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【論文シリーズ】組織の変革期を乗り越えるには?:リーダーシップとエンゲージメントの関係性に注目する
はじめに
昨今、急速な経済環境の変化や競争の激化の中で、多くの企業がM&A(合併・買収)を通じた成長戦略を採用しています。しかし、その過程で異なる企業文化や業務プロセスの統合に失敗し、従業員のエンゲージメント低下や離職といった問題が生じるケースも少なくありません。特に、組織再編やリーダー交代が行われる場面では、従業員に不安やストレスが生じやすく、これが組織全体のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
こうした課題に対して重要な鍵となるのが、変革型リーダーシップです。本記事では、林祥平氏による『変革型リーダーシップが職務ストレスとエンゲージメントに与える影響』の研究を基に、変革型リーダーシップがどのようにして従業員のワークエンゲージメントを影響を与えるのかを見ていきます。
(出所)
林祥平 (2024)『組織変革時の変革型リーダーシップが従業員のワークエンゲージメントに与える影響』明治学院大学『経済研究』第168号、1-16頁。
1. 変革型リーダーシップとは?
変革型リーダーシップは、以下の特性を持つリーダーシップスタイルです:
理想的な影響力:
リーダーとしての信頼と尊敬を得る。インスピレーションの提供:
明確なビジョンを示し、目標に向かうモチベーションを高める。知的刺激:
従業員に創造的思考や新たな視点を促す。個別対応:
従業員一人ひとりのニーズや能力に応じたサポートを行う。
このスタイルは、従業員の自己実現を支援し、組織全体の目標達成に寄与すると言われています。
2. 研究の背景と実施内容
本研究では、変革型リーダーシップが従業員のワークエンゲージメントに与える影響を解明するため、以下の手法で調査を行いました:
研究目的:
変革型リーダーシップが情緒的コミットメント(従業員が組織に対して持つ感情的なつながりや愛着心)や職務ストレスを通じて、従業員のエンゲージメントにどのような影響を及ぼすかを特定。調査対象:
日本のデジタルマーケティング企業の従業員126名を対象に、組織再編期のリーダーシップの影響を調査。
3. 研究結果と実務への応用
本研究では、変革型リーダーシップが従業員のワークエンゲージメントに与える影響を検証する中で、新たに以下の知見が得られました:
情緒的コミットメントの重要性:
変革型リーダーシップは、従業員の情緒的コミットメントを高め、それを通じてワークエンゲージメントを向上させることが明らかになりました。職務ストレスの媒介効果:
職務ストレスはワークエンゲージメントに直接的な悪影響を与えないものの、情緒的コミットメントを通じて間接的に影響を及ぼすことが確認されました。職務ストレスに直接的な影響を与えない:
変革型リーダーシップが職務ストレスに直接的な影響を与えないことが示されました。ストレスは変革時には必ず発生するものと捉え、効果的な管理策やマネジメントを講じることが求められます。
これらの結果を踏まえ、以下のような取り組みが実務において重要と言えるでしょう。
リーダー育成プログラムの導入:
変革型リーダーシップに適性のある管理職を選び、研修プログラムを通じてリーダーの育成に努める。管理職による情緒的コミットメントの向上:
変革時だけではなく、平時において情緒的コミットメントを強化する取り組みを行い、変革に備える。
結論
本研究は、変革型リーダーシップが情緒的コミットメントを通じてワークエンゲージメントを高める重要な役割を果たすことを明らかにしました。
変革期における課題を克服し、組織全体の成果を引き上げるためには、リーダーが従業員一人ひとりの感情や信頼関係を重視し、具体的な支援を行うことが求められます。さらに、これらの取り組みは変革期だけでなく、平時から始めることで、従業員のエンゲージメントを長期的に維持し、組織の競争力を高める基盤となることでしょう。
P.S.
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