
グラフィックデザイナーが語る!私には合わなかったガジェットたち
グラフィックデザイナーとして10年以上の経験を重ねる中で、私は常に作業効率の向上を追求してきました。前回は愛用しているガジェットを紹介しましたが、今回は逆に「私の作業スタイルには合わなかった」というガジェットについてお話しします。
私の作業環境について
まず、私の作業環境についてご説明させていただきます。私は日々の作業で、マクロ作成ができる「Keyboard Maestro」、マウスショートカットを多彩にしてくれる「ステアーマウス」、マウスジェスチャーを実現する「BetterTouchTool」、キーボードを自由にリマップできる「Karabiner Elements」などを駆使しています。これらのツールを組み合わせることで、独自の効率化環境を構築してきました。
合わなかったガジェット1 トラックボールマウス
トラックボールマウスは、多くのYouTuberが紹介しており、注目を集めているデバイスです。私は2種類のタイプを試してみましたが、どちらも作業スタイルには合いませんでした。
最も大きな問題は、細かい作業への対応です。確かに画面上の大まかな移動は快適でしたが、IllustratorでポイントをつかんだりPhotoshopで細かい切り抜き作業をする際には、かなりストレスを感じました。「慣れれば細かい作業もできる」という意見もありますが、それは「できる」というだけで、通常のマウスほど繊細な操作は難しいと感じました。
また、私が現在使用しているLogicool G502Xには13個のプログラマブルボタンがあり、これらを装飾キーと組み合わせて多彩なショートカットを設定しています。しかし、トラックボールマウスでこれだけ多くのボタンを備えた製品は非常に限られています。
試用機種と感想
★Logicool M575S
親指タイプのトラックボールを1ヶ月ほど使用しましたが、親指の過度な使用により腱鞘炎の危険を感じました。手首への負担は確かに軽減されますが、その代わりに親指に大きな負担がかかってしまいます。親指の付け根が悲鳴を上げたので利用を断念しました。
★Kensington SlimBlade Pro
親指タイプに比べて、慣れる時間はとても少なく、1週間くらいで違和感なく操作ができるようになりました。大雑把な操作はかなり良好でしたが、繊細な作業は厳しく、またショートカットが設定できるボタンが少ないため、メインマウスには採用できませんでした。
トラックボールマウスが向いている方
マウスの作業スペースが狭い
細かい作業を行わない
合わなかったガジェット2 左手デバイス
左手デバイスは、一見便利そうに見えますが、実際にはキーボードショートカットで十分代用できることがほとんどでした。例えば、アプリの起動は10個程度のショートカットキーで対応できますし、ブラシサイズの変更などはマウスの設定で解決できます。
試用機種と感想
★XPPen ACK05
小さくてダイヤルもついていて、価格も手頃な製品です。しかし、設定してキーボード左に置いてみたものの、全く使用機会がありませんでした。このデバイスのおかげで「キーボードから手を離すくらいなら、キーボードにショートカットを設定すれば良いのでは?」という気づきを得ました。
★TourBox Elite
「キーボードではなく、常に手を置いている状態にすれば快適なのでは?」という期待を込めて購入しました。ツールの切り替えやブラシのサイズ変更は確かに便利でしたが、それらはキーボードとマウスでも実現可能でした。文字入力やツール以外のショートカット時に結局キーボードに手を移す必要があり、「キーボードにダイヤルをつけたツール」という印象でした。多ボタンマウスが使えないペンタブユーザーには有効かもしれません。
★Stream Deck MK.2
ディスプレイボタンは見やすく、IFTTTによる家電操作にも期待しましたが、実際には机にいなくても操作できるAlexaの方が便利でした。結局はキーボードショートカットで代用できる機能が大半で、ショートカットを覚えるのが苦手な方向けかもしれません。
左手デバイスが向いている方
ペンタブレットユーザーなど、多ボタンマウスが使えない方
キーボードショートカットを覚えるのが苦手な方
合わなかったガジェット3 テンキーレスキーボード
グラフィックデザインの作業では数値入力が頻繁に発生するため、テンキーは必須だと考えています。テンキーレスキーボードについてはそれなりのメリットやデメリットの相殺もできるので、やや複雑な心境があります。
試用機種と感想
MX Keys mini
3年ほど使っていたMX Keys S(フルサイズ)から、横幅が狭いものを試してみたくて購入しました。テンキーなしでも数字入力はできると思っていましたが、学生時代に電卓検定を受けていた経験から、テンキーの圧倒的な速さを実感。また、矢印キーが小さすぎる点も気になりました。持ち運び用として所持していましたが、そもそもMacを持ち出す機会が少なく、不要でした。
Akko 5075S HE
「テンキーがなければ別途追加すれば良い」という発想で再挑戦。キーボード右にテンキーを追加することによって、テンキーレスのコンパクトさとテンキーの便利さを両立し、これが快適でした。更に初めてのメカニカルキーボードで打ちやすさに感動し、専用ソフトでのキー配置変更も直感的で良かったです。ただ、HomeやPageUpなど不要なキーや、ラピッドトリガーによる誤操作が気になっていた時に、REALFORCE RC1と出会いました。
HHKB Professional HYBRID Type-S
キーボード愛好家の間で非常に人気の高い製品ですが、グラフィックデザインの作業では相性が良くありませんでした。その理由は、私の作業の大半がマウス操作中心だからです。
HHKBは、ホームポジションから極力手を動かさずにテキスト入力することに特化していますが、その分キー数が少なく、F1などのファンクションキーがFnキーとの同時押しになります。これにより、ショートカットが複雑になり、結果的に右手がマウスから離れる機会が増えてしまいました。
現在使っているREALFORCE RC1もHHKBに近いコンセプトですが、F1などのファンクションキーがあることが私にとって決定的な違いでした。
合わなかったガジェット4 トラックパッド
Apple Magic Trackpad
MacBookユーザーにとって魅力的に映るトラックパッドですが、グラフィックデザインの作業には向いていませんでした。デフォルトだとショートカットはかなり限定的です。BetterTouchToolを使えば多彩なジェスチャーが設定できますが、それらは結局マウスのボタン操作の方が素早く、多く実行できます。
また、Illustratorではドラック作業がとても多いのですが、たくさんのオブジェクトを選択したり、ドラックで移動させる作業がとても面倒に感じました。
Macbookのように、キーボードの下に設置してみましたが、親指の付け根がトラックパッドに触れて誤作動をしてしまうので、利用を断念しました。
合わなかったガジェット5 マジックマウス
Apple Magic Mouse
Appleの純正マウス、Magic Mouseは、マウスとしての機能に加えて指のジェスチャーにも対応しており、発表時は夢のようなデバイスだと期待に胸を膨らませました。
しかし、実際に使ってみると非常に使いづらさを感じました。まず、本体が低すぎて持ちづらく、私のようにマウスを掴むように操作する人間には特に使いにくかったです。また、マウス本体の幅が狭すぎて指のジェスチャーもやりづらく、充電時に本体を裏返さなければならない設計も気に入りませんでした。
Apple製品は好きで様々なものを購入してきましたが、その中で最も期待はずれだったのが、このMagic Mouseでした。
まとめ
以上、私が試してみて「合わなかった」と感じたガジェットをご紹介しました。グラフィックデザインの作業では、多ボタンマウスとフルサイズキーボード(またはテンキーレス+別売りテンキー)の組み合わせが最も効率的だと実感しています。
ただし、これはあくまで私個人の経験と作業スタイルに基づく意見です。それぞれのガジェットには、その特徴を活かせる使用シーンがあるはずです。皆様の作業内容や好みに合わせて、最適なデバイスを選んでいただければと思います。