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「この曲なんだろ?」楽曲検出の都市比較をShazamデータから可視化してみる

いつでもどこでも世界中のヒット曲が聴ける時代ですが、データから見えてきたのは、日本国内でも地域によって人が気になる曲は違うようである、ということでした。

「この曲なんだろう?」のShazamとは

今回の研究では、楽曲検出アプリShazamのオープンデータをPythonで取得し、国内全50都市分の検索ランキングデータから「東京と他の都市で検出される楽曲の違い」を可視化してみました。

Shazamはカフェや商業施設などのノイズの多い場所でも、「この曲誰のなんていう曲だろう?」と気になれば、アプリを起動してスマホのマイクで拾わせれば、音のわずかな断片から楽曲を検出できる優れた技術です。

現在ではApple傘下のためiPhoneには標準装備されていますね。

Shazamではこの「ユーザーが偶発的に興味をもった楽曲を、スマホに検出させる」というユニークな行動が、「どの楽曲について、どの都市から、どれくらいなされたか」というデータを持っていて、APIとして公開しています。

WEBサイトからもcsvファイルを都市ごとに地道にダウンロードすれば近いことができますが、手間隙がかかるし、都市別だとTOP50までしかDLできないようです。

今回当研究室ではShazam側で設定している日本国内全50都市ごとに、TOP200のデータをPythonでコードを書いてループ処理で取得し、分析を行いました。

似ている東京と大阪の検出傾向

次の散布図は、東京の検出ランキングと、その他の検出ランキングの違いを視覚化したものです。対角線上に点が集まっているほどランキングが似ていて、離れるほど異なる、ということになります。

ご覧のように一番左の「東京と大阪」は検出される楽曲が似ています。東京で上位の曲は大阪でも上位である傾向が強い。

たとえばツユさん「アンダーキッズ」は東京で134位、大阪で132位で検出されていて、ほぼ対角線上に位置し、ほとんど同じ順位です。

ちょっと異なる東京と福岡

一方「東京と福岡」はやや異なります。右下に現れるエド・シーランさん「Thinking Out Loud」は福岡では73位ですが、東京では168位まで後退します。

エド・シーランさん「Thinking Out Loud」は福岡では73位、那覇では88位ですが、東京では168位まで後退します。

かなり違う東京と沖縄

そして「東京と那覇」に至ってはかなり違います。AYANEさん「泣きたい夜」は那覇では32位ですが、東京では193位と、ギリギリ200位圏内です。

AYANEさん「泣きたい夜」は那覇では32位ですが、東京では193位と、ギリギリ200位圏内です。大阪ではランキングに入っていません。

均質化する情報環境で生まれる多様性

ネットとSNSの普及で情報は瞬時に行き渡り、スマホとサブスクのおかげで世界中のヒット曲がいつでもどこでも聴ける時代になりました。ある意味で均質な情報環境です。

にもかかわらず、日本に住む人全員が同じ様なヒット曲を聞く様になった、というわけではないようです。

東京や大阪といった大都市を行き来していると、確かにターミナル駅周辺はどこでも見かける衣食住の大手ブランドが並んでちて風景が似てきているように思えますが、見えにくい部分ではバラつきが大きくなっているのかもしれません。

環境や住む場所が違えば、興味関心や気になる曲も異なる。

思えば90年代の「渋谷系」も、渋谷の外資系CDショップや中古レコード店でのみ特徴的に売れていた音楽を総称して誕生したわけです。

当時大阪の郊外の冴えない高校生だった私からすると、「そんなオシャレな音楽のCDどこ行ったら売ってるの...?」という世界でした。

情報格差や物理格差が大きかった。

でもいまはネットのおかげで「あの曲、ウチの街では聴けないんだよなあ」ということはありません。

にもかかわらず、地域的な違いが生じている。

情報や物理の格差が解消されたからこそ、人は興味のあるもの、聴きたいものへ向かうこともある。

むしろ今や「福岡系」「那覇系」などが同時多発的に出現している可能性もあるわけですね。

環境変化がもたらした、考えてみれば当たりの現象かもしれませんが、こうしてデータで描き出すと、新時代の生態系を目撃しているようでワクワクします…!

以上、徒然研究室でした。


トップ画像はお絵かき人工知能Midjourneyで生成した画像に、当研究室作成のグラフを合成して作成したものです。

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