ひいおばあちゃんのおひざ
おぼえている思い出の中で1番古いものは、ひいおばあちゃんのおひざの上で抱っこされている赤ちゃんなわたし。
座敷の部屋で、わたしとひいおばあちゃんの前にはおじいちゃん1人、おばあちゃん2人が座って、こっちを見ながらニコニコしている。
おひざの上で正面を向くように座っていて、後ろからひいおばあちゃんの手がわたしの手をとって、ニギニギ、プニプニ、歌に合わせてフリフリしている。
手の感触をよくおぼえている。
ひいおばあちゃんの手は小さめで、少し茶色い。
シワシワでザラザラして骨も感じるけど、親指の付け根にはプニっとお肉がついていて柔らかい。汗ばむぐらいあたたかい。
このひと場面、この情景しかおぼえていない。
この先も前もない。
抱っこされて手を触られている感覚、おじいちゃんおばあちゃん達が笑顔で、とても優しく、あたたかく、楽しい雰囲気。
赤ちゃんのわたしも楽しい気持ち。
この記憶が本当にあったことかはわからない。
記憶は作られることがあるというし、ひいおばあちゃんは亡くなっているから、聞いて確認することもできない。
けれど、作られていたとしても、数少ない楽しい思い出、大切にしたい。
思い出の中の座敷の部屋はひいおばあちゃんのお部屋。
わたしが小学生になった頃、子ども部屋として使うことになった。
年齢だけでいえば大人になったわたしは、今もまだ、この部屋で生きている。