専門家というのはとても大事です。誰かを助けるから専門家なのです。【#21】
病院には様々な人が訪れます。脳神経外科の外来にも様々な方が通院してきます。手術を行った後に認知機能が下がる方がいます。会話がかみ合わない方がいます。いろいろな方がいますが、楽しく明るく笑顔でいようと取り組んでいます。
脳神経外科外来では、声が枯れていく様子 をリアルタイムで見ることができます。
癌などの悪性腫瘍があると血液が固まりやすくなります。血液の固まり(血栓)がぽろぽろと飛んで、脳の血管をふさぐとその先に血液が届けられません。脳細胞の機能は停止します。ある程度の時間が経つと脳細胞は壊死し脳梗塞となります。
【脳細胞の機能は停止している、しかし脳梗塞になっていない部分が、ある程度ある】と判断した場合、血栓回収術と言ってカテーテルで血栓を物理的にとり除く手術をおこないます。
ウエダマさん、80代前半の男性、肺癌の治療中でした。ある時、血栓が脳の血管を閉塞させました。血栓回収術を行い、幸い血管は再開通しました。
血栓回収後、認知機能検査(HDS-R)では22/30点(認知症疑いギリギリレベル)、麻痺などもほぼ改善し自宅退院となりました。
その後の外来での話です。
心配そうに奥さんと息子さん夫婦が付き添って診察室に入ってきました。
なにやら不穏な雰囲気です。
診察室に入り、椅子に座るか座らないかでウエダマさんは大きな声で話しだしました。
ウエダマさん「つれづれ先生、運転がしたいんじゃ。」
家族が後ろで全力で首を振って手をばつにしています
ウエダマさん「スーパーまで車で15分かかる。妻は免許ない。運転がしたいんじゃぁ。」
家族「脳梗塞になる前から何度か事故を起こしています。家で何度も話し合ってるんですけど怒鳴りあいの喧嘩になっちゃうんです。私たち隣の家に住んでいるのでスーパーまで連れていけます。先生説得してください!!」
わたし「脳卒中ドライバー評価(J-SDSA)合格できていないから危ないよ。」
ウエダマさん「あぁ????」
わたし「(気合いだーーーー)」
30分以上話しあった(叫びあった)結果
説得できませんでした。
わたし「とりあえず脳卒中ドライバー評価を再度受けて考えよう。それでだめならあきらめよう」と伝え、結論を先延ばしにしました。
ウエダマさんの難聴はなかなかひどく、会話をするために大声を出し続けたわたしの声は枯れ果てていました。わたしよく頑張ったと思います。
家族は「絶対受からないですよね!!」って言ってたけど、ぎりぎりかもしれない。だめならスペシャリストにお願いしよう。
・患者さんと家族の希望が食い違う時、決定を先延ばしにすることが正解、ということが多々あります。
・家族が患者さんを心配しているのに、逆に喧嘩になるとか意味わかんないです。
・先延ばしです。家族は患者さんの言葉を否定せず「こんど聞いてみようね」といって医師に丸投げすればいいと思います。
・主治医は頑張ってみますが、だめなら専門の科にお願いです。
・みんなが幸せになるための専門家です。なんでも専門って大事です。
・早く完全自動運転の車が実用化するといいなと思います。
・診察室から大声が聞こえても、決して怒っているわけではないです。
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