの違いが、展開の軸のひとつになります。
このコントの中での園田さんは「嫌なオタクの要素を煮詰めてできた煮凝り」のようなキャラクターをしていて、その話し方や所作のひとつひとつがウザすぎるのですが、それが笑えるウザさでめちゃめちゃ面白かったです。キャラクターをちゃんと自分のものにしていて、園田さんの表現力の高さに感心してしまいました。
特に、「トロメラ」に興味を持って「フィーリアはセブンガーディアンズなの?」質問を投げかけている吉原さんに対して、馬鹿にしたように笑いながら「フィーリアはセブンガーディアンズじゃないよ!」と突っぱねて、「フィーリア」と「セブンガーディアンズ」の説明をしている園田さんの姿は、面白さとウザさと気持ち悪さが混ざり合って、最高に面白かったです。近くでそれを食らっている吉原さんも蓮見さんも笑ってしまっていました。
終演時、僕の隣で観ていた女性2人組も「「異世界」の園田みたいなやつホント無理(笑)」と話しているほどでした。
上原さんと園田さんの二人で「アストラシルストーンあれば良かったのにね。」という二人にしかわからないネタでバカ笑いし合っているところも、嫌なオタクの気持ち悪い内輪ノリの感じが出ていて面白かったです。
その後、女性陣の話も聞いていくと、アニメ版の「トロメラ」には「エリオット」は出てこず、作者自身も「フィーリア」が主人公と言っているようで、園田さんの言い分が正しかったということがわかります。
園田さんのキャラクターのウザさも相まって、観客も含めて、絶対に園田さんの方が主観でしゃべっていると思っていたのですが、実は上原さんの方が主観でしゃべっていたというどんでん返しがあります。あんなウザいキャラクターしてたら園田さんの方が正しいとは思わないですよね(笑)。
蓮見さんが、園田さんに対して「お前、だいぶしゃべり方で損してるって!」とツッコみ、飄々とした感じでゴリゴリの主観でしゃべっていた上原さんに対して「こいつ、なんなんだよ気持ち悪ぃな!」とツッコんで、「動の気持ち悪いやつ」の園田さんと「静の気持ち悪いやつ」の上原さんに連続でツッコむシーンはめちゃめちゃ笑いました。
あと細かい点ですが、「トロメラ」の話をしていく中で、中島さんに彼氏がいることがわかるのですが、そんな中島さんに対して「彼氏いたんだね…。」と落ち込む上原さんにも、めちゃめちゃ笑ってしまいました。
中島さんの彼氏も「トロメラ」が好きなのですが、上原さんとは違い、作品の紹介の仕方が上手で、中島さんがちょいちょい挟んでくる彼氏から聞いた「トロメラ」の話が興味を引く内容ばかりで、蓮見さんも「本当にこいつ(中島さん)の彼氏から(「トロメラ」の話を)聞きたかった。」「お前に無いもん持ってそうだぜ。こいつの彼氏。」と言います。
「仕事着」で園田さんには負け役が似合うと書きましたが、上原さんも負け役が似合う人だと思っていて、上原さんが負け役をやるとどうしても笑ってしまいます。
YouTubeにはアップされていないので、観ることができないのですが、ダウ90000のコントで「三竦み」というコントがあります。
個人的にダウ90000の中でトップクラスに好きなコントなのですが、その「三竦み」の中での上原さんの負け役っぷりが大好きなので、いつか観れる機会ができたら観ていただきたいです。
コント3:手術後(約12分)
●内容
明転すると、舞台上に座っている中島さんと忽那さん。波の音と、背景に夕焼け空が映し出されていることから、舞台は浜辺だということがわかります。中島さんと忽那さんは姉妹で、妹の忽那さんは明日、大きな手術を控えています。
そこに病院の先生の道上さんと上原さんが登場。上原さんは「今はまだ彼氏ではない」とのことですが、忽那さんとはそれなりの関係のようです。
上原さんは忽那さんの横に座り、手を握ると忽那さんの手術が終わったら2人でどんなことをしたいか、そのデートプランを語り始めます。
上原さんが話を終えると、今度はそこに忽那さんいわく「上原さんと同じような感じの人」の園田さんが登場。それなりの関係の男が何人もいて選べない忽那さんに、道上さんが私たちが選んであげるからと、園田さんに上原さんと同様に手術が成功したらどんなことをしたいか、そのデートプランを忽那さんに伝えるように促します。
その後、忽那さんの元カレの飯原さん、おそらく上原さんと園田さんと同様、それなりの関係の男の蓮見さんと続いて登場していき、男性陣4人による手術後のデートプラン対決が展開されていきます。
●感想
「手術後」については、特に上原さん、忽那さん、園田さんの3人が面白かったです。
上原さんが忽那さんに話すデートプランがケチなデートプランなのですが、そのプランをさもおかしくないように淡々と話す感じが面白かったです。ヌルっとしたうっすらおかしい奴を演じているときの上原さんが個人的にすごい好きです。
上原さんが語るデートプランの「二人で車で江の島までドライブしよう」という導入はおかしくないのですが、「レンタカーは僕が借りよう。一旦、立て替えるから…。」というところから一気に雲行きが怪しくなり、会場からも徐々に笑い声が上がってくる感じが、良かったですね。
蓮見さんが書くセリフの「ケチ」を表現する部分のディテールがすごくて「(立て替えたレンタカー代を)向こうのごはん屋さんで帳尻合わせるのもいいな」とか「途中でサービスエリアについたら、運転している分飲み物は買ってもらおう」とか「向こうに着いたら、いっちばん安いパーキングを探そう。最大料金があるとことが良いね。」とか「二人でいる間に忘れずにガソリンを入れよう。」とかもうリアリティがありすぎて、めちゃめちゃ笑っちゃいました。
上原さんがケチなデートプランを語るシーンは「20000」全体の中でもトップクラスで好きなシーンかもしれないです。
そして、この気持ち悪いデートプランをなんの違和感もない様子で聞きながら、ポジティブな相槌を入れている忽那さんのキャラクターも良かったです。話す人と話を聞く人、両方変な人だとこんなに面白いんだと思いました。
園田さんが登場したときに「(上原さんと)同じような感じの人」と紹介したときは、思わず小声で「そんな人いちゃけないんだよ笑」とツッコんでしまいました。
このピュアなように見えて、変で最低なキャラクターは忽那さんが演じることでより面白くなっていたように思います。
自分のケチなデートプランを中島さんと道上さんにけちょんけちょんにされると、一気に負け役ゾーンに入り、道上さんに「暫定席座って!」と言われ、「なんだ暫定席って!」と負けツッコミで返す上原さんももう最高に面白かったですね。
上原さんのターンが終わると、今度はもっと気持ち悪いデートプランを披露する園田さんの登場。
「キッザニアに行って、働いているふりをしている子どもたちを見て、何人か名前を憶えてSNSで特定して、10年くらい経ってその時経験してた職業よりも平均年収が低い職業についていたら、二人で腹ちぎれるくらい笑おう」なんていう変にストーリー性がありつつ、性格の悪さと気持ち悪さがミックスされたデートプラン、どうやったら考えつくんだと思いました。
かと思えば、「冷蔵庫は分けよう。それぞれ好きな冷蔵庫買って、向かい合っておこう。夏の暑いは両方開けて真ん中に立って、涼しいなぁってしよう。」という単純に意味が分からなくて気持ち悪いデートプランもあり、蓮見さんが考えつく「気持ち悪くて面白い」の幅の広さとバリエーションに感心しました。
ちなみに園田さんのデートプランの中の「サトームセンはもうないからケーズデンキに行こう。」について、僕が観た回ではあまりウケていなかったのですが、個人的にはめちゃめちゃ面白かったです。
僕らの世代なら「サトームセン」のCMの歌(「たしかめよう 見つけよう 素敵なサムシング カモン! あなたの近所の秋葉原 サトームセン ガアォ(トラの声)」)は多くの人が口ずさめるんじゃないかと思います。
(この歌が流れつつ、2匹のトラの人形が踊っているCMです。)
道上さんのジャッジによって、この園田さんの気持ち悪いデートプランに負けた上原さんは「そんなわけないって!」と再び負けツッコミをしつつ、道上さんに「ほら、一段降りて。」と促され、暫定1位から2位に陥落します。
今回の「20000」はステージ自体が階段のように段がある構造になっており(このステージの構造がザ・スズナリの元々の構造なのか「20000」のために組んだセットなのかはわかりません。)、前にいる人と被らずに奥行きが表現できる構造になっていました。「手術後」については、段の高さで順位を表現したように、この奥行き表現が活かされていたように思います。
園田さんの次には、忽那さんの元カレの飯原さんとその彼女の吉原さんが登場。元カレの登場+舞台の浜辺は忽那さんと飯原さんの思い出の場所ということもあり、暫定1位の園田さん、2位の上原さんに負けムードが漂い始めますが、上原さんと園田さんに劣らないキモすぎるデートプランを披露する飯原さん。
そのキモすぎるプランを聞いて勝ちを確信し「よっしゃあ!」と歓喜の声を上げて、舞台の前に躍り出てくる、園田さんと上原さんの姿は最高でした。負け役どうしで喜び合ってるのを観てめちゃめちゃ笑っちゃいました。
最後にそれなりの関係の男③の蓮見さんが登場し、唯一まともなデートプランを披露したことに加えて、蓮見さんが忽那さんと同じ、珍しい血液型をしていて輸血ができるということもあり、一気に蓮見さんが優勢になったところで、「こいつじゃん。ダルっ。」「輸血出されちゃ勝てないよな。」と口々に愚痴る、負け役の園田さんと上原さん。さっきの歓喜の様子から一気に叩き落されてる様もめちゃめちゃ面白かったです。
「手術後」は蓮見さんが考える気持ち悪いデートプランの数々に笑い、園田さんと上原さんの負け役キャラ、忽那さんが演じる変で最低なキャラ、それぞれが存分に生かされていて、ものすごく自分好みのコントでした。
コント4:幼馴染(約14分)
●内容
明転すると、段ボールを開いている道上さん。そこにすぐさま蓮見さんが入ってきます。舞台は蓮見さんの家の中。二人は結婚を機に蓮見さんの家に一緒に住むことにしたようで、道上さんの家から持ってきた積み荷を片付けている最中です。
少しすると段ボールを抱えた飯原さんが登場。飯原さんは道上さんの幼馴染で、蓮見さんとは今回が初対面。蓮見さんと道上さんが運転免許を持っていないため、飯原さんに引っ越し作業を手伝ってもらっていました。
持ってきた荷物の整理をしていると、道上さんが実家から「家電」(いえでん=家に置いてある固定電話)を持ってきていることがわかります。
家電の必要性に疑問を感じる蓮見さんに対し、必要だと主張する道上さん。話を聞いていくと、道上さんが20年間ほぼ毎日、幼馴染の飯原さんと「ファックス」だけでやり取りをしていたことがわかります。
別に付き合っている訳ではなく、たいしたことではないという道上さんに対し、蓮見さんは「ファックスでの20年間のやり取りは付き合っているより深い」と主張し、道上さんと飯原さんに「これは浮気だ」と詰めていきます。
●感想
「幼馴染」は「ダウ90000っぽさが詰まったコントだな」と感じました。
「ファックス」という、今ではほとんど使われることがない「不便な連絡手段でやり取りすることの趣」のようなものがこのコントのメインテーマになっています。
僕の世代だと、携帯を持ち始めた頃はまだガラケーで連絡手段は「メール」が基本だったのですが、高校の途中くらいから徐々にスマホが普及し始め、連絡手段は「LINE」が基本になりました。LINEが当たり前になった今、メールでのやり取りを思い返してみると、テンポも悪いし、不便な連絡手段ではありますが、メールならではの趣みたいのはありました。
ガラケーだとメールを送るときと受け取るときに一瞬ネットに接続されるのですが、僕が使っていたドコモの携帯ではそのネットに接続するときに「iモード」の「i」のマークが画面右上で点滅するんです。それが点滅すると着信が鳴る前にメールが届くのがわかるのですが、好きな女の子とメールでやり取りしているときは早くその「i」のマークが点滅しないかとずっと携帯の画面を見張っていたことを思い出しました。メールが届いたと思ったら、別の奴からのメールだったり、メッセージR(ドコモからの広告のようなメール)だったりして、「i」のマークが点滅するたびに一喜一憂していました。
僕はファックスを使ったことがないので、メールのやり取りでの話を例にしましたが、「ファックス」でやり取りするというのは「不便な連絡手段でやり取りする趣」の上級版みたいな感じですかね。その連絡手段の不便さに比例して、趣も大きくなっていく感じだと思っています。
この「不便な連絡手段の趣」をテーマにしている着眼点がダウ90000っぽいなと思いました。加えて、そこにダウ90000の得意分野である恋愛要素もありつつ、しっかり会話で笑わせる内容で、ダウ90000の良さが詰まったコントだと感じました。
ファックスで20年間やり取りをしていることをたいしたことではないと思っている道上さんに対して、その趣や尊さをまくしたてるように説いていく蓮見さんの言葉選びが面白かったです。
「付き合ってください。から始まる5年より、ファックスで繋がってる20年の方が愛じゃない?」とか「おやすみ。だけのファックス?今すぐ会いに来てよ。じゃん。」とかは蓮見さんならではの言葉選びだと感じました。
「おやすみ。だけのファックス?…。」については、もはや行き過ぎてて、道上さんと同じように「何言ってんの?」って感じでしたね(笑)。
道上さんが保管していた過去にやり取りしていた大量のファックスを見て、「24時間テレビか!マラソン走んなきゃこんなもらえないぞファックスなんか!」っていうツッコミも最高でした。
ファックスで送られた忽那さんのエグい上手い似顔絵を見せるところもめちゃめちゃ面白かったです。(あのエグい上手い似顔絵は誰が描いたのか少し気になりました。)
忽那さんも飯原さんが幼馴染の道上さんとファックスでやり取りをしているの特に気にしていない様子で、このコントの中で、蓮見さんだけがファックスでやり取りすることに趣を感じています。
僕も、どちらかというと蓮見さんの言い分がわかる方(不便な連絡手段に趣を感じる方)なのですが、蓮見さんの言い分がわからない人からすると、もしかしたらこのコントは違った見え方になるかもしれないですね。
ファックスだけでやり取りをしていた道上さんと飯原さんを「浮気だ」とあんなに攻めていた蓮見さんが、大学の同級生の中島さんと「電報」だけでやり取りをしていたことがわかり、飯原さんと蓮見さんの形勢が逆転する展開も面白かったですね。
個人的に「幼馴染」の中では、この蓮見さんと飯原さんのディベートのような言い合いのシーンが一番面白かったです。特に飯原さんが淡々と理路整然に蓮見さんを詰めていくのが面白くて、めちゃめちゃ笑いました。
園田さんと上原さんが登場したとき、特におかしなことはしていないのに、笑い声が上がっていて、「園田さんは登場するだけで面白い域にまで達したのか。」と少し驚きました。そして「僕ファックスが好きでこの仕事を始めたんです。」という上原さん。僕は相変わらず「変な奴を演じている上原さんが好きだなぁ」と思いました。
終盤の飯原さんが道上さんに「こいつ(蓮見さん)、他の女と電報してたんだよ?」、「電報良くないの気づいてよ!だから20年もファックスしちゃうんだよ!?覚えてないの?初めてファックスした日のこと!」と語気を強めるシーン。この文脈で「電報」とか「ファックス」と言われると、なんだか「電報」とか「ファックス」が少し厭らしい意味を持った言葉に聞こえてしまって、それが面白かったですね。(そう聞こえたのは僕だけですかね…?)
飯原さんの「ごめんね。この人(蓮見さん)いなかったら付き合ってなかった。」という言葉を受けて、蓮見さんに「なんか、ありがとうございます。」とお礼をする忽那さん。この鈍感さも忽那さんのキャラクターにピッタリで笑っちゃいました。
最後に、吉原さんと二人で「回覧板」を回すことになり、別の不便な連絡手段を介した、新たな恋が始まりそうな予感がするというオチもきれいでしたね。
「幼馴染」は「不便な連絡手段の趣」という着眼点、その趣について巧みな言葉選びでまくしたてる蓮見さんが最高に光っていました。ダウ90000の良さが詰まった秀逸なコントだと思います。
コント5:大親友(約10分)
●内容
明転すると、テーブルを囲んで座っている上原さん以外の7人。舞台は上原さんの部屋です。
7人はサプライズで誕生日を祝おうと、上原さんに内緒で上原さんの部屋で誕生日パーティの準備をして待っているのですが、上原さんのバイトが長引いてしまったようで、すでに2時間ほど待っている状況。
あまりの待ち時間の長さに皆の機嫌が悪くなり、これから誕生日パーティを控えているにも関わらず、7人の中に険悪なムードが漂い始めます。
●感想
僕は「20000」で披露された8つのコントの中でこの「大親友」が一番笑いました。もうめちゃくちゃ笑いました。本当に笑いました。「20000」の中で一番好きなコントですが、今まで観てきたダウ90000のコントの中でもトップクラスに好きなコントになりました。それくらい最高に面白かったです。
イライラして機嫌が悪くなった7人が、互いの言動にいちいち突っかかって、ブチギレて喧嘩をしているかのような勢いで、互いを思いやった優しい言動をしているというコントです。つくり自体はシンプルなんですけど、「ブチギレ」と「思いやり」が掛け合わせるとこんなに面白いんだなと思いました。
このコントはブチギレながら見せる、思いやりのある言動や優しい言動の大喜利のような側面もあると思うのですが、その「思いやり」や「優しさ」を表現する行動描写のひとつひとつが秀逸で面白かったです。
まず「ブチギレ」と「思いやり」という掛け合わせが面白いんですけど、それだけではここまで面白くならず、蓮見さんが考える「思いやり」の行動描写の細かさと面白さ、そしてメンバー全員の演技力と表現力があってこそ、ここまで面白いコントに仕上がっているのだと思います。
主役の上原さんが到着する前に用意していたお寿司を食べ始めた飯原さんに対して、ブチギレながらも「私、しょっぱいパンだけでお腹いっぱいになっちゃっていらないから食べれば!?」とチョコのパンを勢いよくテーブルに叩きつける道上さん。この時の道上さんの顔が最高に面白すぎました。普段とのギャップがすごかったです(笑)。
「水分無いとしんどいでしょ!?なんで言わないの!?」とこちらもブチギレながらお茶のペットボトルを叩きつける吉原さん。「もし、食べ合わせ悪かったら。」「チョコのパンとお茶合わないでしょ。考えればわかるでしょ。」と機嫌悪そうに、ミルクティーのペットボトルを飯原さんに差し出す中島さん。
「パンが甘い奴だってわかってれば。」という吉原さんに対して、「大丈夫。わかってる。なんも悪くない。偶然でこうなってるだけだから!」と吐き捨てるように言う中島さん。
女性陣3人がブチギレながら見せる一連の思いやりの連鎖が本当に面白かったですね。
トランプを配るとき、テーブルの反対側に座っている園田さんと吉原さんに少し配りづらそうにしている蓮見さんを見て、園田さんが「ここでいいよ!」と怒りながら蓮見さんが配りやすい位置に置かせて、自分の分と吉原さんの分を配り分けるシーンとかもめちゃめちゃ笑いました。
思いやりのある行動のひとつひとつの解像度が高すぎるし、険悪な雰囲気の中でこの絶妙な優しさを見せられると面白すぎるんですよね。
泣きながら自分がラップを買ってくるという忽那さんに対して、「泣いてるやつ行かせるわけねぇだろ!!いい加減にしろよ!!」とブチギレながら優しい言葉を投げかける飯原さん。
このコントは7人全員(上原さんはオチ部分でしか登場しません。)面白かったのですが、個人的に飯原さんが最高に面白かったです。飯原さんが大声を出すだけで、笑っちゃうゾーンみたいのに入ってしまいました。大声で怒鳴ってる飯原さんが個人的にめちゃくちゃツボなんですよね。
忽那さんをかばって、ラップを買いにいくという園田さんに対して、「ねぇ!外寒いよ!!」「一枚、羽織れマジで!!」と怒りながら、お母さんみたいな優しさを見せる、吉原さんと蓮見さん。
その優しさに対して、「夜も暖かいと思って持ってきてねぇよ!」と逆ギレする園田さん目がけて、自分のレザージャケットをものすごい勢いで投げつける飯原さん。この飯原さんがレザージャケットをぶん投げるシーンで、自分の「20000」の中での笑いの最大瞬間風速が出たと思います。このシーンはめちゃくちゃ笑いました。僕が観た回では、会場でもこのシーンで一番大きな笑い声が上がっていたような気がします。
ちなみに配信で観直してみると、このレザージャケット、前部分をチャックではなくボタンで締めるタイプのものでした。チャックのものだとぶん投げた時に園田さんにチャックの金属部分が当たってケガをしてしまう可能性もあるので、ボタンのタイプのものにしたのかなと思います。本当の優しさですね。
全体の半分くらいを玉子が占めるお寿司を見て「工事現場みたいになってんじゃん。」と例え悪口を言う中島さん。こういう細かい悪口のワードセンスも面白かったです。
自分が買ってきたお寿司を散々責められた蓮見さんが「いいよ。じゃあ俺が全額出すから。文句ねぇだろ。バーカ!」と怒ると、「それは違う」と口々に言うメンバー。現金の持ち合わせが無い飯原さんを「いいよ。お前、現金ねぇんだろ?」と気遣う蓮見さんに対して「PayPayやってんだろ、お前!?PayPay教えろよ!!」とブチギレる飯原さん。ブチギレながら言う「PayPay」ってめっちゃ面白いんですね。飯原さんってことも相まって、このセリフもかなり笑いました。
ラップを買いに行った園田さんが戻ってきて、コンビニの袋から「なんか拾った。」と人数分の「ウコンの力」を出す園田さん。「私、お酒飲まないんだけど!」という忽那さんに対して、それを見越して「黙れ。」と言いながら「ヤクルト1000」を置いて「睡眠の質でも上げとけ。」と吐き捨てる園田さん。このシーンも最高でしたね。お酒を飲まない人には「ヤクルト1000」を買ってくるっていう、思いやりの描写が秀逸すぎました。
最後、上原さんが帰ってくると、クラッカーと共に「ハッピーバースデートゥーユー」の歌い始める7人。2時間以上待った険悪なムードの中でも、タイミングよくクラッカーを発射し、ホールケーキを持ってきて、歌の最後の「トゥーユー」の部分ではきれいなハモりを見せて、誕生日をお祝いする姿はまさに「大親友」でした。最後のハモりの部分とか最高に面白かったです。
「大親友」は「ブチギレ」を演じる7人の演技力と表現力と蓮見さんが考える「思いやり」を表現する行動描写のひとつひとつの秀逸さと面白さが相まって出来上がった最高のコントでした。
今まで観てきたダウ90000のコントの中で、メンバーたちがここまで大声を張り上げるパワーのあるコントって無かったのでそれが新鮮でした。パワーだけじゃなくて、その中にちゃんとダウ90000ならではの面白さもあって、素晴らしかったと思います。これを生で観れたのは本当に良かったです。
(終演後、このコントが「大親友」ということがわかり、真っ先に湘南乃風の『純恋歌』が思い浮かびました。「大貧民負けてマジギレ」とか、少しこのコントに通ずる要素があって、なにか着想を得たのかなと思ったりもしました。)
幕間映像2:コンピレーションアルバム(約3分半)
●内容
「ねぇ、何聴いてるの?」と尋ねる吉原さんの声。「あぁ、聴く?片耳ずつで良ければ。」と答えるのは飯原さん。二人でイヤホンを片耳ずつしながら、一緒に音楽を聴いているというシチュエーションのコントです。
イヤホンをつけてみると「懐メロ」を聴いていた飯原さん。吉原さんにもいくつか懐メロを勧めるのですが、飯原さんが「コンピレーションアルバム」でしか曲を聴いていないことがわかります。
幕間映像と言いつつも、基本的にモニターには飯原さんが聴いているコンピレーションアルバムのジャケット画像が映るだけで、音声でのコントになります。
●感想
この幕間映像も面白かったですね。僕らの世代はまだCDを購入する文化が主流だった時代を経験しているのですが、もう少し若い世代になると、もしかしたら「コンピレーションアルバム」って伝わらないのかも?とも思いました。
「コンピレーションアルバム」は特定のテーマやコンセプトで集められた楽曲で構成されたアルバムで、音楽系サブスクでいうところの「プレイリスト」と同じようなものです。
吉原さんが「USEN契約してない飲食店しか持ってない」と言っているように、コンピレーションアルバムを買って聴いてる人なんてほとんどいません。せめてTSUTAYAで借りるくらいだと思います。なので、飯原さんみたいにコンピレーションアルバムを自分で買って、しかもコンピレーションアルバムでしか聴いていないというのは、めちゃめちゃ変だし面白いです。
back numberの『高嶺の花子さん』のアルバムジャケットの話になったとき、僕らの世代の人ならもれなく、住宅街を上空から見たようなデザインのジャケットを思い浮かべたと思うのですが、
このアルバムジャケットが出てきて、めちゃめちゃ笑っちゃいましたね。
back numberの『高嶺の花子さん』を聴いてこのジャケットを思い浮かべる人なんて、この世にいるわけないので。みんな持ってるわけないデザインのアルバムなので。
「恋うた」とか「懐メロ」とかのコンピレーションアルバムってジャケットデザインが絶妙にダサいものが多いんですよね。それも相まって、コンピレーションアルバムなんて買うわけないんですが。
最後に飯原さんが吉原さんに告白すると、緑黄色社会の『Mela!』が流れ始めます。これもコンピレーションアルバムから流れているのですが、そのコンピレーションアルバムが『鬼滅の刃 無限列車編』をオマージュした『令和の歌 無限邦楽編』というもので、タイトルとデザイン合わせてダサすぎるなぁと思ってめちゃめちゃ笑っていたのですが、これ実在するコンピレーションアルバムなんですよね。
タイトルもデザインもあまりにもダサすぎるので、てっきり、このコントのためにつくった架空のコンピレーションアルバムだと思っていたのですが、終演後に気になって調べてみたら実在していて、びっくりしました。
ダサすぎますよね。このコンピレーションアルバム。これをオチに使いたいがために、このコントをつくったのかなと思うくらいの面白さです。
こんなアルバムで曲聴いてる人に告白されたら、そりゃ断りますよね。
コント6:旅館裏(約15分)
●内容
明転すると同時に、「じゃあ朝礼を始めていきます。」と話し始める蓮見さん。舞台には作務衣に前掛けの服装をした中島さん以外の7人の姿。蓮見さんが朝礼で話している内容から、舞台はコントのタイトルにもなっている「旅館裏」(旅館のスタッフスペース)ということがわかります。
蓮見さんが社員さんで、その他の6人はアルバイトスタッフ。これからチェックアウトをした部屋の清掃作業を始めるようです。
蓮見さんが朝礼を終えてその場を去ると、2人1組の3チームに分かれて、じゃんけんをして、楽しそうな様子で「鳳凰」や「皐月」という単語を口にしている飯原さん以外の5人。
飯原さんは、今日から新しく入ったスタッフで、この一連の流れについていけずに質問をすると、「鳳凰」や「皐月」というのは部屋の名前で、じゃんけんで掃除する部屋を決めていたことがわかります。
広い部屋だと掃除するのが大変なのではないかと疑問に思う飯原さんに、園田さんは「ここ、掃除した部屋に残ってた食べ物、全部もらえるんだよ。」ととんでもないことを言い出します。
ただ、単純に掃除したスタッフがその部屋に残っていたものをすべてもらえるわけではなく、いくつかのルールがあり、旅館の部屋の清掃をまるでゲームのように楽しんでいるスタッフたちの姿を描いたコントです。
●感想
学生の頃に友達と旅館に泊まった際に、大量のおつまみやスナック菓子、お酒などを買ったはいいものの食べきれずに、結局、旅館に置いて帰ったという経験。誰しも一度くらいはしたことがあると思います。
この「旅館を出るときに部屋に置いて帰るもの」に着目したのが「旅館裏」です。ダウ90000の得意分野のひとつに「あるある」があるのですが、「旅館裏」は「旅館あるある」が詰まったコントです。
ただ、「旅館あるある」を詰め込んで羅列するのではなく、「旅館に置いていったもの」にゲーム性をプラスして見せています。そこが良かったです。「旅館あるある」のひとつひとつも面白くて、そこに絶妙なルール設定が加わることで、面白いコントになっていました。
一番手の上原さん・道上さんペアが持ってきた残り物の中にあった、前日の夜に明日の朝食べる用に買ったものの結局食べない「朝のパン」とか、心当たりがありすぎて笑っちゃいましたね。
あと「チェックアウトの時間が"どっか"に書いてある」っていうのもめちゃくちゃ笑いましたね。大切なことなのになぜか目立つところに書かれてないんですよね。
似たようなケースで、この前泊まった旅館にフリーWi-Fiの名前とパスワードがなぜかエレベーターの中にしか書いていない旅館があって「どこに書いてんだよ」と思ったのを思い出しました。
「旅館裏」については、園田さんと吉原さんのコメディペア(勝手にそう思っています。)の演技も光っていたように思います。
上原さん・道上さんペアの「成城石井」の袋を見たときの吉原さん、カップラーメンを出した時の園田さん、「道の駅イチゴ」を見たときの二人のテンション爆上がりのところとか、めちゃめちゃ面白かったですね。
「ポテチ3味揃いボーナス」を説明するときの吉原さんとか、当時の柳原可奈子さんを観ているようでした。
「ポテチ3味揃いボーナス」「ポテチビンゴ」「ちゃんぽんドボン」とかルールがいちいち絶妙で面白かったですね。蓮見さんはゲームのルール考えても面白いのかよ。と思ってちょっと引きました。
「黒ひげ飛ばしたら置いてあった現金総取り」は絶対犯罪ですけどね(笑)。
青山学院大学4年生男女6人が泊まっていた「鳳凰」の部屋を掃除した園田さん・忽那さんペアがLサイズのピザ5枚ほぼ余りを手に帰ってくると、それに対して「飯残せば残すほど面白いと思ってんだ。そんな奴ら。」という上原さんのセリフもめちゃくちゃ悪意が詰まってて面白かったですね。
ちなみにダウ90000のネタに「MARCH」というコントがあります。これは「MARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)」をテーマにしたコントで、蓮見さんの「MARCH」に通う学生に対する偏見が詰まったコントになっています。
僕は、大学時代に法政大学の多摩キャンパスに通っていて、しかも、指定校推薦で入学しています。このコントでボロクソに言われている学生像にもろに当てはまっているので、めちゃめちゃ面白かったです。
ただ、これだけは言わせてもらいたいのですが、法政大学の多摩キャンパスの遠さはガチです。遠すぎます。
話を「旅館裏」に戻します。先ほど、園田さんと吉原さんの話をしましたが、忽那さんについては演じているキャラクターが新鮮でした。忽那さんは、純粋だけど変な人やおっとりしていて優しい人を演じていることが多い印象なのですが、「旅館裏」ではダーティすぎる反則をする真正面から嫌なキャラクターを演じていました。
「ポテチ3味揃いボーナス」にのり塩味の空袋を確信犯的に入れたり、「道の駅イチゴ」が欲しいあまりに、上原さん・道上さんペアの袋に無かったはずのお酒を忍ばせて「ちゃんぽんドボン」させたり、普段の忽那さんの印象に引っ張られることなく、終始嫌な奴に映っていたので、忽那さんの違った一面を観れたのも良かったです。
ああいう感じで、みんなでノリで楽しいゲームをやってるときにマジになってズルされると雰囲気悪くなるし、めちゃくちゃ冷めますよね。
Appleの充電器欲しさに、一升瓶飲み干してるのはさすがに面白いですけどね。
園田さん・忽那さんペアが持ってきたお酒でギリギリ「ちゃんぽんドボン」しなかった時の盛り上がりも最高でしたね。その後、忽那さんのダーティプレイによって、ドボンしてしまうのですが、ギリギリこぼれない量と、そこから足したらこぼれる量をどうやって調整したのかなぁと少し気になりました。
「旅館裏」はダウ90000の得意分野である「あるある」に絶妙に面白い「ルール」をプラスして見せるというのが新鮮で、ダウ90000らしさがありつつも、今までとは趣向が少し異なったコントに仕上がっていて、とても面白かったです。
幕間映像3:単独ライブの観方(約6分)
●内容
モニターにはパソコンを観ている男女二人の姿。(ちなみに、この二人は「サイハテ」というコンビの芸人さんです。)
二人は「20000」を配信で観ているようで、この幕間映像が流れるタイミングと同じように「旅館裏」までを観たところで、男性は動画を停止します。次に披露されるコントがラストだと予想し「どう繋げるんだろう?」と女性に投げかけると、これまで披露されたコントの中でラストに繋がりそうな要素を振り返りつつ、ラストのコントの主人公や設定を二人で考察し始めます。
二人で楽しそうに考察話をしていると、突如、忽那さんが現れて「繋げないよ。」と言います。
●感想
この幕間映像は「20000」を考察しながら観ている人自体をネタにするという動画でした。自身が作成するネタの傾向などに対して若干の自虐を含みつつも、考察しながら観ている人をけちょんけちょんに言うという蓮見さんらしい悪意を含んだ映像で面白かったです。
僕は、この時点でラストに繋げるとかは考えていなかったのですが、この映像によると結構そういう観方をしている人も多いみたいですね。
ただ「演劇公演で長編やってるから、コントの単独繋げるの意味わかんないだろ。」っていうのは言われてみればごもっともですし、「余計な考察とかしないでまっすぐ楽しんだ方が良いですよ。」というのもまさにそうだなぁと思います。
「僕はラスネタで繋げないことをモットーにコントの単独をやっているので、繋げることはありません。今回のはお芝居じゃないですし、全体のストーリーとかも無いです。素人の身勝手な考察ほど、聞いてられないものはありません。」こことかもう本当に切れ味鋭かったですよね(笑)。
この部分、少し違った受け取り方をする人もいそうだなと思ったのですが、蓮見さんは「コントの単独でラスネタを繋げること」をイジっているのではなく、「ラスネタを繋げると思って考察しながら観ること」をイジっているという点です。
自分たちは演劇公演で長編もやっていて、コントの単独を繋げる必要がないからラスネタを繋げないというだけで、ラスネタを繋げること自体をイジっているわけではないと思います。そういう見せ方で面白くなるものもありますからね。
今年の夏に公演していた吉住さんの第6回単独公演『ティーカップを、2つ』は、まさに「ラスネタで繋がるコントライブ」で、それまでに披露したコントの主人公がラストのコントに登場して、すべてのコントが繋がるという構成でした。
ひとつひとつのコントだけでも十分面白いのに、全体で縦軸の物語にもなっている構成力に驚きました。これはラスネタで繋がることでさらに面白くなるコントライブだったと思います。
忽那さんの口から「まだ、あと2本あるし。まだラスネタじゃないですよ。」という言葉が出たとき、僕自身も、そろそろ次がラストくらいかなぁと思っていたので、良い意味で裏切られました。
この幕間映像が終わる時点で、だいたい90分くらい経っています。そこからあと2本もある。どんだけボリュームのあるライブなんだよって感じですよね。
「配信買ってくれてありがとう。」と二人にお礼を伝えて、忽那さんが去ると「好きに観させろよな。」「ねぇ?」と言葉を交わす二人。
「好きに観させろ」というのも一理あるっちゃあるんですよね。お金を払って観ている以上、観方はもちろん観る側の自由なので、考察をしながら観るっていうのもまた自由だと思います。僕もこうやってつらつらと分析的な視点も交えつつ、感想を書いているので、そういう点では同じ穴の狢的なところがあると思います。
どう観るかは自由ですが、勝手にラスネタに繋がると期待しながら観て、ラスネタが繋がらなかったからといって、ちょっと期待外れに思ったり、マイナス評価をしてしまうのは観る側のエゴの押し付けですし、せっかく面白いものを観たのに、そんな感情でライブの終わりを迎えてしまうのはもったいないですよね。だから、蓮見さんが言うように、余計な考察とかはしないでまっすぐ楽しんだ方が良いんだろうなと思います。
コント7:役者魂(約13分)
●内容
明転すると、「大変なシーンですけどよろしくお願いします。」と頭を下げる上原さんと「一生懸命頑張ります!よろしくお願いします!」と元気に返す吉原さん。会話の内容から、上原さんは監督、吉原さんは新人女優であることが伺えます。
そこに、ADの中島さんとベテラン俳優の園田さんが入ってきます。舞台上にはダイニングテーブルと椅子が置いてあり、これから映画の撮影を開始するという状況です。
園田さんと吉原さんが揃ったところで監督の上原さんが、これから撮影をする二人の喧嘩のシーンの段取り説明をし始めます。そのシーンの中に園田さんが吉原さんにビンタをするシーンがあり、「思いっきりビンタしていただいて。」と説明する上原さん。
ビンタはするていで撮影を行うと思っていた園田さんは、その説明を受けて「殴るのはできない。」と言います。しかし、上原さんと吉原さんは作品のために本当にビンタをしてほしいの一点張り。
ここからビンタをしたくない園田さんとビンタをしてほしい上原さんと吉原さんの押し問答が始まります。
●感想
「役者魂」はめちゃくちゃ好きなコントでした。かなり笑いました。
このコントの中では一貫して「ビンタをしたくない」という園田さんの主張が正しいのですが、周りの人たちが歪んだ意見で、さも園田さんの意見が間違っているように話すから、園田さんが正しいにも関わらず、理不尽に追い詰められていきます。その様があまりにも面白いんですよね。
園田さんには負け役が似合うと話しましたが、このコントもそのひとつで、この役は園田さんにしかできないと思うし、園田さんだからこそここまで面白くなったのだと思います。
そして、その園田さんの相手役の吉原さんもめちゃめちゃ面白いです。
吉原さんは、ことあるごとに「私が女だからですか?」という女性差別を持ち出し、園田さんの主張に対していちいち歪んだ解釈をして、屁理屈で園田さんを追い詰めていきます。
「人って殴っちゃいけないんだよ?」という園田さんに「女は本気で演技しちゃいけないってことですか?」と返したり、「論点がズレるから入ってこないで。」というと「女は議論に参加するなってことですか?」と返したり、園田さんがツッコんでたように、絶対にそんなこと言ってないのに、あまりにも歪んだ解釈するのが、面白すぎました。
自分が吉原さんにビンタされても一向にビンタをしない園田さんに「園田さんがビンタしないなら、僕は殴られる必要はなかった。あんたの身勝手な正義が無益な暴力を生んだんだ。」と理不尽すぎる主張で詰める上原さん。それに対する園田さんの「先に暴力が生まれてただろ。お前が生んだんだよ。意味の分からない暴力を。」という正しすぎるツッコミがめちゃめちゃ面白かったです。
脚本家の飯原さんを交えた4人での多数決の結果を受けて「世間にも3対1でビンタすることになったと発表する」という飯原さんに「誰もこの3対1だとは思わない!俺が1だなんて誰も思わないよ!」と激しく主張する園田さんが面白すぎました。
園田さんが「男たちが数で支配してるだけだと思われて終わりだよ。」というと、得意の「私が女だからですか?」を使う吉原さん。「これはそう!」と返す園田さん。ここで「私が女だからですか?」が正しいタイミングで使われる流れも最高でした。
その後、園田さんのマネージャーの道上さんが登場し、園田さんと吉原さんのキスシーンがあることがわかるのですが、「キスシーンは角度でしてる感じにするんで大丈夫ですよ。」とあっけらかんに言う上原さん。
吉原さんもキスはNGにしていて「キスは嫌です。」とはっきり言います。
園田さんが「キスシーンがていなら、ビンタもていで良くない?」と当然の疑問を投げかけると「やっぱり本物を撮りたくて。」と答える上原さん。「じゃあ、キスもした方が良くない?」というと、「なんでそんなキスシーンやらせようとするんですか?」と問い詰める吉原さん。
どう考えても園田さんの意見が正しいのに、一向に園田さんが勝てないのがホントに面白いんですよね。
「嫌なことは一つもやる必要はないよ。だからキスシーンで実際にキスしてなくても全然正しい。だからビンタもていで良いじゃんってこと。」と正しすぎる園田さんの主張に「どうしてもビンタされたいなら、キスしろってこと?」と返す吉原さん。もう解釈が歪みすぎててめちゃめちゃ笑いました。
最後のリハーサルで吉原さんが園田さんのせいで肩をけがしてしまい、その場にいる全員が園田さんを悪者を見るような目で見ているシーンはあまりにも不憫すぎるし、「もうちょっとだけそばにいてくれないかな」という道上さんへの願いも「そういうのセクハラですよ。」と冷たく突っぱねられて散々な園田さんはもう最高の負け役でした。
この「役者魂」を見終えたあたりで、園田さんの面白さと達者さに脱帽してしまいました。「異世界」みたいに気持ち悪い人を演じてても面白いし、今回みたいに真っ当な人を演じてても面白いんですよね。この人はこれからもっと面白い人になっていくんだろうなとものすごく楽しみになりました。
「役者魂」で園田さんが舞台に出てきたとき、一瞬、東京03の角田さんのような雰囲気を感じたんですよね。園田さんは角田さんのようなコメディスターになれる素質を持っていると個人的に思っています。
「役者魂」はめちゃめちゃ面白いコントで、ダウ90000と園田さんの今後がさらに楽しみになるようなコントでした。
コント8:寂しさ(約25分)
●内容
明転すると、パイプ椅子が並んでいて最前列に座る忽那さんと吉原さん。その後ろの列には園田さんと飯原さんが座っていて、さらにその後ろには蓮見さんと上原さんが立っています。舞台はホールのような場所です。
そこに道上さんが登場。蓮見さんに「自由席です。お好きなとこどうぞ。」と案内されると、園田さんと飯原さんが座っている列の席に座ります。その様子から、蓮見さんと上原さんはスタッフで、その他のメンバーは何かを観に来たお客であるということがわかります。
しばらくすると舞台に「ローマ字でKANAKOと言います。よろしくお願いします。」と挨拶をする中島さんが登場します。
KANAKOこと中島さんが話を始めると、モニターには「人が恋をする理由」という文字が。中島さんは恋愛アドバイザーのような人物で、恋愛の講演会が始まります。
そんな中島さんの話す内容について「これ、聞いてらんなくないっすか?(笑)」などと小馬鹿にしながらツッコミを入れている蓮見さん。次第にツッコミが盛り上がっていくと、中島さんに気づかれ、「なんか文句あるなら聞きますよ。そんなにみんなの前でしゃべりたいならしゃべってください。」と促されます。
それを受けて本当に舞台に上がる蓮見さん。まさか来るとは思わずに戸惑う中島さん。蓮見さんは、中島さんの遮りも聞かずに「人が恋をする理由」について話始めます。
●感想
「寂しさ」はネタの内容的にも尺的にもラストに相応しいと思えるコントでした。「20000」のネタの中で一番、蓮見さんの考えや悪意が色濃く出ているネタだったのではないかと思います。
コントのタイトル通り「寂しさ」や「恋」がテーマになった内容で「人が恋する理由」について、まくしたてるように話す蓮見さんが圧巻です。
そして、その中に笑いの要素として「恋愛アドバイザー」という職業やその講演会を観に来ている人をうっすら馬鹿にしている「悪意」があります。
ダウ90000のネタには「悪意」が含まれていることが結構あります。「旅館裏」の青山学院大学の学生男女6人に対する「飯残せば残すほど面白いと思ってんだ。そんな奴ら。」もそうですし、3つめの幕間映像の内容とかもまさにそうですよね。(実際にはそうじゃないかもしれないけど、多くの人が思っている「偏見」と言い換えてもいいかもしれないです。)
「悪意」や「偏見」は観客の中にもある程度共通の意識が無いと、笑えない要素にもなってしまいますが、ダウ90000はこの「悪意」の調整具合が絶妙ですよね。「恋愛アドバイザー」というちょっと胡散臭い職業とその講演会に来ている観客をターゲットにしたのは面白かったです。
そもそも、KANAKOさんのような人の職業は「恋愛アドバイザー」で合ってるんですかね?「恋愛カウンセラー」とか「恋愛コンサルタント」とか似たような肩書のものがいっぱいあって、よく実態が掴めないところも含めて、胡散臭い職業だなと思っています。
観客にも「恋愛アドバイザー」について、共通の認識があったからこそ、会場であそこまで笑いが起こっていたのだと思います。
そして、その胡散臭い「恋愛アドバイザー」を演じる中島さんの演技力が見事でした。僕はもちろん恋愛講演会のようなものには行ったことが無いので、本物の恋愛アドバイザーを観たことはないのですが、皆がイメージする「胡散臭い恋愛アドバイザー」を話し方や所作でうまく表現していたと思います。変にこなれた感じとか素晴らしかったですね。
話す内容も全体的に薄っぺらくて、序盤のパワポの作り方が下手すぎるのとかも面白かったですね。「色がつく」だけで1枚使ってるのとか、蓮見さんのリアクションも含めてめちゃめちゃ笑っちゃいました。
蓮見さんは人が恋するのは「幸せになるためではなく寂しいから。」「人が一人でいる状態は寂しい。ベースがマイナスで恋をすることによってプラマイゼロに持って行くだけ。だからプラスになれるものではない。寂しさを埋めるひとつの手段でしかない。」と話します。
お笑いのネタの中のセリフですが、この部分は核心的で説得力がありました。おそらく蓮見さんが本当に思っていることなのだと思います。
「寂しさ」のコントは、笑いもたくさんあるのですが急にこんな感じで、核心的なセリフが出てきます。観客も笑うときは笑うんですけど、蓮見さんが話し出すと聴き入ってシーンとなって、会場内に笑いと静寂がスイッチして訪れる感覚が不思議でした。
客席のKANAKOのファンからの「KANAKOさんの邪魔しないで。」「みんなKANAKOさんのファンで、あなたのファンではない。」という声に対して、「(KANAKOのファンじゃなくて)恋愛のファンじゃない?」とか「頭脳で恋愛してるやつが幸せになれるわけないからな。」とか「何かが胸に響きたいんだよ。君たちは。」とかクリティカルですよね。そんなKANAKOのファンたちを「奪えそうな客層」と表現するのがめちゃめちゃ面白かったですね。
蓮見さんは、ディベートが強くて、弁が立つし、言葉のひとつひとつに説得力があるので、詐欺師とか教祖とかになったら本当にやばそうだなと思いました。その才を悪いことに使わずに、笑いに生かしてくれて感謝です。
そして、蓮見さんはKANAKOのファン吉原さんに話を振り「一人でユニクロにヒートテックを買いに行くこと」の寂しさを説き始めます。
蓮見さんが話す「一人でヒートテックを買いに行くこと」のひとつひとつの情景描写が細かくてリアルすぎるんですよね。「去年の出したらペラッペラだった」とか「マネキンがもう冬で取り残された感じがする」とか「みんなのために広くて明るいユニクロに独りぼっちを感じて、外に出たらもう真っ暗」。極めつけは「ヒートテックと中の厚紙を固定する透明のフックみたいなのが絨毯の上に落ちて、それを探すために絨毯の上を手で払って、見つけてちょっと嬉しいけど、結局一人」とか。
描写が細かすぎて蓮見さんの実体験に基づいていることなのかなと思います。もし、想像だったらちょっとすごすぎます。実体験だったとしても、この一連の描写を「寂しさ」の一例として引き出しにしまっているのがすごいです。
KANAKOのファンたちは「一人でヒートテックを買いに行くこと」を寂しくないと言いますが、蓮見さんは「じゃあ、自分のお母さんがこれやってたら?」と問いかけます。
普段、自分が一人でしている何気ない行動でも、それを自分のお母さんに置き換えて考えると途端にその行動が寂しいものに思えてしまいます。これにはハッとしたというか、共感したというか。
僕はマックに行ったときに、一人でハンバーガーを食べている年配のお婆さんやお爺さんを観ると無性に寂しさを憶えることがあります。
高校生のカップルや友達の集団、子連れの家族、パソコンを開いて仕事をしている人たちなどで賑わっている中、ポツンと一人で白髪のお婆さんがゆっくりとハンバーガーやポテトを食べている姿を見ると、いつか自分の親もこうやって一人でマックに来るのかなと想像してしまい、寂しくなって泣きそうになります。マックが色んな客層が来て賑わっている場所ということやジャンクフードと年配の方というミスマッチ感も相まって、より寂しさを感じているのだと思うのですが、これと似たようなことだと思います。
僕自身、一人でマック行くことについて寂しいとは思っていなかったのですが、自分の親に置き換えてみるとめちゃめちゃ寂しいですよね。これを蓮見さんは「普段、見て見ぬふりしている寂しさ」だと言います。
この部分は刺さりまくってしまいましたね。コントを観ているはずなのに、ほんのり寂しい気分になりました。
徐々に蓮見さんになびき始める講演会の観客たち。蓮見さんは一人で来ていた道上さんをターゲットに「帰ったら家真っ暗で、右手のポケットから今日の半券出すだろ。ごみ箱捨てようと思ってゴミ箱行くんだよ。すると元々入ってた生ごみの臭いが鼻をかすめるんだよ。」と、この後の道上さんが直面するであろう「寂しさ」を細かく描写し始めます。
「細かく描写するのやめてあげてください。」という中島さんに「お前らの解像度が荒いだけだよ。」と返す蓮見さん。これに関しては、どう考えても蓮見さんの解像度が高すぎると思います(笑)。
蓮見さんは「帰ったら家が真っ暗」というのを「寂しさ」の象徴と考えているようで、ことあるごとに帰ったら家が真っ暗にしたがります。田舎の人が結婚が早いのは社会に出るのが早いとか出会いが少ないとかではなく、街灯がなくて真っ暗で、暗くて怖くて寂しいから結婚するんだと言い切ります。これも極論すぎて面白かったです。
「恋をしてれば寂しくない」という中島さんに対して「恋をしていても寂しい」ということの証人として蓮見さんは上原さんを舞台に上げます。
この上原さんの寂しいエピソードも相変わらず描写のひとつひとつが細かすぎるのですが、そこに上原さんの本来のキャラクターも相まって、聞いてるとめちゃめちゃ寂しくなるんですよね。
「今の恋人と出会った大学生のときバイトしてたコンビニがつぶれてトランクルームになっちゃった」とか「通ってた高校がなくなってニトリなっちゃった」とか「高校の頃友達がいなくて本読んでたら、ふざけてたサッカー部がぶつかってきて頭をけがしてその傷が今も残ってる」とか「高校の頃好きだった子が、Pocochaで配信やってたんだけどズルしてアカBANくらってた」とか全部細かいし、寂しすぎるんですよね。
「手術後」では「ケチ」、「大親友」では「優しさ」の行動描写のひとつひとつの細かさや解像度の高さに驚きましたが、このコントでもそれらと同じように「寂しさ」のひとつひとつの描写の解像度の高さに感心しました。
今の恋人との渋谷のハロウィンの話とかも、寂しいストーリーの描写がリアルすぎて本当にそういう目にあった上原さんが光景が想像できてしまうんですよね。これは上原さんが持っているオーラ的なものも影響していると思います。
仮装が「クインテットの人間の人(アキラさん)」っていうのも笑いました。僕らの世代は『ゆうがたクインテット』を観てたと思うので、僕ら世代の人なら刺さる固有名詞だったと思います。
「通りすがりの外国人とハイタッチして、ハイタッチが強いから手に痺れだけ残って、その痺れを握りしめたまま家に帰って、帰ったら家真っ暗で。」ここも描写の細かさが行き過ぎてて、面白かったですね。
好きな芸人が「うしろシティ」であることを「どうにもできない寂しさ」と表現してるのもツボでした。
最後にKANAKOの一番のファンかと思いきや、KANAKOを一番見下している忽那さんがKANAKOをかばうかのようにボロクソにけなすシーンも最高でしたね。この役も忽那さんだったからより面白くなっていたように思います。
「KANAKOさんの文章はすごく学があるフリをしていて、それが瞬時にばれていることにも気づいてない。この人に負けることはないって、安心して応援できるんです。人前でしゃべるときも同じで、ちやほやされて生きてきたんだろうなぁっていうしゃべり方。周りが機嫌取ってきたんだろうなぁっていうしゃべり方。それがもうかわいくて。でも、こういうのって本人が気づいた瞬間に終わっていくから。だから、今、一番生々しいし。今を見逃したくないんです。だからお願い。あんまり気づかせるようなこと言わないで。」淡々とひどすぎることを言う忽那さんが面白すぎました。
蓮見さんが「お前ひどすぎるよ。俺でも引くわ。」と言っていますが、このひどすぎるセリフを書いているのは蓮見さんなんですよね(笑)。最後の最後に蓮見さんの凝縮された悪意を観れて、最高に面白かったです。
「寂しさ」や「恋」というダウ90000らしいテーマ設定の中に、ダウ90000の武器のひとつの「笑える悪意」がブレンドされていてめちゃめちゃ面白かったです。でも、ただ笑えるだけじゃなくて、ところどころに核心的で刺さるセリフがあったりして、今までとはまた違いつつも、ダウ90000の魅力がしっかりと詰まった素晴らしいコントだったと思います。尺的にも今後このコントをテレビや別のライブなどで披露することは無さそうなので、生で観ることができて良かったと心から思います。
まとめ
「20000」で披露されたコントについて、ひとつひとつ感想を書いていきましたが、改めて振り返ると、本当に素晴らしい単独ライブだったなと思います。どのネタもお世辞抜きで最高に面白くて、このライブを「ザ・スズナリ」で観ることができて本当に良かったなぁと思います。
「20000」はコント8本+幕間映像3本で約140分の公演時間でした。1回目の単独ライブ「10000」を振り返ってみると、コント6本で公演時間は70分でした。ライブの名前だけでなく、ボリュームも倍になっているのはさすがにびっくりです。当初の予定では100分ほどになる予定だったとのことですが、それを大幅に越えて140分。蓮見さんが「20000」にどれだけ気合いを入れて臨んでいたのかがわかります。
公演時間は「10000」の2倍になっていましたが、その面白さは「10000」のときよりも2倍にも3倍にもなっていたように思います。蓮見さんの書くネタが面白くなっていることはもちろんなのですが、その他の7人の表現力や面白さが「10000」の時と比べると段違いにパワーアップしていたように思います。8つのコントの中でメンバー全員に見せ場があって、各々がキャラクターを活かして、笑いを取っていく姿を観て、嬉しくて最高にテンションが上がりました。
8人が舞台に揃った時にはオールスターが全員集合したようなワクワク感や期待感があり、舞台上での7人の存在感が一段と増していたような気がします。
ダウ90000は蓮見さんの才能が突出しているあまりに、ワントップと思われがちですが、この「20000」の公演を経て、そうでないことが証明されたと思います。これから他の7人もどんどん才能を開花して、活躍の場を広げていくんだろうなと感じました。
メンバー全員面白かったのですが、個人的にはやはり園田さんがMVPだと思います。どのコントでも存在感がありましたし、絶対に笑わせてくれるだろうなという安心感のようなものもありました。全体を通して、本当に面白すぎましたね。面白いキャラクターを演じる力が圧倒的だし、その幅がどんどん広がってきているように思います。観客側も園田さんが出てくると「何か面白いことが起こるぞ。」とちょっとワクワクしているのを感じるんですよね。
その期待を超えて、爆笑を取っていく園田さんの姿は最高にコメディスターでしたし、これからどんどん面白い人になっていくんだろうなぁと今後がとても楽しみになりました。
「10000」と「20000」のネタ内容を比べると、個人的には「20000」の方がダウ90000の濃度が濃くなっていると感じました。
適切な例えかわからないのですが、ダウ90000を「オレンジ」とすると、「10000」は「バヤリースのオレンジジュース」で「20000」は「果汁100%のオレンジジュース」という感じです。
オレンジジュースとしてはどちらも美味しいけど、オレンジを濃く感じるのは「果汁100%のオレンジジュース」なように、「20000」の方がダウ90000の面白さや魅力をより濃く感じることができるようなライブだったと思います。
蓮見さんが「20000」については「スズナリでやるということもふまえて、これまでとは違ったネタにした。」と話していました。
たしかに、これまでのネタよりもダウ90000の根底の部分にある「会話のテンポや間の取り方」「セリフの内容やその言い回し」「面白いキャラクターやそれを表現する演技力」などの演劇的な部分で笑わせるネタが多かった気がします。
先ほどの「10000」よりも「20000」の方が、ダウ90000の面白さや魅力をより濃く感じることができたというのは、これが影響しているのではないかと、個人的には思っています。
僕は「ザ・スズナリ」に行ったのが、今回が初めてだったので「スズナリらしさ」みたいなものには正直ピンと来ていないのですが、逆にこの「20000」が僕の中での「スズナリらしさ」になりました。
ちなみに、公演時間が長いから、事前にお手洗いは済ませておいた方が良いとあれだけ忠告されていたのに、僕は「仕事着」が始まったくらいから尿意を感じていて「これはやばいかも…。」と内心焦っていました。
ただ、公演中にお手洗いに行くことはありませんでした。気が付くと尿意がなくなっていたんですよね。尿意を忘れるほどに面白くて、観入っていたんだと思います。生理現象を超えるくらいに最高に面白い単独ライブでした。
このライブを生で観れて本当に良かったと思います。
最高のライブを見せてくれたダウ90000。そして、パソコンが壊れた蓮見さんにパソコンを譲ってくれた蛙亭のイワクラさんに多大なる感謝を送ります。
次は「30000」
「20000」の千秋楽を終えると、次の単独ライブの開催が告知されました。
次の単独ライブの開催は来年の春。ライブ名は「30000」。
会場は第5回演劇公演『また点滅に戻るだけ』と同じ、本多劇場です。
演劇公演で立った本多劇場の舞台に、コントの単独ライブで戻ってくるというのがファンとしても嬉しいですね。
ダウ90000は基本的に単独ライブや演劇公演の千秋楽の日に、次の単独公演の告知をしてくれるのですが、これがファンとしてはとてもありがたいです。これを楽しみに生きていこうと思えます。
蓮見さんは「30000」の開催にあたって「公演時間はまだ言わないでおきますが、20000より長くなることはないと思います!お楽しみに!」とコメントしています。「10000」から「20000」で公演時間が2倍になったので、「30000」は「10000」の3倍で210分になったら面白いですよね。(さすがにそれは長すぎるのでないとは思いますが…。)
個人的に「30000」は「20000」とはまたネタのテイストを変えてきて、2024年の「キングオブコント」にも照準を合わせたゴリゴリにお笑い寄りのコントが多くなるのではないかなと思っています。「演劇の聖地」の本多劇場でゴリゴリのお笑いコントをやるっていうのも面白いですよね。
今年のキングオブコントでは惜しくも準決勝で敗退となり、悔しい思いをしていると思うので、来年は今年よりもさらに力を入れて、キングオブコントに臨むのではないかと思います。
ダウ90000を誰かに紹介するときに「8人組で演劇をやってて、劇団なんだけど、コントとか漫才もやってて、芸人みたいで…。」とうまく説明できないことがあるので「2024年のキングオブコントで優勝した8人組」と紹介できるように、来年のキングオブコントは優勝目指して頑張ってほしいですね。
ダウ90000は地方で単独公演をすることを現在の目標のひとつにしているとのことですが、キングオブコントに優勝すれば、今よりも知名度が上がって、地方巡業もできるようになってくると思うので、目標のためにもぜひ優勝してほしいと思っています。
そんなことを思いながら「30000」の開催を楽しみに待ちたいと思います。まずはチケットが取れるかが不安なところではありますが、チケットが手に入れられるように、今からたくさん徳を積みまくります。
おわりに
はたして、ここまで読んでくださっている方はいるのでしょうか。もしすべて読んでくれている方がいらっしゃったら、最後まで駄文にお付き合いいただき本当にありがとうございます。
「20000」を観終わって、あまりに面白かったので「20000」の感想を20000字で書いたら面白いかなと思って、この記事を書き始めました。
ただ、書いているうちに、そういえばちょうど1個前の単独ライブ「10000」で初めてダウ90000を観たから、自分がどんな流れでダウ90000を好きになり「20000」を観に行くに至ったか振り返りたいな。ダウ90000を知らない人にもダウ90000を知ってもらえたら良いな。など思って書いていたら、20000字の予定が倍の40000字にまで膨れ上がってしまっていました。
「20000」の感想の部分だけに絞っても28000字程あるので、当初のコンセプトはもう有って無いようなものです。「20000」の公演時間が予定の100分から増えて140分になったとのことだったので、それに合わせて、20000字だった予定を28000字に増やしたということにさせてください。
ちなみに、40000字は文系科目の卒業論文の目安文字数です。たしかに、僕もここまでの文字数の文章を書いたのは卒論以来です。
初めは、ダウ90000を知らない人にもこの記事を通して知ってもらえたらなと思っていましたが、改めて、記事を見直してみると、ダウ90000を知らない人がこんな記事読むわけないですね。でも、良いんです。途中からもう自己満足のつもりでした。
「20000」がとても面白くて、この気持ちを、自分が何をどのように面白いと感じたのかを、言葉にして残しておきたかったんです。そして、そもそも自分はなぜダウ90000を好きになったのか、それをこのタイミングで振り返って、改めて、文字に残しておきたいと思いました。
なので、この文章自体は正直読んでもらわなくても大丈夫です。じゃあ、公開しなくても良いのではないかと思われるかもしれませんが、そうではないんです。「20000」の配信はなにがなんでも絶対に観てほしいんです。本当に本当に面白いので。
「20000」で披露されたネタはほとんどが10分以上の長尺コントですし、何よりも「ザ・スズナリでやることを踏まえてつくられたネタ」です。なので、今後テレビや他のライブなどで披露される可能性は低いと思います。
(セットや小道具的にも他のライブでやるのは難しそうですしね。)
だからこそ、この機会に絶対観ておいてほしいんです。
最後にまた「20000」の配信チケットのURLを載せておきます。
▼「20000」の配信チケットはこちらから!
https://pia-live.jp/perf/2340225-001?aetpia
視聴期限は【12月24日(日) 19:00】(クリスマスイブ)までです。
今のうちに買っておけば、期間中は何度も見返すことができます。
僕はすでに各コント3回くらい観直しています!期間中は最低でもあと2回は観ると思います。本当にオススメなので!ぜひ!
観たら、40000字の記事を書きたくなるくらい面白いですよ。
この記事をきっかけに「20000」を観てくれる人が増えたら嬉しいです。
観たらきっとダウ90000にハマると思います。
ダウ90000を好きになるのに遅すぎることなんてないですよ!
次回の「30000」を観たら、次は30000字の記事を書こうかなぁ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?