【第13回 ぬのっと えほん 10ぺーじめ】
【第13回 ぬのっと えほん 10ぺーじめ】
次の駅へ向け電車に揺られる ヌノットは、先程から少しばかりの居心地の悪さを感じていました。
それと言うのも、ヌノットの隣に座っている男子学生風の2人組が、言い合いになっているからです。
坊主頭の学生A『だから!お前もダセーと思ってんだろっつーの!!』
ツーブロックの学生B『笑っただけだろ!?何が不満だよ?』
学生A『どうせ、失恋して髪刈るとか、女々しいとか思ったんだろ!?』
学生B『へっ。』
学生A『思ってることあるなら、言葉に出して言えって!!言わなきゃわかんねーだろって!』
学生B『めんどくせー』
学生A『昔からの仲だろーよ… あーあ、人の考え覗ける能力欲しいー そうしたらフラれることも、親友に無碍に扱われることもなかったかもなー(当てつけのように)』
眉間に皺を寄せて、
『大きくなるっていうことは、もしかしたら難しいことなのかもしれないな…』と
考え耽るヌノットなのでありました。
車内アナウンス『次はぁー、ZUN-HEAD(Twitter : @ZunHead) まもなくぅー ZUN-HEADぉぅーーー』
学生2人組はまだ降りない様子で、
小競り合いを続けています。
『ほっ』ちょっと胸を撫で下ろし、
ドアから降りると、
改札の外はなかなかの人通り………
『え!?』
ヌノットの両の眼(ボタン製)に映る道行く人々の頭が、パカッと割れていて、それでも平然と歩いています!!
『えぇえーーー!?』
街の様子を受け入れるのに、しばし時間を要しました。
冷静になってもう一度駅前を見渡しますが、やはりみんな頭がパカーンとしています、それはもう、何度見ても。
よくよく観察してみれば、頭の中に、それぞれ何かが入っている…
動物もいれば、植物も、スポーツも、
食べ物なんかも。シンプルに脳みその人も。
そう言えば、パン屋さんに出来ている行列の人々はみんな『頭の中にパン』だな…
2人で仲睦まじげに歩くカップルは、
『頭の中にお互いの顔』だしなぁ。
すると、
目の前を大荷物を背負ってよたよたと歩く、高齢の女性…
頭の中には…『ギシギシと痛そうに軋む腰骨』
『こりゃ大変だ!』と
ヌノットはすぐさま駆け寄り、声を掛けました。
『ありがとうねぇ、可愛いロボットさん。手伝ってくれるのかい?』とおばあちゃん。
『もちろん!』と、タクシー乗り場まで荷物運びを手伝うことに!
お礼を言いながらペコペコと頭を下げるおばあちゃんを乗せ、タクシーは出発します。
(運転手さんの頭の中が、地図から、おばあちゃんの目的地になったのが見えました)
そこからはもう、お節介ヌノットの本領発揮です!
困っていそうな『頭の中』が見える人を見つけては、せっせとお手伝い!
道に迷った青年、
コンタクトを落とした女性、
酔っ払いのおじさん、
孫に頼まれたおもちゃがわからない おじいちゃん、
海外から来た土地勘のない団体さん 等々…
『数年分の人助けが出来たぞ!…ふぅ、でも張り切り過ぎたかな、ひと休みっと…』
座り込んで、キオスクで買った『オイルティー』で喉を潤していると…
誰かが顔を覗き込んできます。
『やぁ!愛しいヌノット!!』
見ると『頭の中にヌノット』の人がニコニコしています。
『ぼ、ぼく?!』驚くヌノット。
『随分と困っている人を助けたね!とても素敵なことだよ!』
『でもね、ときには自分自身をもっと大切にできたら、もっともっと素敵になるんじゃないかな!?』
と、目の前の『頭の中にヌノット』の人。
『自分を大切に…かぁ。人に合わせてばかりのぼくには、それも大事かもなぁ。』とヌノットが空を見上げ、視線を目の前の人に戻すと…
その人の頭の中のヌノットが居ません。
(ヌノットは気付いていませんが、ヌノットの頭の中にヌノットが移っています)
『それじゃ!』と目の前の人が去り、
一連の出来事に首を傾げるヌノット。
不思議なことが立て続けに起こるなぁ。前の駅で、頭を強打したから?
…自分を大切にしてあげなくちゃ。
そんなことをぼんやり考えながら、
人助けの達成感と共に、この街を後にするヌノット…
まだまだヌノットの旅路は続きます…
【第14回 ぬのっと えほん 11ぺーじめ】
に続く。
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