保護者同伴でお願いします。【#23】
病院には様々な人が訪れます。脳神経外科の外来にも様々な方が通院してきます。いろいろなことから目を背けたくなる時もあります。しかし目を背けても、変わらないものは変わりません
脳神経外科外来には、あきらめるとあきらめないがあります。
脳動脈瘤という言葉を聞いたことあるでしょうか?脳の血管の一部がお餅のように膨れてしまっている状態です。血管の壁が薄くなっていることも多いです。破裂すると皆さんがよく知っているくも膜下出血を起こします。約3人に1人は亡くなります。血圧が高いと破裂のリスクが上がります。破裂の予防という意味で、血圧のコントロールはとても重要です。
脳ドックで脳動脈瘤が見つかった70代前半のトキコさん。
来院時は血圧を必ず測定してもらいます。その血圧がいつも高いです。
血圧が高いことを指摘すると、血圧が高いのは病院の機械だけと言います。そういうこともあります(白衣高血圧)。
「家で血圧を測定して血圧手帳に記載してほしい」と伝えました。しかし何度か血圧手帳を渡してお願いしても外来には持ってきてくれません。
以下、外来でのわたしの説得です。
わたし「今日は血圧手帳持ってきましたか?」
トキコさん「私たち夫婦二人で住んでるしねぇ、難しいのよね。」
わたし「いやそれ、理由にならないでしょ、認知症予防にもつけましょうよ。」
トキコさん「夫も高血圧なのよ。それで血圧手帳もらってきてるのよねぇ。夫婦そろって嫌ねぇ。」
わたし「なら、一緒に血圧はかりましょうよ、夫婦仲良く会話も弾みますよ」
トキコさん「お父さんは毎日血圧測ってるのよ。朝と夕方2回も。すごいわねぇ」
わたし「なら、なおさら一緒に血圧はかりましょうよ」
トキコさん
「いや、わたしはもうあきらめたから。」
(5秒ほど無言)
わたし「……(ひらめいた)。今度おとうさんと一緒にきてください。」
トキコさん「えっ・・・、え?」
・人それぞれ信念があります。血圧を測らないという信念(そんなものがあるかどうか知りませんが)があるのなら仕方ないと思います。
・わたしが簡単に諦めてしまったら、血圧をしっかり測っている旦那さんにも、全国の内科の先生にも申し訳が立ちません。
・《あきらめたくないと言う家族に、諦めてくださいと伝える》、この鬼のような所業、わたしの仕事に含まれます。
あなたが重症のくも膜下出血になったとします。家族は、諦めたくない、と思うかもしれません。なぜ血圧を測るよう説得できなかったんだろうと家族が自問自答するかもしれません。そんな悲しい未来は嫌です。
日本高血圧学会もっと頑張れ!!!学会員じゃないけど。
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