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【エッセイ】ブラックサンダー×チロルチョコ

カフェイン中毒一歩手前だった僕は、その日もいつものようにコンビニに行き、ペットボトルのブラックコーヒー一本だけ手に取りレジに向かった。店員さんが手慣れた様子でバーコードを読み取っている間、ふとレジ横に目をやると、ブラックサンダーとコラボしたチロルチョコというのが陳列されていた。

ブラックサンダー×チロルチョコ
期間限定なのか、元々あったのか分からないが、初めて見た。

ブラックサンダーもチロルチョコも大好きな僕はそれを見た瞬間に胸が躍った。胸だけじゃなく足先も軽く踊っていたかもしれない。それくらいテンションが上がった。
ハイブランドとコラボしたスニーカーや、有名人とコラボしたYoutuberなどこれみよがしのコラボを見ても特に心が動くことが無いが、ブラックサンダーとチロルチョコのコラボは正に夢の競演だと感じた。

会計が終わろうとした時、僕は追加でそのブラックサンダーとコラボしたチロルチョコを買おうかと思ったが、その時頭が急に冷静になった。

もしかして、これはただの「小さいブラックサンダー」なのでは無いかと。チロルチョコはアーモンドやヌガーやコーヒー等そもそもチョコレートと何かを掛け合わせている商品だ。今回はその掛け合わせ相手がブラックサンダーというだけなのではないか。コラボと華々しく謳っているが、ザクザクして美味しいブラックサンダーが、チロルチョコならではの小さなサイズとなり、可愛らしいパッケージに包まれているだけではないのか。
例えば、おーいお茶とチロルチョコのコラボ、だったら、味の想像がつかず食べてみたいと思ったが、これはおそらく「小さいブラックサンダー」だ。多分普通のブラックサンダーを買った方がいいだろう。僕は騙されない。
コラボの3文字に隠された巧妙なトリックを見破った自分の鋭い洞察力を誇りに思い、コーヒーだけを購入した。

帰宅してから、僕の推測が正しかったことを確かめるため「チロルチョコ ブラックサンダー」と検索した。そしてパッケージ画像をよく見ると「milkなブラックサンダー、生クリーム入り」と書かれていた。「生クリーム入り」だったのか。さっきはブラックサンダーの文字しか見ていなかった。
「生クリーム入り」ということは、これはただの「小さいブラックサンダー」ではなかったのだ。伊達に「コラボ」と謳っているわけではない。冷静に考えたらそりゃそうだ。チロルチョコとブラックサンダーのコラボだと謳っておいて、中身が「小さいブラックサンダー」なわけがない。
僕は自分の実は鈍かった洞察力を恥じながら、コーヒーを飲んだ。

ブラックサンダー×チロルチョコも一緒に買っていれば、コーヒーももっと美味しく飲めたのに。

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