見出し画像

夢の話(7)


いつかみた夢


「なので、あなたがある程度ご存知の前提で、お話させていただきます。」

こうなると、ある程度 “ご存知顔” で聞かないといけなくなる。
話しながらサラリーマンと私は歩き出す。
さっきのメダルゲームのコインは
もちろん預けてきた。
錆だらけの『KOKUYO』のスチールロッカーの中に。


「私達は1960年代に、この国と国交を開始しました。今もご覧の通りまだまだ発展途上ですが、
ここだけが異質ですよね」

異質と認めると言うことは、
はなから異質なものを意図的に作った。というわけか。
やっぱり何か隠している?

私は話を聞きながらヒントを探す。

最新の電子制御で管理された遊園地…
人里離れた山の中、
外国人、
日本の官庁…

空中ブランコの映像は、
今度は宇宙空間を映し出している。
七色に光るビッグバンの閃光の後、光の矢が降り注いでいた。

2階建てのメリーゴーランドの横を通る。
剥製の様な動物たちが、音もなく廻っている。
目を凝らしよく見ると、
瞬きをするもの、
首を傾げるもの、
手足を動かすもの、
気持ち悪いほどリアルに作り込まれている。

シマウマ、ゾウ、ライオン…
ではない。
なんだろうか?少し違和感がある動物達…

頭がしまうまでお尻が茶色の馬、

黒っぽいアヒルのような…目つきの悪いカモメのような…ハシビロコウのような大きい鳥、

象…じゃない。牙がめちゃくちゃ長い
毛むくじゃらの…マンモス?

目つきの悪い野犬みたいな…狼?

見上げると2階部分は、
ジュラシックパークのように
ティラノサウルスやプテラノドン、
ブラキオサウルス、ステゴサウルス…
リアルなミニチュアサイズの様々な恐竜達が
その手足をモゴモゴと動かしながら回っている。


なんで普通に可愛い動物で作らなかったんだろう? 
白熊、フラミンゴ、かぼちゃの馬車、とかさ。
おまけに、目開けたりもぞもぞしてるし、
気持ち悪いし、手ぇ込みすぎ!

どんだけ電気代かかってんの??
…全く! 省エネとか全然考えてないのかね?
今月の電気代、うちなんて2万8000円だったのにさ!


「…まあそこをクリアするべく。っていうところはありますね」


急にサラリーマンに話しかけられて
何の事か分からなかった。
私は、心の声をまた口に出してしまったのではないかと思い、
このサラリーマンが、私の何に対して反応したかを
必死に思い返す。

『悪趣味な…』ってくだり
ーいや違うな。そもそもこの人がジャッジ出来る感性無いでしょ。
こんな靴先長いやつ履いてる人が。

『電気代』か!?
私は賭けに出た。
ある程度ご存知顔で。遠い目をしながら。

「省エネって…人類の普遍的なテーマですもんね…」

ため息混じりに、大したことない事を仰々しく言ってみた。



「コバルトってご存知ですか?」



勝ったかもしれない。
賭けに。


ー続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?