世界はそれをアイと呼ぶんだぜ(by サンボマスター)が診察室で流れた日【#20】
病院には様々な人が訪れます。脳神経外科の外来にもいろいろな方が通院してきます。予防の重要性を伝えないといけない人がいます。予防とは、生活習慣の改善という名の苦行です。苦行を乗り越えようと、一歩一歩努力している人がいます。
脳神経外科外来では、努力の過程を見守ることができます。
脳動脈瘤というものがあります。脳の動脈の一部分がコブのように膨らんでいることを指します。これが破裂するとくも膜下という場所に出血します。
くも膜下出血は、大体3人に1人は亡くなります。また社会復帰できるまで回復する方も3人に1人です。
日本人の男性のデータで、喫煙、高血圧、過度の飲酒が、くも膜下出血のリスクという前向き研究の報告があります。大量飲酒+喫煙、大量飲酒+高血圧などコンボになるとリスクは大幅にあがります。
*ここでの大量飲酒は150g/週(大体 缶ビール350ml 10-11本 /週)
なので、本人のためにも経済的にもこの3つのリスク因子はなるべく減らしたほうがよいです
脳動脈瘤は大きくなったり形が変わったりすることがあります。そのような場合、動脈瘤が破裂してくも膜下出血になる危険性が高まります。手術が必要となることもあります。それらを見逃さないため定期的な画像検査が必要です。
脳ドックで動脈瘤が見つかった60代男性ウラさん。奥さんと一緒に診察室に入ってこられました。
わたし「ウラさん、禁煙したんですか?素晴らしい一歩ですね。」
ウラさん「本当にもう煙は吸ってない。だからもう大丈夫やろ?」
わたし「そういえば、お酒も好きでしたよね。お酒はどの程度たしなんでるんですか?」
ウラさん「そんなに飲んでない。1日に缶ビール2本・・・・・」
奥さん「ジーーーーーーーーーー」とウラさんを見つめています
ウラさん「3本・・・・、4本・・・・・5本くらいかな」
わたし「5本ですか?」
奥さん「ジーーーーーーーーーーーーー」
ウラさん「それと焼酎をちょっと・・・・」
わたし「酒豪ですね」
ウラさん「ええ・・・・・・一般的には。」
わたし(一般的じゃない酒豪ってなんぞ??)
奥さんの「ジーーーーーーーーーーーーー」と見つめる視線から、春なのにセミの鳴き声が聞こえました。
きっとわたしにお酒を控えるよう言って欲しかったんでしょうけど、ウラさんの悲しそうな顔を見てたら何も言えませんでした。次回の外来でお酒の量が減ってなければ指摘しよう。タバコをやめたという一歩で今日は満足です。
奥さんの眼(eye)はウラさん、あなたへの愛ですよ。
わたしの脳内では、セミの鳴き声とともにサンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」がただただ流れていました。
※この歌の好きなフレーズを置いておきます。
「悲しみで花は咲くものか!」
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