【第8回 ぬのっと えほん 5ページめ】
ぬのっと えほん 5ページめ
ヌノットの旅は続きます…
昨晩夜更かししたせいか、とても眠い…
そこに持ってきて、電車の揺れはまた、眠気を誘う…
コクリコクリ…と船を漕いでいると、
お隣に座るおばあちゃんから、話し掛けられました。
『あんた、随分と眠そうだ…つぎの駅に立派な商店街があるから、そこで精のつくものでも摂るとええ。』
と、そこへ車内アナウンス。
『次の停車駅はぁ~ おと屋~ 間もなく おと屋ぁ~(Twitter ; @ottoy6882)』
車内アナウンスと、おばあちゃんに後押しされ、駅の改札を抜けて、商店街へ。
そこはとても賑やかな場所でした。
あちらこちらで、お店屋さんとお客さんが元気に会話を弾ませています。
『おぅっロボットくん!!採れたて野菜が安いよぅっ』
『らっしゃいらっしゃい!新鮮なシーフードはいかがかな?!』
四方八方から威勢のいい声が飛んできます。
『すごいなぁ~みんな元気だなぁ~』と辺りをキョロキョロと見渡すヌノット。
そこで、1軒のお店に目が止まりました。
他のお店のように、威勢のいい呼び込みさんはいないけれど、何故だか気になる。
そこはコーヒーショップでした。
吸い寄せられるまま、お店のドアを開けました。
『いらっしゃい。待っていたよ。』と、店長さんらしき人に迎えられました。
外の喧騒とは打って変わって、店内は落ち着いた雰囲気。
それでも、老若男女たくさんのお客さんが静かにコーヒーを嗜んでいます。
よーく目を凝らすと、どのお客さんの背後にも、カラフルなマーブル模様。
そして、そのお客さんの身体からは、これまたカラフルな円模様が浮き立っています。
『おや?君にも見えるのかい?あの背景は、そのお客さんの好きなフレーバー。それから、あの円は、お客さんが感じている幸せホルモンなんだ。』と、店長さん。
ヌノットは自分もそれらを味わってみたくなりました。
『ここは人間観察にはうってつけでね。見ているうちに、その人の好みがわかるようになってきたんだよ。お任せでいいかな?』
ヌノットは、コクリと頷きました。
店長が出してくれたコーヒーは、
ヌノットの好きなオイルやナットを思わせるフレーバーでした。
コーヒーなのに、まだ10歳のヌノットにも優しいお味。ミルクでしょうか。
あんなに眠かったのが嘘のように、気持ちがシャキッとしたヌノット。
『自分じゃ見えないだろうけど、とてもキレイな色が出ているよ!』と店長さん。
よーくお礼を伝え、お店を出ようとすると…
小さな女の子もお店を出るところでした。
『また来るね、マスター!』と、その子が頬ずりしながら大事そうに抱えているのは、
あれ?自分??
まぶたを擦ると、女の子はもう居ませんでした。
沢山の不思議体験をしたこの駅から、また次を目指します。
人間観察の面白さと、そこから産まれる色彩。
ヌノットはまたひとつ、彩り深くなったようです。
6ページめに続く
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